プレイステーションVR、自宅での利用には最適―製品レビュー

クリスマスはまだ少し先の話だが、今年のプレゼントにティーンがおねだりするのはソニーのバーチャルリアリティー(VR、仮想現実)ヘッドセット、「プレイステーションVR(PSVR)」で決まりだろう。

自宅で仮想現実を体験したいのなら、現時点ではPSVRがベストな選択肢だ。
加えてPSVRのヘッドセットはゴーグルの部分が点灯して見た目も型破り。
装着すれば映画「トロン」の登場人物のようになれる。

プレイステーション本体はこのネオンのような光を感知してユーザーの頭や手の動きを追跡する。
これによってユーザーはゲームの世界により入り込めるようになり、バットマンのように腰のかぎフックを使うことができる。
映画を再生すれば、頭を動かすだけで作品の監督になったような気分を味わえる。

ソニーが作り出したこのVRの世界は、まだ現実そのものとはほど遠い。
なにしろユーザーはヘッドセットを装着しなければならないし、背面は長いコードでプレイステーション本体とつなげられた状態だ。
しかし筆者は今回PSVRを使いながら、任天堂のWiiでテニスのバーチャル試合をして以来の興奮を覚えた。
これまでのゲーム機や「グーグル・カードボード」、そしてサムスン電子の「ギアVR」と比較しても、PSVRはゲームへの没入感を格段に前進させることに成功したと言える。

それも別にPSVRのテクノロジーがすごいという意味ではない。
競合製品として挙げられるグーグルの「オキュラス・リフト」や宏達国際電子(HTC)の「バイブ」は、高性能なパソコンに接続して使うこともあり、より高度なVR体験を提供している。
しかしソニーは最新の技術とひきかえに、幅広いオーディエンスにアピールできる機能をPSVRに詰め込んだ。
これは賢い選択であり、それによってVR技術は高価なハイテク商品から各家庭で楽しめるものへと変化を遂げたと言える。
VR業界にとってはこの進歩は重要だ。

今回の記事のため、筆者は1週間にわたって同僚のネイサン・オリバレス・ジャイルズ記者とPSVRを利用した。
VR技術には今後さまざまな可能性があるとされている中で、PSVRはその用途をエンターテインメントに絞った製品だと感じた。
来週PSVRが売り出されるのと同時に使用できるソフトは30本。
それに加えて7本ほどのミニ映画なども発売される予定だ。
オキュラス・リフトは既に100本のタイトルがそろっているので、やや出遅れ感はある。
しかしソニーは長年にわってゲームや大作映画を手掛けてきた経験を生かし、今後さまざまなソフトを提供していくことが予測される。

ジャイルズ記者も筆者も、PSVRを通して見る映画やパズルなどのミニゲームには感心させられた。
ジャイルズ記者はローラーコースターに乗って悪役ピエロを撃っていく「アンティル・ドーン:ラッシュ・オブ・ブラッド(原題)」にだいぶ時間を費やしていた。
ゲーマーであるジャイルズ記者がまとめたPSVR向けソフトの批評は、こちらで読んでいただきたい(英語)。

家庭で楽しむためのシステム
PSVRは家庭で楽しめるために設計された製品だ。
必要なのは全世界ですでに4000万台が売れているプレイステーション4の本体。
本体がなくても、今なら新品が300ドルから購入できる。
プレイステーションカメラなど必要な機械をすでに所有しているユーザーは、PSVRの本体だけを400ドルで購入することも可能だ。

PSVRの箱を開けプレイステーション本体にコードをつなげれば、15分もかからないうちに準備は終わる。
一方、オキュラス・リフトとバイブをセットアップした時は、自分にエンジニアリングの知識が足りないことを実感させられた。
あちらはハイエンドのパソコンにつなげるだけでなく、特別なグラフィックカードやドライバーなども必要だ。

PSVRのセットアップで1番苦労したのは、プレーヤーの動きを追ってくれるカメラをどこに置くかという点だ。
ソニーはテレビの上に設置することを推奨しているが、その位置は高すぎても低すぎてもうまくいかない。
カメラが窓に向けられている場合も、日光によってシステムがうまく作動しないこともある。

PSVRはテレビとプレーヤーが座る椅子の間が守備範囲だ。
具体的にはテレビ前の横幅1.9メートル、たて幅3メートル程度のエリア内で使用することを想定している。
今回ソニーに提供してもらったゲームは座って遊ぶか、立っているとしてもほぼ動かないで楽しめるような内容だった。
ちなみにプレーヤーが本体から離れすぎてしまうと、画面にはカメラの範囲内に戻るように促すサインが表示される。

この限定されたエリア内のみでの利用はPSVRの強みでもあり、弱みでもある。
範囲内から出てしまうたびに表示される警告には少しうんざりしたし、ゲームを開発する側としても没入感を演出するに当たってこの制限に苦労させられただろう。

しかし今回試したゲームにはそれを補うクリエーティブなアイデアに満ちていた。
20ドルで購入できる「サンパー」は筆者が特に気に入ったソフトのひとつ。
プレーヤーは高速道路のような道を、昆虫のような物体になりきって滑るように移動する。
VR技術が何か新しい操作方法を可能にしたというよりも、VR技術によってこれまでのゲームがより迫力を増した、という印象だ。

PSVRは限られた空間のみで遊べるので、家の模様替えをしなくても使えるのも利点だ。
ヘッドセットをつけたままテーブルに激突してけがをすることがないよう、誰かに注意深く見守っていてもらう必要がない。
パソコンを起動し家具を避けながら遊ぶ他のシステムとは違い、PSVRは雨の日でも気軽に始めて友人と楽しめる仕様だ。

ヘッドセットの装着感
PSVRのヘッドセットを装着しても違和感がないよう、ソニーはいくつかの工夫をほどこしている。
重さはオキュラス・リフトとほぼ同じだが、頭に固定させる方法の違いからか筆者はPSVRの方が軽く感じられた。
ヘッドセットの端の部分は通気性がありながらも光を遮断するようにデザインされているが、中には少し明かりを感じられるという人がいるかもしれない。
筆者は45分にわたってヘッドセットを装着していたが、レンズが曇ることも、暑いと感じることもなかった。
ソニーは12歳以下の子供にはヘッドセットの利用を推奨していないが、これは頭が小さい子供にとってレンズの部分が離れすぎているからだ。
また、PSVRは1時間の利用ごとに15分の休憩を挟むことが推奨されている。

ヘッドセットの中は、角度が100度くらいの視界が広がる。
ヘッドセットを付けているのをぎりぎり忘れない程度の視野の広さだ。
PSVRのディスプレーの解像度は2メガピクセルを上回り、各ピクセルが3つの「サブピクセル」を含んでいる。
このディスプレーとレンズのおかげで、他社の競合製品と比べてもスクリーンを見ているような感覚が少ないように感じられた。
ディスプレーのリフレッシュレートはとても高く、最大120ヘルツ。
動きながら使用をしていても、オキュラス・リフトほど酔うような感覚はなかった。

PSVRのオーディオも仮想現実に没頭できるように大きな役割を果たしている。
音によって仮想現実内の自分の位置を体感できるような工夫もあった。
例えば20分の映画「アリュメット(原題)」を視聴した際に何か音が聞こえたので頭をそちらに向けてみたら、隠れキャラを発見することができた。
ちなみにこの「アリュメット」は、筆者がVRで初めて涙ぐんだ作品となった。

プレイステーション4の他のゲームがそうであるように、VR向けのソフトを開発する会社もどのようにこの技術を応用するかは自由に判断を任せられている。
しかし、それは混乱を招くこともある。
VRの中では無限とも言えるほどの方法で仮想現実や3次元の世界を操作できる。
さらに通常のゲームのコンローラーを使ったり、モーションコントローラーを使用する場合もあるからだ。
例えば「バットマン:アーカムVR」内の洞窟を移動したい場合は、実際のバットマンのように腰に装着したかぎフックを前方に放つ動作が必要だった。
ありがたいことに多くのタイトルが画面上で操作方法を表示してくれるので、コントローラーのボタンの位置をすべて覚える必要はなかったが。

2人以上で楽しみたい場合
VRを楽しむ時の問題は、ヘッドセットを装着したプレーヤーが盛り上がっていても横にいる友人は何が起きているのか全く分からないという点だ。
しかしソニーはこの点についていくつか対策を講じてある。
ヘッドセットを2つ購入しなくてもPSVRには「ソーシャルスクリーン」と呼ばれるオプションがあり、ヘッドセットの中の映像をテレビに映し出して友人に見せることができる。

筆者は昼食をとりながら前出のジャイルズ記者と「バットマン:アーカムVR」で遊んだ。
悪役ペンギンの子分を時間内に倒せなかったのでからかわれたりもしたが、2人で交互にヘッドセットを使っても、特に不自由を感じなかった。
競合他社のヘッドセットとは違い、PSVRは個人の頭の大きさごとに調整が必要なパーツがない。
PSVRは頭の大きさや鼻の位置にも影響されることなくすっぽりとはまり、ひとつのノブを操作するだけでユーザーに密着させることができる。

今回は試すことができなかったが、ソニーはヘッドセットを使っているプレーヤーと装着していないプレーヤーが同時に楽しめるようなゲームも準備しているという。
例えば「キープ・トーキング・アンド・ノーバディ・エクスプローズ(原題)」と呼ばれるソフトは、ヘッドセットを着用したプレーヤーがVR内の個室で時限爆弾を抱えた状態で始まる。
周りにいる人がテレビに映るヒントを読み解いて声で指示を出し、プレーヤーが起爆装置を解除するという内容だ。

今週、フェイスブックはオキュラス・リフトに関して新たな発表を行うという。
同製品がより魅力的な構成になる可能性もあるだろう。
しかしソニーにはリビングで楽しめる技術を数十年にわたって開発してきた強みがある。
オキュラス・リフトは、いわば近所の友人に買ってもらって自分もたまに遊ばせてほしくなる製品だ。
実際に自分で購入して使い続けるとなると、選ぶのはPSVRだろう。

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