『GRAVITY DAZE 2』が目指す躍動感と生活感 ― 外山圭一郎氏インタビュー

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2016年12月1日に発売が決まった、PlayStation 4(以下PS4)向け重力アクション・アドベンチャーゲーム『GRAVITY DAZE 2』。
今回は、重力を操る爽快なアクションと圧倒的な世界観をもつ本シリーズのディレクターであるソニー・インタラクティブエンタテインメントの外山圭一郎氏に、グラフィックのこだわりや新要素、サウンドやアニメーションなど本作の多彩な魅力について伺いました。

――まずは、自己紹介をお願いします。

外山圭一郎氏(以下、外山氏):SCE(現:SIE)で『SIREN』、その前はコナミさんで『SILENT HILL』を開発しました。
ずっとホラーゲームを作っていたのですが、いまはまったく別のジャンルである『GRAVITY DAZE』シリーズのディレクターを担当しています。

――『GRAVITY DAZE』を企画した経緯について教えてください。

外山氏:学生時代に漫画家であるメビウス氏のバンドデシネに惹かれていたので、いつかはあのような世界観のゲームを作りたいなと考えていました。
そんな折、機会に恵まれ実現したのがこのシリーズです。
具体的な内容より、オープンワールドのような世界で空中を飛び回っている漠然としたイメージがスタートでした。
ただ、当時は仕事でビルとビルの間を頻繁に移動する必要があり、もうちょっと楽に移動できないかなと考えたのがキッカケかもしれません(笑)。

――『GRAVITY DAZE 2』はどのようなコンセプトで開発をされていますか?
外山氏:前作では、PS Vita発売から早い時期にリリースという目標があったので、キリのいいところまでを収録しました。
ただ、グラビティ・キトゥンの物語をしっかりと結末まで描きたいという思いがありました。
本作では明るく開放感ある世界に一新し、「Lively(ライブリィ)」というキーワードで躍動感や活動的でアクティブさを感じるものをベースに作っていくことになりました。
そのうえで、前作をプレイしたユーザーさまから挙げられた色々な要望……「ストーリーが終わったあとも世界に浸っていられるようなやりこみ要素が欲しい」「アクションがシンプルでおもしろいけれどもっと多様性がほしい」といった点を拾いながら変えていくというのが、続編を作るにあたってのコンセプトです。

――PS VitaからPS4にハードを移されて、続編をPS4でリリースすることにしたのはなぜですか?
外山氏:当初はPS Vitaでなるだけ早く続編をと考えていたのですが、重力に巻き込まれるキャラクターやオブジェクトの説得力、高さを感じる空気感やリアリティといったコンセプトの向上があったのでPS4に完全移行となりました。
開発の際は、オブジェクトの挙動やすれ違う人の目線など細かい部分の作りこみには予想以上に苦労をしました。

――そうした作りこみは、先ほどの「ライブリィ」というコンセプトを実現するためでしょうか?
外山氏:そうですね。
本作の街中を一言で表すと、中南米やアジアの都市のような猥雑で活気がある感じを表現したいと思っていました。
そうした街の中を、人々が理路整然と歩いていると説得力がありません。
そのため、モーションはいまでも日々変わるぐらい細かな調整をしています。
マップのなかでは、一番複雑で時間がかかり大変だと予想された市場から手がけています。

――生活感を写せる「フォトモード」について教えてください。

外山氏:自分自身がカメラ好きで、知らないところを歩いていたら思いがけずいい風景に出会えてシャッターを切る、こうした経験をゲームの中で再現したいというのがキッカケです。
また、前作をプレイされたユーザーさんの声で「街の人とコミュニケーションをとって、街にいるという気分を体験したい」というのを叶えたかったというのもあります。
ゲーム内では写真が撮れるようになると空白のアルバムが渡され、お題の写真を集めていくというミッションもあります。
報酬にはジェスチャーやフォトアイテムなどもあり、特に物を食べるアクションについてはかなり作り込んでいるので期待していてください。

――撮影について、具体的にどのように遊んだら楽しいですか?
外山氏:特定の時間だけにしか登場しないものを見つけて撮影したり、撮影した写真をフレンドや不特定多数のユーザーに流してリアクションをもらったり、といったようなちょっとした心地良いリズムを感じていただけたらと思っています。
本作ではリアルの時間とゲーム内の時間がリンクしている仕掛けもあるので、例えば写真をSNSに投稿して「いま○○が見えるよ!」という風に使っても面白いですね。
ネタっぽい状況も作りこんでいるので、色々探してみてください。
――ゲームボリュームは、前作と比較してどのぐらいですか?
外山氏:マップの広さを単純に比較すると2.5倍以上で、もちろん密度も段違いです。
サイドミッションは最初から約50個収録、チャレンジミッション、採掘モード、フォトモードなど、様々な要素があるので……遥かに多く遊べると思います!
――新たに「アトリビュートチューン」というアクションを追加した理由について教えてください。

外山氏:今回はアクションのモードとして、前作と同じ「アンチューン(ノーマル)」、重力特性が軽くなる「ルーナチューン」、重力特性が重くなる「ユピトールチューン」の3つがあります。
入手すると、自分の好きなタイミングで随時切り替えてプレイができます。
狙いは重力キックに偏っていたアクションをリニューアルするためですが、新しい技を追加しても操作が複雑になるだけですよね。
そこで、技をまるまる全部変えることで、特性は変わるけれど操作は同じというシステムにし、複雑にならず多様性がアップできたと思います。

――まるで3人のキャラクターを操作しているようなプレイ感覚ですよね。

外山氏:そうですね。
最初はそれぞれの能力を一長一短にする、例えばユピトールチューンは動きが重いけれど攻撃力が高いというように考えていました。
しかし、テストプレイをしてみるとデメリットの部分はあまり楽しくないというリアクションが多かった。
そこで、重力は重いけれどイヤな感じは受けない調整をしていった結果、どのモードもとても強くなってしまいました(笑)。
また、ある程度敵との相性はありますが、プレイヤーが好きなモードを好きなタイミングで使って楽しんで欲しいので、この場面ではこのモードを使うといった必要がないようにしています。

――プレイスタイルの自由度が高いということですね。

外山氏:はい。
例えば、ルーナチューンで重力スローをすると「ボルテックススロー」という技になり、空気の渦が発生して触れた敵は吸い寄せられます。
そこにユピトールチューンによる重力キック行うことで、動きが速く硬い敵を倒すといったアイディアを作っていただけたら、ヒーロー感を感じられてよいかなと思っています。
ゲームとして難しくはしたくないけれど、突き詰めていくとしっかりと歯ごたえがありますよ。

――育成について教えてください。

外山氏:前作にあったジェムによる育成はもちろんですが、今回は「採掘モード」で手に入る「タリスマン」というアイテムも育成に使用できます。
「採掘モード」は通常のフィールドとはちがう採掘場に行って、ジェムやタリスマンを集めるハック&スラッシュ的な遊びができるサイドミッションです。
「タリスマン」は様々な能力がランダムで入っているお守りのようなものです。
詳細はまた別の機会にご紹介できればと思っています。

――上下の階層があるエリアが印象的でしたが、移動はしやすいのでしょうか?
外山氏:前作の序盤ではあまり飛んでいられませんでしたが、本作ではかなりプレイしやすくしています。
最初からかなり自由に飛び回われるようになっていますし、さらにタリスマンで拡張してより飛ぶこともできます。

――クロウとの共闘はどのような形になりますか?
外山氏:クロウはプレイアブルキャラクターではなく、パートナーキャラクターとしてプレイヤーが戦っているときに協力してくれます。
ただ、クロウを使ってシステマチックな戦いにならないために、自律的に戦うキャラクターになっています。
一緒に戦えるパートのボリュームは、ストーリー内にしっかりとありますよ。

――天真爛漫なキトゥンの魅力について教えてください。

外山氏:社会が大きなうねりを見せている世界なので、自分が投影できるような等身大の感覚を持ったキャラクターにしたいと思ってデザインをしました。
ただ、PS Vita版のゲーム序盤を開発している頃はキトゥンの細かい性格が決まっていませんでした。
キャラクターデザイナーの斎藤が描いた、無造作にあぐらをかいているモーションなどからキャラクターのイメージを膨らませていき作られました。
そのため、改めて前作を見直すといまほど天真爛漫なキャラクターではなく、少し辛辣なところがあったりしますね。

――『GRAVITY DAZE 2』のキトゥンは、1の頃とどのような変化がありましたか?
外山氏:ゲームのスタート時は前作で街を救ったヒーローという立場から一転して、採掘の街でこき使われているという悲惨な感じになっています。
ただ、気がついたらわりと馴染んでしまっていて、結構ほのぼのした感じになりました(笑)。
ストーリーが進んでいくと、キトゥン独特の視点から世界を見ていきます。

――キトゥンのコスチュームチェンジやDLCはありますか?
外山氏:コスチュームチェンジは前作以上に気合を入れて作っており、初回限定版にも付いてきますが本編内にも多数収録されています。
いまは製品版を作っている最中なので、DLCはできたらいいなとは考えています。

――土管の家のようなキトゥンのプライベートスペースは本作にもありますか?
外山氏:用意をしています。
今回は部屋の飾りを集める要素もありますよ。

――そういえば、最新PVに白ずくめで仮面の新キャラクターが登場していたようですが…?
外山氏:はい、出てましたね。
名前は「アンジェ」と言い、街の守護天使を名乗っています。
重力使いではないのですが、結晶肉体の自己再生能力を持つパワーファイターで、ストーリーにもガッツリ関わってきます。
その他については、お楽しみということで(笑)。

――PVでは、クロウの髪が青くなっている姿もチラ見せされましたが。

外山氏:よく気が付きましたね(笑)。
これについては追々公開して行きたいと思います。

――音楽で新しくインタラクティブな試みをされているそうですが、どのようなものですか?
外山氏:PS4になったことで色々なことができるようになり、例えば、曲から曲にぶつっと変わるのではなく、すごく細かく遷移できるポイントを用意して、曲が途切れることなく流れるようにしています。
また、敵がそれぞれテーマ曲を持っていて、2つのテーマが重なっても曲として成立しているようにできたらいいなと田中公平先生にお送りしたところ、とても驚かれたのですがしっかり完成させてくださって感謝しております。

――音楽をオーダーするにあたってのコンセプトはありましたか?
外山氏:1の最初のときは、『ジャングル大帝』や『リボンの騎士』のような70年代ぐらいのアニメ的なオーケストラをいまやりたいというコンセプトからスタートしました。
加えて、『GRAVITY DAZE』のイメージグラフィックなどから田中先生が想像を膨らませていって、結果的に様々なサウンドを内包したいまのような音楽になりました。
さらに本作では、アジアや中南米の楽器や旋律が持つ楽しげな雰囲気が加わっており、前作以上に幅広くなっています。
おそらくゲームのサウンドトラックと名のつくもののなかでこんなに幅広い音楽はないと思います。
演奏家の方もトップレベルの方を揃えてくださったのですが、収録時にお話を聞くと「なんじゃこりゃ」と言われるくらい、楽曲としてむずかしいリズムの切り替えなどもやられているそうです。

――サウンドトラックは発売される予定でしょうか?
外山氏:現在はまだ未定ですが、前向きに検討したいと考えています。

――アニメーションを担当されたのはスタジオカラーさんですが、ゲーム中ではどういった形で携わっていらっしゃいますか?
外山氏:ムービーシーンのアニメーションをつけていただいています。
ベースとなるコンテはこちらで用意いたしましたが、例えば「フェイタルムーブ」の前の演舞などカラーさんらしさが出ていると思うので必見です。

――ゲームを3Dアニメーション作品にしようと考えられたキッカケはなんですか?
外山氏:ゲーム内のアニメーションをお願いしているなかで、アニメーション作品も作れたらいいねという話が出まして実現に至りました。
プロモーションとしてだけではなく、アニメーション作品としてしっかりしたものを作りたいという思いもありました。

――アニメーションの内容を『GRAVITY DAZE 2』の前日譚にしたのはなぜでしょうか。

外山氏:ゲーム内ではキトゥンが採掘の村にいるところからスタートしているのですが、そこに至るまでの物語もしっかりと作っていました。
ただ、ここは少し重たい内容なので、何らかの形で補完したいと考えていました。
この部分では少し派手なアクションもあったので、アニメーションで作っていただけたらと打診してこのような企画となりました。
間の話というよりは2の導入になるような位置づけです。

――現在の開発状況について教えてください。

外山氏:すべての要素を入れ込むことは終わっていて、バランスの調整に時間をかけて行っている段階です。
タイムアタックなどがあるので、全員スコアが同じにならないような形の調整などに気を使っています。

――東京ゲームショウ(TGS)への出展は予定されていますか?
外山氏:はい、TGSにはとても力を入れたいと考えています。
試遊台やステージイベントを予定しています。
グッズもなにか作りたいと思っています!
――最後に、本作を楽しみにされているユーザーさんにメッセージをお願いします。

外山氏:まだまだ語り尽くせない情報がこれからもたくさん出てくるので、注目して追いかけていっていただければとてもうれしいです。

――ありがとうございました。

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