優良企業が多い中国?なぜ評価される日本企業が少ないのか
日本は世界に誇る優良企業があまたある。
そう思っているのは日本人だけかもしれない。
この程、フォーブス誌が発表した「アジアの優良企業ランキング」において、日本企業で選出されたのは2社のみ。
上位を占めたのは中・印・韓だった。
■旬の中国市場22社がランクイン
中国からは22社がランクインし、優良企業最多数を記録した。
昨年から3社減ったが、他国を大きく引き離す余裕がうかがえる。
テクノロジー関連の企業が圧倒的に多く、国際的知名度を確立したアリババ、バイドゥ(百度)、テンセント(騰訊)といった大手が名を連ねる。
新興勢力では、幅広い分野のインターネット情報発信で急激な成長をとげたYY、中国人観光客に人気のオンライン・トラベル企業、シートリップ(携程)といった「現代の中国市場」を代表する企業が肩を並べている。
次いでインドからは8社が選ばれた。
こちらは2社減だが、HDFCといった銀行系とオーロビンド ファーマなどの製薬企業に加え、自動車メーカー、アイシャー・モーターズが強いようだ。
香港は中国生物製薬を始めとする4社、韓国からは1社増えて5社が選ばれたが、そのうちの1社であるLG生活健康は日本にも進出している。
日本、台湾は各2社。
そのほかマレーシア、タイ、ベトナム、フィリピン、インドネシアから各1社が選ばれた。
■日本を代表するのは2社
第一審査の対象となったのは、「上場一年以上」「年間売上高17億ドル(約1730億9400万円)以上」の1524社。
次に負債比率、あるいは親会社や政府による株の保有率が5割以上の企業をふるい落とし、多数の財務指標に基づいて上位50社が選出された。
50社という狭き門をくぐり抜けた日本企業2社が、日本ペイントとサイバーエージェント である。
日本ペイントは創業130年の歴史をもつ総合塗料メーカー、日本ペイントホールディングスグループ の傘下企業である。
建築物から大型構造物、自動車の補修塗装、船舶用など広範囲な目的に見合った塗料の開発、製造、販売を請け負い、年間売上高は45億ドル(約4581億9000万円)、時価総額は105億ドル(約1兆691億円)。
1998年に設立されたサイバーエージェントは、同年クリック保証型のバナー広告システム「サイバークリック」でブレイクした。
翌99年にはベンチャー・オブ・ザ・イヤー受賞を獲得し、設立わずか2年で東証マザーズに上場している。
その後も月間PV数が72.9億(2015年6月時点)という巨大プラットフォームに成長した「アメーバ」を立ちあげたほか、Cygamesでスマホゲーム市場に参入するなど数々の革命を起こしている。
2008年以降はサンフランシスコ、ベトナム、韓国、シンガポールにも進出を果たし、年間売上高21億3000万ドル(約2168億7660万円)、時価総額36億(約3665億5200万円)ドル。
■中国固有の土壌を深く理解した自国企業が覇者となる
他国と比較して、中国企業の何がそれほど秀でているのか。
今後の日本企業を占う上でも、気になるところだ。
ランクインした22社は、ほかの地域では類を見ない中国市場の特徴を最大限に活かすことで、成功をおさめた企業ばかりだ。
中国市場の特徴として、密着と適応があげられる。
分野を問わず、政府との強力なパイプラインと支配力をもった自国の企業が、市場を完全に独占している状態だ。
その代表的存在が、世界最大規模のeコマース企業、アリババである。
中国政府の「海外企業締めだし」は、徐々に軟化の姿勢を見せているとはいえ、海外企業が進出を果たし、成功をおさめるには苦戦を強いられる土壌だ。
単純明快ではあるが、自国の消費者の需要を理解し、自国の市場に最適な戦略を打ちだした企業が強いのである。
自国の市場を制覇できれば、人口13億8000万人を超える、世界最大の市場を制覇したことになる。
中国が6年連続で最多企業を輩出した秘密はここにあると言えるだろう。
この6年は中国市場における消費、特にオンラインを通した消費が、劇的な伸びを見せた時期と重なる。
企業の成功を下支えするのは常に消費者という、最もわかりやすい例だろう。
■先進国の息切れ新興国の躍進
ほかのアジア諸国とは対象的に、年々選出される企業数が減少傾向にある日本。
ランキングの発表が始まった2005年には13企業選ばれていたが、5年後にはすでに2社(任天堂 、楽天 )にまで急激に落ちこみ、2011年にはゼロ。
そのまま大きな再浮上を果たせずに、くすぶり続けていた。
主な原因として、日本経済の低迷が長期化していることが挙げられるが、実際は「需要対象の移行」に起因するところも大きい。
同様に、10年前は日本に次ぐ「優秀企業国」だったオーストラリアも、やはり5年後には2社、今年は1社もランクインを果たせなかった。
日豪がランキングを制したひと昔前には、ランクイン企業が当時盛んだった重工業に集中していたと指摘する声がある。
確かにその後テクノロジー企業がジワジワと伸びを見せ始め、特に今年の上位はテクノロジー関連企業が圧倒的な勢いを見せている。
また製薬や土地開発市場も底堅い。
そうした意味で、成長過程にあり、国土が広くネットワークが重要な中国、インドの企業が活躍するのは当然のことである。
今後の注目は国をあげてのビジネス改革を実施しているシンガポール、今年初ランクインとなったベトナムだろう。
両国におけるテクノロジーの進化には類まれなものがあり、FinTech分野でも大いに期待されている。
日本の企業がアジアのトップに返り咲くために必要なものは、テクノロジーや国際化といった目に見えるもの以上に、「消費者を動かす原動力」という原点回帰的な要素なのかも知れない。
(ZUU online編集部)