「ポケモンGO」大ヒット、任天堂どれほど利益得るか
米国などで爆発的な人気となっているスマートフォン(スマホ)向けゲーム「ポケモンGO」−。
そこから生じる利益はどこに行き着くのか。
それを探ること自体、やる価値のある「ゲーム」だ。
12日の東京市場の任天堂株は、前日比13%高の2万2840円に上伸した。
前日11日には25%の上げ幅を記録していた。
時価総額は3兆円(約300億ドル)を超えるまでに押し上げられた。
任天堂の運勢が突然好転したわけで、同社がポケモンGOから利益を得るとの投資家の期待感を反映している。
ポケモンGOはスマホ向けアプリ。
プレーヤーは現実世界を映したスマホの画面上に重ねて表示されるアニメキャラクターを探す。
このアプリは無料でダウンロードできるが、プレーヤーがアプリ内でポケモンをおびき寄せる「おこう」などのアイテムを購入することによって売り上げが発生する。
明瞭でないのは、この売り上げのうち、どのくらいが任天堂の利益に結びつくのかだ。
このゲームの開発と販売を担うのは、非公開企業のナイアンティック(米カリフォルニア州)だ。
同社は昨年、アルファベット傘下のグーグルからスピンアウトして誕生した。
同社は昨年10月、株式会社ポケモン(東京)、グーグル、そして任天堂から2000万ドル調達したことを明らかにした。
一定の節目を達成した場合は、追加で1000万ドルの出資を受けられる条件が付いている。
新興企業ではよくあることだが、ナイアンティックも投資家による正確な出資比率を公表していない。
任天堂はナイアンティックを部分的に所有していることから利益を得る可能性がある。
同社はまたポケモンの株式も32%保有している。
ポケモンは長年、ポケモンのキャラクタービジネスを管理しており、自らが「ポケモンGO」のプロデューサーだとも述べている。
さらに、任天堂自身も「Pokemon Go Plus」という35ドルの携帯デバイスを販売する計画だ。
これはゲーム内でより簡単にポケモンを捕まえられるようにするものだ。
最後に、任天堂への間接的な利益もある。
同社は今後、保有する「どうぶつの森」や「ファイアーエムブレム」といったシリーズのスマホ向けゲームの配信を始める。
「ポケモンGO」での経験は、独自のスマホゲームをもっと大きな成功に導くヒントを同社に与えている公算が大きい。
これらを総合し、株式市場は現在の任天堂の企業価値は1週間前よりも120億ドルほど高いと判断した。
だが、この利益の流れには依然として不透明な点がある。
このため東京を拠点とする証券アナリストたちは、任天堂の将来の収益モデルの予測に苦慮している。
エース経済研究所のアナリストの安田秀樹氏は、現時点では一切情報が提供されておらず推量しかできない、と述べている。
JPモルガンのアナリスト、森はるか氏は、ゲームの売り上げのうち、アプリストアを運営するアップルないしグーグルの取り分を除外したゲーム収入をナイアンティックとポケモンが分け合うと想定している。
森氏はアプリの月間収入が300億円の場合、通年の任天堂の利益が250億円増える公算が大きいと予測している。
付属品として販売されるPokemon Go Plusは5000万個売れれば、ほぼ同程度の利益がかさ上げされるとみているという。
前年度(16年3月終了)の任天堂の純利益が165億円にとどまっていたことを考えると、これは大きい。
同社自身の今年度(来年3月まで)の純利益見通しは350億円だが、これはポケモンGOが大ヒットする前に出された予測だ。
モルガン・スタンレーMUFG証券の長坂美亜氏は、任天堂の利益を相当大幅に押し上げるためには、今回のゲームが爆発的な人気を保つ必要があるほか、何百万人ものユーザーが毎月ゲームのアイテムにかなりの額を払うことも必要になると警告する。
任天堂の担当者は、ポケモンGOに関する質問は株式会社ポケモンにするようにと回答した。
ポケモンは商品の利益をどう分配するかは公表しないと述べている。
アナリストたちは、ポケモンGOの最盛期がこれからかもしれないと述べる。
なぜならポケモンGOは、まだ日本で配信されていないからだ。
日本は売り上げで世界最大級のスマホゲーム市場であるほか、誕生から20年となるポケモンシリーズの発祥の地でもある。
ポケモンGOは、1週間足らず前に米国、オーストラリアとニュージーランドで配信が始まったばかり。