大阪疾走「マリオの世界」 コスプレカート「景色が違う」
■外国人注目スペシャル観光
大阪城や通天閣など大阪の名所を、スーパーマリオやピカチュウなど人気キャラクターのコスプレをしてカートでめぐるツアーが、外国人観光客を中心に人気が高まっている。
10月のサービス開始後、香港の観光サイトで取り上げられ、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で話題になるなどして予約が殺到。
訪日外国人客(インバウンド)市場が拡大する中、大阪の街をキャラクターになりきって疾走する“リアル体験”が新たな観光スタイルになっている。
運営するのは、ツアー企画会社「マリカー大阪」(大阪市福島区)。
本多洋二朗社長(30)が10月に始めた。
使用するカートは普通運転免許証や国際免許証などがあれば誰でも運転可能。
レンタルコスチュームはマリオやピカチュウ、ハローキティなど人気キャラ約50種を用意した。
ゲームの世界を大阪の観光地で体験できると、すぐに香港の観光サイトに取り上げられた。
2時間コースなら通常8千円(税込み)だが、SNSにレビューを書き込めば6千円(同)になるサービスを取り入れたところ、利用者の多くがSNSに写真や動画をアップし、それを見た人が訪れるなどして人気が拡大。
毎日3回(各回定員10人)のツアーは、連日予約が絶えず、その9割以上は香港や台湾、オーストラリアなど外国人観光客という。
12月中旬、台湾と香港から観光で訪れた男女8人がツアーに参加。
音楽家の周佳吟さん(28)はマリオのコスプレを選んだ。
「ネットでツアーを知った。
子供のころに夢中になったゲームの世界を体験できると思った」と笑顔で話し、大阪・キタを中心にめぐる2時間コース(約30キロ)を体験。
大阪市北区のグランフロント大阪周辺や御堂筋を走り、大阪城公園前では、カートをとめて天守閣をバックに記念撮影。
都会の真ん中をキャラクターになりきり、ゲームの世界を満喫した。
通行人から手を振られたり写真を撮られたりすることも多く、台湾から来たエンジニア、蕭伯美さん(40)は「まちの景色が違ってみえてすごく楽しかった」と興奮気味に話した。
3時間コース(通常1万円、SNSレビュー価格8千円)では、心斎橋や通天閣まで足を延ばすことも可能で、終了後は、ツアー中にスタッフが撮った写真や動画のデータを参加者に転送するサービスも好評だ。
今年1〜10月の訪日客が初めて2千万人を突破し、旅行消費額も約3兆5千億円に達するなど、インバウンド市場が拡大する中、大阪市此花区の「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」は、マリオなど任天堂の人気ゲームキャラが登場する新エリアの開設を発表。
今月16日には、スマートフォン用ゲームアプリ「スーパーマリオラン」の配信が始まるなど、今後も日本のゲームの世界を体験したい訪日客の増加が予想される。
本多社長は「今後、乗り捨てサービスもつくり、観光の移動手段にしていきたい」と意気込んでいる。
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■まるで「ゲームの中」
「コスプレをしないと逆に恥ずかしいですよ」
取材を申し込むと、担当者にそう言われた。
子供の頃、ゲームで遊んでいたスーパーマリオにふんし、カートに乗り込むと、「マリオの世界が現実になった!」と感動。
気持ちが高まった。
車体が低いカートで公道を走るため、最初は緊張したが、次第に慣れ、楽しくなってくる。
いつもと違う大阪の景色は新鮮だった。
御堂筋を南下し、大阪城前を抜けて中之島へ。
信号待ちで停車すると通行人から一斉に視線を浴びた。
「マリオやん!ルイージもおる!!」。
多くの人に写真や動画を撮られ、手を振られる。
他の参加者は笑顔で手を振るなどサービス満点だが、私は最後まで恥ずかしさが抜けなかった。
「確かに、誰も知り合いがいない非日常の旅先なら試してみたいかも」
外国人旅行者に人気な理由が分かった気がした。
(猿渡友希)