幻のファミコンソフト「ドンキーコングの音楽遊び」は実在した? 外箱に描かれた「10本目のカセット」の正体は
初期のファミリーコンピュータ(ファミコン)には「ドンキーコングの音楽遊び」(以下「音楽遊び」)なるタイトルも予定されていたが、発売が中止され幻となった――そんな説が再燃しています。
発端は元ハドソンの桜田名人がTwitterで語った、「会社の棚にあったラベルのないカセットを起動してみたら、『音楽遊び』というタイトルが表示された」という思い出から。
いったいどんなゲームだったのか……?
もしかしてこれが「音楽遊び」?
開発中のサンプルとおぼしきカセットには、マリオがハンマーで鍵盤をたたいて音を当てるゲームや、IIコントローラーに搭載されたマイクでカラオケができる機能が収録されていたそう。
任天堂はファミコンが発売された1983年に、「ポパイの英語遊び」や「ドンキーコングJR.の算数遊び」といった知育系ゲームを発売しており、「音楽遊び」が予定されていたとしても不思議ではありません。
1983年当時はゲーム専門メディアが存在せず(世界初のファミコン専門誌である「ファミリーコンピュータMagazine」も1985年創刊)、ソフトの発売情報源はテレビCMや販売店に掲示されるチラシが主。
「音楽遊び」も「予告チラシで見た」という人々の記憶をたよりに、その存在はネットで昔からささやかれてきました。
チラシだけでなく、初期型のファミコンの外箱も根拠の1つ。
1983年に発売されたファミコンソフトは、「ドンキーコング」や「ポパイ」など全9作。
しかし外箱には10本のカセットの写真が写っています。
このうち印刷が不鮮明でタイトルまで特定できない1本が、「音楽遊び」ではないかと推測されてきました。
同作について編集部が任天堂に問い合わせたところ、「1983年内発売タイトルとして予定されていたことは事実」との回答。
ただ、企画の存在は明言されましたが、発売中止となった理由についてはノーコメントとのことでした。
また、外箱のカセット写真についてはイメージとして載せられたもので、どれか1本が「音楽遊び」を指しているといったことはないとのこと。
なお、当時の資料などは任天堂社内にも残っていないそうです。
発売中止になった理由について、桜田名人はTwitterで「収録した楽曲の権利関係がクリアーになっていなかったから」との関係者証言を明かしています。
また「ファミリーコンピュータMagazine」の山本直人元編集長は、「ファミコンのマイクが音声を解析できなかったから」(ファミコンのマイクは音が入力されているかどうかを0か1でしか認識できなかった)とTwitterで述べました。
当時の関係者による傍証があるとはいえ、完全な真相はいまだ不明な「音楽遊び」。
ただ、任天堂が「音を使った遊び」を30年以上も前から構想していたことは、貴重な事実かもしれません。