中国では「ポケモンGO」の偽物が早くも登場

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ポケモンGOが日本でも配信が開始された。
世界の話題を独占しているが、中国ではどう扱われているのだろうか。
その前にまず中国のポケモンの知名度や電子ゲーム事情から探ってみよう。

■ポケモンの知名度は抜群
ポケモンの中国語訳は「精霊宝可梦」という。
中国のネット辞書「百度知道」は、1996年の第1世代から2016年冬に発売予定の第7世代「精霊宝可梦太陽・月亮」(ポケモン・サンムーン)まで、非常に詳細な歴史と作品の解説を載せている。
ゲーム市場最も売れたソフトの1つ、任天堂の制作した最も優れたゲームと記されている。

しかし中国語地区においても相当の人気を持っているが、中国語版は未だ発売されていない、これに対して中国人の発起人グループが、中文版発売を求める請願の動議を提出した、とも書いてある。
何のことはない、つまりポケモンは他言語版からのコピーによって中国に浸透したのだ。
いつものことでいちいち驚くには当たらない。
ともかくポケモンは、このようにして80后より下の世代に広く周知されるに至った。

■中国の電子ゲーム事情
中国の電子ゲームについては、WiiやDS、プレイステーションや、Xboxの本体、正規ソフトの輸入販売は禁止されている。
実際に店頭で販売されたこれらの商品は、闇ルート品またはまがい物だ。
任天堂は違法コピーされ放題の実態に対処するため、神遊科技という会社を通して、中国国内バージョンの固定機、中国版「DS LITE」や「神遊機」などを改訂版も含め逐次投入している。

しかし販売数はいずれも20万台から50万台程度に留まった。
やがてゲームは、スマホやタブレットなどでダウンロードする時代となり、ハードの持つ意味は低下する。

現在の玩具売場では、知育玩具としてディスプレー付きのゲームがいくつも販売されている。
しかしいずれも安っぽい作りで価格のみ異様に高い。
独自の発展を遂げた、というべきだろうか。
さらに言えば玩具売場全体が“うさんくさい”。
例えば「LEGO」などもパッケージだけでは本物かどうか分からない。
玩具・ゲーム業界は、中国でも指折りの悪辣にしてアウトローな業界と言えるだろう。

■ポケモンGOの報道は?
ポケモンGOはこれまでとは違い、「口袋妖怪GO」と翻訳されている。
口袋とはポケットの意味で「精霊宝可梦」より直訳となっている。
ネット記事や微博から面白い記事をいくつか拾ってみよう。

アメリカでは多くの「宅男」「宅女」(ひきこもり)がこの一週間、突然、遠足愛好者に変わった。
それは「増強現実遊戯」ポケモンGOの影響である。
という見出しから、遊び方の説明があり、最後にポケモンGOのアクティブユーザー数が、Twitterに迫っていることを紹介している。

中国の網友(ネットユーザー)は、「熱切期待」しているとし、「ポケモンは幼年時代の美しい記憶だ。
これほど楽しいゲームがあるとは思いもよらなかった。
ポケモンGOは、今年最も期待のゲームに違いない。
早期の国内登録開始を期待する。
」という率直な声を紹介している。

また人工知能領域の専門家による、「ポケモンGOは確実に中国軍事機密の流出につながるだろう」という話も紹介されている。

「日本のものに興味なんかない、要らない」という意見もあった。
また日刊紙においては、アメリカや日本での騒動は報道されていない。

筆者周辺の若者や小学生にも聞いてみた。
ポケモンやピカチュウは全世代の全員が知っていた。
しかしポケモンGOとなると小学生は何も知らず、若者は全員、アラフォー世代も概ね知っていた。
やはりスマホで情報収集するようにならないと、世界の動きはわからない。

■早くもまがい物が登場
香港からの報道によれば、早くもまがい物が登場している。
記事によると「口袋妖怪GO」(ポケモンGO)の国内提供は未知数である。
中国国内の強大なまがい物商たちが、これを見逃すはずはない。
「口袋妖怪GO」と“相似形”の「城市精霊GO」がすでに3月、リリースされていたという。

さらに新しいまがい物のリリースも迫っている。
簡体中文の完全な中国内地向け仕様という。
同じく精霊たちを主役としているが、こちらのそれは可愛くないようだ。
中国風のアレンジで、古典地理書「山海経」に登場する伝説の龍や蛇女などが、キャラクターに使用されている。
お試し版を提供されたユーザーの反応は辛辣で、こんなもの早く削除してしまいたい、と発言している。
そのためまがい物商は、発売をためらっているらしい。
ともかくまがい物市場は活況を呈している。

■変わらない光景から抜け出せるか?
3年ほど前、中国で任天堂などのゲーム機とソフトが解禁になる、との噂が出回った。
しかしこれは未だ実現していない。
世界中で巻き起こった今回のポケモンGOブームで、さらに遠のいた、と見るべきだろう。
社会秩序を乱すものは何にせよ受け入れられない。
そして、おどろおどろしい偽物とまがい物だらけの混沌の世界が、これからも展開されて行く。

先週、トランプ米共和党大統領候補は、指名受諾演説の中で、「中国ほど知的所有権を尊重しない国はない。
」と非難した。
これは是非、民主党候補にもお願いしたいところだ。
そして我々日本人も面白がっているばかりではなく、声を上げねばならない。
何もしなければ、何1つ変わるはずはない。
(高野悠介、現地在住の貿易コンサルタント)

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