ニンテンドースイッチやPS VRでゲーム業界はどう変わる?

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テレビゲームの世界は、新しいデバイスや技術の普及によって、その形は大きく進化している一方、楽しさを追い求める姿は変わりません。
変わるものと、変わらないもの。
過去と未来。
そして我々が宿命的に背負う日本という存在。
なかなか考える余裕のない現代ですが、少しだけ立ち止まって一緒に見つめてみませんか? 毎月1回、「安田善巳と平林久和のオールゲームニッポン」ゆるーくお届けします。

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谷理央(以下 谷): 10月は13日にPlayStation VRが発売され、20日には任天堂がNintendo Switchを発表しました。
大きな動きがあったゲーム業界でしたね。

安田善巳(以下 安田): 確かに大きな動きですよね。
といいつつ僕は今月、海外出張の連続でした。
日本にいるときも出張が多くて目の回るような一ヶ月でした。
新型ハードの分析は、長年ウオッチしてきた平林さんの見解を聞こうと思っていたんです。

平林久和(以下 平林): うわ、なんというフリなんでしょう(笑)。

谷: 平林さんのコメントや記事はもろもろ読んでますが、それをウチの媒体向けにかっこよくまとめてください。

平林: うわ、谷さんまで(笑)。
いやー、かっこよくないです。
まずはPlayStation VRですが、大きなうねりの第一歩。
VRゲームはまだまだ始まったばかり、というのが私の感想です。
地味な一般論ですいません。

谷: PlayStation VRの初回販売台数は5万台程度と聞いています。
まだ台数が少ない、という意味ですか?

平林: いや、台数の問題ではないですね。
VRを使ったゲームは、長い時間をかけて普及していくのだと思います。
オンライン・ゲームに似ているようなイメージがあります。
『ウルティマ・オンライン』というMMORPGは1997年にサービスを開始しましたが、今のVRはあの頃の感じ?細いところを見ればプラスとマイナス、いろいろ動きがあるでしょうが、一喜一憂すべきではないのかな、と。

安田: ロングスパンで見なくてはいけない、と。

平林: はい。
オンラインもVRもゲームをおもしろくする技術であることに間違いはありません。
けれども、それが普及するためにはおもしろいだけではだめです。
価格はもっと下がらなくていけない。
ユーザーが持つ「抵抗感」が消えていかなくてはいけない。
それには相当な時間がかかります。
というわけで、今のVRは20年まえのオンライン・ゲームの黎明期に似ているなー、と思う次第です。

谷: 読者アンケートでは『サマーレッスン』の評判が良かったです。
パンツを見る・覗く方法実況解説の動画再生も100万回を超えたそうで。
なんだか異様な盛り上がり方をしています。

平林: あ、『サマーレッスン』は良いパンツではなく……良い見本を見せてくれました。
長時間遊ぶわけではないVRゲームは、売り方が難しい。
高額では売りにくい。
かといってゲームセンターのように100円では儲かりません。
そこで、3000円を切る価格にしてシリーズ化するやり方は、他のコンテンツにも波及するかも、と思いました。
単体のソフトではなく、『サマーレッスン』はプラットフォームのような存在になった、といってもいいんじゃないでしょうか。

谷: Nintendo Switchについてはどうですか?
平林: 発表された日、その直後に原稿を書きました。
他のメディアが「ついにベールを脱いだ」と書くと思ったので、その逆。
「Nintendo Switchはまだベールを脱いでいない」との感想を書いたんです。
ただの天邪鬼ではありませんよ(笑)。
据え置き型と携帯型ゲーム機の兼用機の性格を持ち、脱着可能なコントローラがついている。
発表された内容は、夏頃からささやかれていた噂の通りでもありました。
一歩突っ込んだ情報。
Nintendo Switchには標準コントローラ以外のデバイスがつくのか。
特殊なコントローラとか、amiibo(アミーボ)とか、SIMフリー端末とか。
そういう拡張性があるかどうかに注目していたのですが、明らかにされませんでした。
なので、今回の発表はまだチラ見せの段階なのかな、と思ったわけです。

谷: 読者や編集部のスタッフからはポジティブな意見が多いようですね、Nintendo Switch。

平林: 私の周りのゲーム好きたちも「欲しい」って言ってます。
まだ全貌を見せていないと思うのですが、新作の『ゼルダの伝説』や『スプラトゥーン』の映像が写っただけで、欲しいと思わせてしまう。
この点は任天堂ハードの強みですね。
いっぽうで証券アナリストや経済誌の記者の方たちの見方は厳しいようです。
ニンテンドーDSの「触る」、Wiiの「振る」のようなインパクトがない、というのが彼らの言い分です。

谷: 現時点のNintendo Switch。
ゲーム好きとそうでない人たちとの間で評価が分かれたわけですね。

平林: ところで、ゲーム業界念願のVR機器発売、任天堂の新ハードの発表。
普通に考えると特大のニュースがあったようだけど、じつはどちらも本格始動していない。
意外と冷静だった10月だと思うんですがどうでしょう?海外に出ていた安田さんのほうが熱い現場にいたような気もするんですが?
安田: 市場の熱気という意味では熱かったですよ。
東京ゲームショウに出展した『STARLY GIRLS』の中国国内での配信、アニメ制作を北京で発表しました。
中国では日本の声優さんの人気がとにかくすごくて、上坂すみれさんのビデオメッセージが上映されると場内は大歓声が起きました。
今回の主催者で角川ゲームスの提携先のAlpha Gamesの皆さんも『STARLY GIRLS』の発表を最優先と言っていいほどに力を入れてくださって、申し訳ないくらいででした。

平林: 申し訳ない?
安田: はい。
『STARLY GIRLS』よりもはるかに実績があるオンライン・ゲームの発表も同時にあったんですが、われわれが好待遇を受けてしまって、少々気まずくなるくらいに期待してくれているんです。

平林: やはり、スマートデバイス×アジア市場は活気がありますね。

安田: それは実感します。

平林: 『STARLY GIRLS』を移植するという意味ではなく、こういう考え方はありですか?と安田さんにうかがいたかったのですが……。

安田: 何でしょう?
平林: これからのマルチプラットフォーム開発は、スマホゲームが起点になってもおかしくない。
そんなことを最近は考えています。
いわゆるハイエンド機のAAA(トリプルエー)タイトルは別として。
スマホ市場で成功したタイトルがVR化されるとか。
場合によってはNintendo Switch版にバージョンアップするとか。
こういうケースは、今後増えると思いますか?

安田: 今までのゲーム業界のマルチプラットフォーム開発といえばプレイステーションとセガサターン、プレイステーション3とXbox360のように、同世代のコンソールマシン(据置機)で発想するのが当たり前でした。
そこにスマホが入ってくることはありえるでしょう。
スマホゲームとPCブラウザゲームを同時開発する例がすでに出てきていますね。
そういえば東京ゲームショウでは『オルタナティブガールズ』のVR(HTC VIVE対応)が限定公開されていました。

平林: 特にスマホゲーム市場が大きい日本では、いかにもありそうなことですね。

谷: VRやNintendo Switch。
ハードが変わるとマルチプラットフォーム開発も変わる、ということですね。
今回も深い話になりましたね、ありがとうございました。

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