業績予想「上方修正」が期待できる銘柄はコレ!?
米大統領選挙の投票日が11/8(火)に迫り、株式市場は波乱の展開になっています。
クリントン氏のメール問題についてFBI(連邦捜査局)が調査を再開し、大統領選挙を巡る不透明感が強まったことが要因です。
外為市場では再び円高圧力が強まり、日経平均株価も11/1(火)の17,473円を高値に下落基調となっています。
しかし、11/8(火)の米大統領選挙が終われば、市場では次第に「次期大統領のお手並み拝見」という空気が強まり、関心は金融政策を含む「経済」に移っていくと予想されます。
折しも、同じ日(日本時間)に国内ではトヨタ(7203)の決算発表が予定されており、決算発表もこれでひとつの大きなヤマを越えることになります。
我が国の株式市場では次第に「業績」を尺度とした銘柄選別が強まると考えられます。
そこで「日本株投資戦略」では、11/7(月)以降に決算発表を予定している銘柄の中から、業績予想の「上方修正」が期待できる銘柄を抽出し、ご紹介することとしました。
株式市場が波乱の様相を強めることで、逆に買い場が訪れる銘柄も少なくないと思われます。
■業績予想「上方修正」が期待できる銘柄はコレ!?
さっそく業績予想の「上方修正」が期待できる銘柄を抽出し、ご紹介したいと思います。
抽出条件は以下の通りです。
(1)時価総額1,000億円以上(10/18※現在)で3月決算の上場銘柄(広義の「金融」を除外)
(2)業績予想を公表しているアナリストが2社以上いる銘柄
(3)11/7(月)以降に決算発表を予定している銘柄
(4)過去4週間で予想EPS(一株利益)の市場コンセンサスが上昇している銘柄
(5)2016/4~9(中間)期の予想営業利益について、市場コンセンサスが会社予想を上回っている銘柄
(6)10月以降に業績予想の上方修正に関する会社発表または観測記事が出ていない銘柄(その他業績予想を不透明にする材料が出ている企業も除外)
上記の全条件を満たす銘柄のうち、(5)に関して「営業利益の市場予想(市場コンセンサス)が会社予想を何%上回っているか」を計算し、その数字が大きい銘柄から順に5銘柄をご紹介したものが表1となります。
アナリストが調査の結果、「会社予想営業利益は保守的であり、実績はそれを上回る見込みで、通期予想の上方修正も期待できる」と予想している銘柄は、実際に業績見通しが上方修正される可能性が大きいと考えられます。
これらの中には、株式市場が波乱の様相を強めることで、逆に買い場が訪れる銘柄も少なくないと思われます。
※決算発表の時期が始まる直前の時価総額を基準としたため、10/18(火)となりました。
表1:今後決算発表等で「上方修正」が期待できる銘柄
バンダイナムコホールディングス 11/8(火)
エン・ジャパン 11/10(木)
ニコン 11/8(火)
SMC 11/8(火)
テルモ 11/10(木)
Bloomberg、会社公表データをもとにSBI証券が作成。
「市場予想/会社予想(営利)」は資料作成日(11/4)現在で、営業利益の市場予想(市場コンセンサス)が会社予想を何%上回っているかを、16/9期(中間)、17/3期(通期)についてみたものです。
■「上方修正」が期待できる銘柄の投資ポイントは?
◆バンダイナムコホールディングス
任天堂の「ポケモンGO」やソニーの「プレイステーションVR」の登場等を背景に、久しぶりにゲーム関連銘柄にスポットが当たりやすくなっています。
そうした中で当社はスマホ向けゲームが海外を含めて伸びていることに加え、任天堂同様海外に通用するキャラクターを抱えていることが強みになっています。
会社側は第1四半期の決算発表時(8/4)に2016/4~9期の予想営業利益を230億円から320億円に上方修正しました。
現在、通期の会社予想営業利益は500億円(前期比0.7%増)ですが、市場コンセンサスでは600億円超が期待されています。
◆エン・ジャパン
「エン転職」で知られる我が国最大級の求人・転職サイトを運営しています。
生産年齢人口が減少し、労働生産性の向上が国の重要課題となる中、足元の有効求人倍率(2016/9)は1.38倍と25年ぶりの高水準を記録しており、当社には強い追い風が吹いています。
運用サイトの高い顧客満足度と、先行投資が実を結ぶ形で、2016/4~6期の営業利益は18億円(前年同期比46.4%増)と好調なスタートでした。
2017/3期の会社予想営業利益は57億円(前期比11.4%増)ですが、市場コンセンサスは66億円超となっています。
◆ニコン
2016/4~9期の上場企業決算発表のひとつの特徴は、半導体・FPD製造装置関連が好調なことです。
NAND型フラッシュメモリの設備投資拡大やスマホの高機能化を背景とする需要増が要因とみられます。
また、VR(仮想現実)時代の到来は有機ELの市場拡大に追い風になるとみられ、中国メーカーは2020年までに2兆円の設備投資を実施する計画であると報道されています。
当社は、キヤノン やアルバック などとともに、主要装置を供給しています。
当社の2016/4~6期(第1四半期)決算では、FPD製造装置の伸長が円高やデジカメの縮小を補い、営業利益が前年同期比188.4%増となりました。
通期の会社予想営業利益は460億円(前期比25.3%増)ですが、市場コンセンサスでは480億円超への上振れを期待しています。
◆SMC
空気圧制御システムでは国内65%、世界34%と高いシェアを有しています。
アジアを中心に新興国での人件費高騰が続いており、工場のFA化ニーズは世界的に高まる方向で、当社の事業にも追い風が吹いています。
海外売上高が全体の3分の2前後を占めているため、円高が逆風になります。
2016/4~6期(第1四半期)決算でも円高による為替差損が響き、経常利益は前年同期比44.6%の減益となりました。
しかし、本業のもうけを示す営業利益は同四半期に364億円(前年同期比3.5%減)と健闘しました。
会社側では通期に20.3%の営業減益を予想していますが、市場では9%程度の減益を予想しています。
◆テルモ
カテーテルや人工心肺装置などで高いシェアを有し、海外に生産拠点17(国内は7)を抱えるグローバルな企業です。
2016/4~6期の営業利益は213億円(前年同期比9.8%増)と好調です。
2016/4~9期の営業利益について会社側は355億円を予想していますが、市場では400億円超を見込んでいるようです。
通期計画についても、市場は会社計画に対する上振れを見込んでいます。
10月に米医薬品・医療機器大手から血管治療機器事業の一部買収で基本合意しました。
もともと、小型のカテーテルに強みをもつ当社については相乗効果が大きいとの指摘もあるようです。
株価は7月高値から調整が進み、値ごろ感は強まっているようです。
■「アナリストの業績予想」と企業業績
冒頭の抽出条件(6)の中に、「10月以降に業績予想の上方修正に関する会社発表または観測記事が出ていない銘柄」という条件があります。
この条件を入れた理由は、決算発表で業績予想が上方修正されても「織り込み済み」になってしまっては意味がないためです。
下の表2の銘柄は、(6)の条件により銘柄を削除する前の表と言えます。
ここで言えることは、2016/4~9(中間)期の予想営業利益について、市場コンセンサスが会社予想を上回っているような銘柄は決算発表を待たずして、業績予想上方修正が発表されたり、新聞により好業績見通しを発表されたりするケースが多いということです。
アナリスト予想を集計した市場コンセンサスが会社予想を上回った場合、上方修正につながる可能性が多いことをこの表は示していると言えそうです。
表2:アナリストの営業利益予想が会社予想を大きく上回る銘柄(上位)
銘柄決算発表予定日市場/会社16/9期備考
東芝 11/11(金)132.4%10/31(月)に会社側が上方修正
三井金属鉱業 11/8(火)100.0%10/21(金)に中間経常3割増との観測報道
鹿島建設 11/8(火)44.5%10/11(火)に会社側が上方修正
戸田建設 11/11(金)43.6%10/17(月)に会社側が上方修正
バンダイナムコホールディングス 11/8(火)42.9%掲載銘柄
エン・ジャパン 11/10(木)32.5%掲載銘柄
大林組 11/8(火)26.6%10/11(火)に会社側が上方修正
不二製油グループ本社 11/8(火)24.5%10/27(木)に会社側が上方修正
グローリー 11/7(月)20.4%10/28(金)に会社側が上方修正
ニコン 11/8(火)19.7%掲載銘柄
大成建設 11/11(金)18.5%10/24(月)に会社側が上方修正
SMC 11/8(火)16.9%掲載銘柄
小野薬品工業 11/7(月)14.6%政府が「オプジーボ」の薬価を引き下げる方針
テルモ 11/10(木)13.6%掲載銘柄
Bloombergデータ、各種資料をもとにSBI証券が作成。
冒頭の抽出条件うち、(1)~(5)の全条件を満たす銘柄について、「営業利益の市場予想(市場コンセンサス)が会社予想を何%上回っているか」(上記の表で「市場/会社」)を計算し、その数字が大きい銘柄から順に、テルモまでの銘柄を羅列したもの。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
鈴木英之
SBI証券 投資調査部