人気アクションゲーム『Axiom Verge』をたったひとりで5年かけて作りあげたクリエイターのお話

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文・取材・撮影:ライター 櫛田理子
●自分がこれを完成させられると信じることがいちばんたいへんだった
2016年7月9日〜10日、京都市勧業館みやこめっせにてインディーゲームの祭典BitSummit 4thが開催。
10日には、世界的にヒットした探索型横スクロールアクションゲーム『Axiom Verge』を、たったひとりで5年かけて作りあげたという、Thomas Happ Gamesのトム・ハップ氏が講演を行なった。

『Axiom Verge』は、『メトロイド』を彷彿させるレトロテイストの探索型アクションゲームで、SteamやPS4などでリリースされ、高い評価を得ている。
その作者であるハップ氏は、もともとペトログリフ社、エレクトロニック・アーツ社などの大企業で、プログラマーやアニメーター、テクニカルアーティストとして、大規模なチームで作るゲームに関わっていた。
『Axiom Verge』の開発をはじめてから4年間は、サラリーマンとしてふつうに勤務しつつ、夜や週末に制作していたそうだ。

人のためのゲームは生活のために作るゲームになってしまうが、『Axiom Verge』は自身の趣味として楽しみながら作ることで、気晴らしやリラックスになり、テレビを見たり漫画を読んだりして過ごすのと同じような感覚で開発できたという。
開発するうちに、周囲から「プログラミングに集中できるように、アートを作らせてくれないか」と提案されることもあったというが、「いちばん自分がやりたい“醍醐味”の部分を人に渡すなんて、あり得なかった」とハップ氏は語った。

開発にあたってもっともたいへんだったのは、プログラミングでもアートでもなく、「自分がこれを完成させられると信じること」だったというハップ氏。
そんなとき、やはり開発に4年もかかり、じわじわと人気を得ていった天谷大輔氏の『洞窟物語』という“前例”を知って、「こういうことができる人がいるなら、自分にもできるんじゃないか」と勇気づけられたのだとか。
そして、2番目にたいへんだったのは、モチベーションの維持だったと回想。
そこで、ハップ氏は個人的に苦手な部分をシンプルにしたり、あとまわしにしたりして、好きな部分に時間をかけるように工夫したそうだ。

資金に関しては、サラリーマンとして得た給料を投入。
個人的には、kickstarterは最後の砦であるべきと考えているという。
理由は「出資者からの期待やプレッシャーが大きな負担になり得るから」。
パブリッシャーと契約するのはたいへんだが、仮にできた場合、作品がそんなにウケなかったとしても、先に進みやすいのではないかと見解を述べた。
また、国からの補助金の活用など、資金調達にはいろいろな手段があることも付け加えた。

もともと自分の楽しみとして開発し、儲けようと思っていたわけではないというが、結果として商業的にも成功した『Axiom Verge』。
ハップ氏のケースも『洞窟物語』の天谷氏同様、“前例”となってインディーゲームクリエイターを勇気づけることになるだろう。

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