PlayStation 4 Pro製品版レビュー。「4K+HDR」世代に向けた着実な進歩

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11月10日に発売される「PlayStation 4 Pro(PS4 Pro、型番はCUH-7000)」の製品版実機レビューをお届けする。
本連載の中で述べてきたように、PS4 Proは「ヘビーゲーマーに向けたパワーアップ版PS4」だ。
では、そのクオリティや、ハードウェアの構成がどうなっったのかを、実機を使って見ていこう。
以下の記事の中で、PS4 ProではないPS4を「スタンダード版」と呼称する。
今回は筆者の手元にある初代PS4(CUH-1000)との比較になるが、本体デザイン以外の部分については、最新の薄型モデル(CH-2000系)も同じだ。

なお、今回は、ハードウェアは製品版を使っているものの、ソフトについては、PS4 Pro対応パッチの公開が記事の締切に間にあわず、いくつかの限定されたコンテンツで評価を行なった。
また、AV関連では、4+HDRを使った「Netflix」や「YouTube」アプリは試用時点では未公開であり、テストが行なえていない。

■初代PS4に近いサイズで4Kを実現
PS4 Proは、グラフィックパフォーマンスを2倍以上向上させ、4K+HDRのテレビに対応した製品である。
性能アップした分、SoCの規模は向上しており、消費電力も最大165W(CH-2000系)、もしくは最大250W(CH-1000系)から、最大310Wへと大きくなっている。
そのため、本体は若干大きくなり、薄型モデルと比較すると「3段重ね」になったように見える。

だが、こと初代モデルと比較した場合には、大きさのイメージはあまりかわらない。
幅と奥行きが若干大きくなっているものの、厚さはスペック上では2mmしか違わない。
体積にすると19%増で収まっているという。

内容物もスタンダード版PS4と大差ない。
しかし、電源ケーブルはいわゆる「メガネ型」ではなく、より太いものになった。
デスクトップPCやテレビでみかけることの多い3芯のタイプから、アースを抜いて2芯にしたようなものが採用されている。
おそらくは電源を強化した関係だろう。
それでも、電源を本体に内蔵してきたのは立派なものだ。

電源をのぞく本体のコネクターは、1カ所を除き変化はない。
スタンダード版PS4は、USBが正面に2つあるだけで、背面にはなかった。
だが、PS4 Proは1つ、背面に搭載されるようになっている。
これは特に、PlayStation VR(PS VR)を使う時にはありがたい。
スタンダード版PS4では、PS VRで使うUSBケーブルを前面に刺すことになり、どうにも格好悪かったからだ。

電源ボタンは「SONYロゴ」側、イジェクトボタンは「PS4ロゴ」側の、真ん中のスリットに配置された。
初代モデルはタッチセンサーで格好良かったのだが、並んで配置されているので、けっこう間違えて押すこともあった。
場所が離れてわかりやすくなったので、その点、地味だが好印象だ。

なお、PS4は電源投入時にLEDで「線」のように光るギミックがあるのだが、その場所は、本体側面から、三段重ねの真ん中へ移った。
これを見ると、PS4 Proは縦置きよりも「横置き」をメインに考えてデザインしたのでは……と感じる。

側面には「PS」ロゴが目立つ。
写真では分かりづらいが、右側面のものは「銀色」に光っている。
反対側は樹脂の光沢仕上げだが、本体を横置きした時に「足」となる突起は、PlayStation伝統の「○×△□」になっている。
芸が細かい。

なお、PS4 Proには、同じLAN内にある他のPS4からすべてのコンテンツ・セーブデータ・スクリーンショットなどを移行して古いPS4 を初期化する「データ移行」機能が搭載されている。
「設定」項目の中から呼び出せるほか、初めてPS4 Proの電源を入れる時にも、利用のガイダンスが表示される。
これは薄型版PS4(CH-2000系)以降のシステムソフトウェアのアップデートで追加された機能だが、PS4 Proへ移行するユーザーには便利なものなので、ぜひ使ってみてほしい。

■シェア機能は「静止画4K・動画2K」に機能アップ
さて、画質のテストをしてみよう。

PS4 Proは4K+HDR世代であることがウリなので、編集部で4K+HDR対応テレビとして、ソニーの「BRAVIA KJ-55X9300D」をテスト機材として用意した。
さらに上の「Z9D」シリーズは出てきたものの、なかなか高価だし、サイズ的にも置きづらい。
55X9300Dならば、家庭向けのプレミアムモデルとしてはスイートスポットといえる位置にあり、テスト機種として申し分ない。

接続そのものはHDMIなので、特に難しいわけではない。
単に4Kを出すのであれば、つなぐだけでOKである。
PS4 Proはメインメニューなども4Kで描画している。
だが、ここを見るだけでは、スタンダード版PS4なのかPS4 Proなのか、判別は難しいと思う。

ウェブもメインメニューと同様に、PS4 Proでは「4K化」されているが、これも、差はあまりはっきりしない。

ただ、ひとつ大きく違うのは、PS4 Proでは、PS4標準のシェア機能を使った場合、すべて「3,840×2,160ドット」=4Kでキャプチャされる、ということだ。
これは、接続されているテレビが4Kでなくてもそうなる。
ちなみに、スタンダード版は「1,920×1,080ドット」=2Kだ。
PS4 Proは4Kを基準に置いている、ということがよくわかる。
以下、スクリーンショットについては、PS4 Proはすべて「3,840×2,160ドット」のものを、スタンダード版PS4のものは「1,920×1,080ドット」で掲載している。

なお、シェア機能での動画キャプチャについては、従来は「1,280×720ドット」であったものが、「1,920×1,080ドット」でのキャプチャとなる。
さすがに4Kキャプチャは内部ではできないようだが、画質はアップしている。
静止画同様、本記事内の動画は「1,920×1,080ドット」がPS4 Pro、「1,280×720ドット」はスタンダード版PS4のものである。
ただし、PS VRのコンテンツはその限りではない。

■実写よりインパクトがある「ゲームの4K+HDR」
やはり、よくわかるのは「対応コンテンツ」を使った時だ。
今回はPS4 Pro対応タイトルとして、主に「アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝(以下アンチャーテッド4)」と、PS VR向けタイトル「Battlezone」を使い、テストしてみた。

アンチャーテッド4の場合、まずはHDRの効果の高さに驚く。
もともとアンチャーテッド4は明暗のダイナミックレンジが広い作品だが、HDRではそれがより顕著になる。

ただ正直、写真ではきちんと表現できている自信がない。
元のゲームが非常に高画質である、ということもあり、写真に撮ると差が見えづらくなるのだ。

キャプチャを見るとやはり差がある。
一方で、PS4のシェア機能では「HDRのダイナミックレンジ」を10ビットで表現できているわけではなく、8ビットに丸められてしまう。
PS4 Proでシェア機能を使い始める際、「シェア機能で記録されたものは表現に差が生まれる」旨、注釈が入る。
ここまで紹介している映像は、特に色表現においてPS4 Proの「すべての能力を示しているわけではない」ことにご留意いただきたい。

一緒にチェックしていた編集担当は「実写よりもHDRの効果がわかりやすく、効果的なのでは」とコメントしていたが、筆者も同感だ。
4K+HDRのテレビを買い、まずHDRコンテンツの効果を楽しむものとして、ゲームは最適であり、PS4 Proはもっとも適切な手段の一つかと思う。

ちなみに、HDRそのものは、ソフトウェアアップデートにより、「全てのPS4」で利用可能になっている。
PS4 Proまではすぐに手が出ない……という場合、まずPS4で2K+HDRで……という発想もアリだ。
ただ、次の映像を見ると「PS4 Proはパフォーマンスが違う」と思わざるを得ないのだが。

■VRは「よりリッチ」なクオリティに
続いて、PS VRのタイトルをチェックしよう。
「Battlezone」は、古典的な「戦車戦ゲーム」をVR向けにリブートしたもの。
PS VRの初期タイトルの中では、ぜひプレイしてほしい1本である。
テスト段階では、PS4 Pro向けのアップデートがすでに公開されていたのは「Battlezone」に限られていたので、こちらでテストしている。

映像を見ると、「けっこう違う」のに驚かされると思う。
PS4 Proでの画面が、ぱっと見てわかるほどにリッチになっているからだ。

PS VRのディスプレイパネルは、両目分で1,920×1,080ドットに固定されている。
また、HDRにも対応していない。
PS4 Proのパフォーマンスは、「同じ解像度の中でより映像表現をリッチにする」方向に向かう。
だからこれだけ違うのだ。
スタート段階でこれなら、今後使いこなしのコツが見えてくれば、PS4 ProとPS4での「表現の差」は、かなり大きなものになるかも知れない。

一方で、このことも指摘せねばならない。
実際にPS VRをかぶってプレイしていた時には、「ああ、きれいになったな」とは思ったものの、ここまでの差になっている、とは気付かなかった。
それはおそらく、VRにとっては「フレームレートの保証」や「なめらかな動作」が、良いVR体験を担保するために必要であり、それを満たすと、人間の脳の側が「リアルだ」とゲタを履かせてしまうのだ。
より良いものを体験した今、どちらを選ぶかといえばPS4 Proではあるが。

PS VRに関しては、「PS4でもVRの体験は変わらない」とSIE関係者が口を揃えている。
それは、「VRとしての最低体験保障動作」が、相当にハードルが高いものであるからだろう。
そのハードルはスタンダード版PS4でも超えており、PS4 Proでのリッチさは「余録」だ。
一度体験すると、「PS4 Proでないと物足りない」と思うが、体験が根本から変わっているわけではない。
このあたりが、PS4とPS VRの組み合わせの面白いところ、といえる。

■セッティングには若干の落とし穴も
PS4 Proが「4K」「HDR」「VR」という3つの要素を持った製品であるのはよくわかった。
一方で、これを日常的に使うのは、ちょっとめんどくさいこともわかってきた。

まず、PS VRは、PS4 ProからのHDR映像をパススルーできない。
すなわち、対応HDRテレビとつなぐ場合、HDR対応テレビとPS4 Proを直接つなぐ必要がある。
3点セットが揃っているような「濃いゲームファン」ほど面倒なことになるわけで、PS VRのアップデートで対応できるものなら、この辺の改善はお願いしたいところだ。

4K+HDRを両立するには、ケーブルやテレビのセッティングも重要になる。
例えば今回、テレビの側が初期設定状態では、4KでのHDRが有効にならなかった。
X9300Dの場合には、HDMIの設定で「HDMI信号設定」を「拡張」に変更する必要があった。
同様の設定が必要になるテレビは他にもあるだろうし、製品によっては、HDMI2.0aで規定されたHDRなどの拡張信号はいくつかの端子でしか使えない……という場合もある。

今回は問題なかったが、ケーブルもHDMI 2.0aの18Gbps伝送に対応できるものを選ぶ必要がある。
PS4 Proには対応ケーブルが付属するので、既存のものを使うより、これに入れ替えた方が良い。
より長いものを求めるならば、「プレミアムHDMIケーブル認証」を受けたものを選ぼう。

PS4 Proの「設定」内「サウンドとスクリーン」内から、PS4 Proにつながっているディスプレイとの間で、どの信号でやりとりをするのか、確認することができるようになっている。
「映像出力設定」をみていただき、一番下の「映像出力情報」を確認してみよう。

例えば以下のような表示は、HDRにも対応していない、2Kのテレビやディスプレイにつないだ時のものだ。

先ほどのように、テレビ側でHDMI2.0aの拡張信号に対応していない場合には、「テレビのHDR」表示が「2Kのみ対応」になる。
ここで設定を変えることで、完全対応が完了する、ということになる。

「なんだかめんどくさい」……と思われたかもしれない。
だがまあ、テレビ側さえ適切に設定してあれば、通常、PS4 Proの側は特にいじる必要はない。
実際、ゲームをプレイする場合には、HDR対応ゲームの場合、「HDRにしますか?」と、最初にメニューで聞くようになっている。
その代わり、各種設定はゲーム側にある。
マーク・サーニー氏は「PCほどではないだろうが、PS4 Proのゲームにも画質セッティングの項目が増えるだろう」と話していた。
おそらくは、ゲームスタート時にいくつかの選択肢を選ぶことになるだろう。
どちらにしろ、セッティングが終わった段階で一応「映像出力情報」をみて、設定状態を確認することだけはしておきたい。

なお、HDR対応テレビで、無理やりPS4 Pro側の設定を変え、HDRだけをオフにすることもできる。
その場合、色空間の情報が誤判定を起こし、正しい色が出なくなる。
HDRの効果をチェックする目的で試すのは面白いし、ぜひ一度やってみていただきたいが、正しい設定に戻しておくことをお忘れなく。

■直接的なAV要素は薄いが「画質への驚き」は確かに“ある”
今回、アップデートのタイミングが合わなかったため、NetflixやYouTubeなどAV要素の強い機能の4K+HDRを試すことは叶わなかった。
これらのアプリはおそらく、11月10日以降に順次アップデートされていくことになるだろう。

写真や動画を再生する「メディアプレイヤー」も、HDRには対応していない。
現状、個人でHDR映像を作って流通させるのは少々面倒だ。
カメラなどではHDR撮影した映像を、通常の8ビット色空間にリマップして保存している。
静止画・動画ともにHDR信号を扱う規格はあるが、普及しているとは言い難い。
この際だから、PS4のように数が出て著名になる機器から、そういう機能にどんどん挑戦してもらいたいと思う。

ゲームでの4K+HDRがハイクオリティなので、なおさら「これで映像も」と思ってしまう。
UHD BDへの対応がなかったのが悔やまれるが、PS4でのSIEの戦略が「ゲーマーを重視すること」なのだから、非搭載の判断も理解できる。
一方で、4K+HDRの配信は積極的に取り組んで欲しい。
やっぱり、PS4 Pro発売のタイミングで、Playstation Storeに4K+HDRの映像が一本も並んでいないのは残念だし、もったいないと思う。
せっかくだから試してみよう、と思う人の市場を逃していることになるのだから。

PS4 Proは、4K+HDR世代のゲームを安価に楽しむには、現状ベストのチョイスだと思う。
ゲームにおける4K+HDRの可能性を見るのも立派なAVの楽しみ方だと思うし、PS4 Proはそれにうってつけだ。
ハイビジョン映像を見た時の新鮮な驚きを、ゲームにおける4K+HDRは与えてくれると感じる。

4K+HDRテレビの場合、ネットストリーミング系の4K+HDRを楽しむ環境を内包している場合も多く、「その機能があるだけ」でPS4 Proを選ぶのは難しい。
あとは、いかに快適な環境を作るか、だろうか。
パワーでは有利なので、各社とも、PS4 Pro向けの動画アプリでも、操作性の改善も期待したい。

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