VR端末の“本命”業界活性化 応用範囲広くビジネスチャンス創出

ソニーが発売した「プレイステーション(PS)VR」は、仮想現実(VR)を楽しめる端末の“本命”として注目されている。
実際はそこにない空間に入り込んだような体験ができるVRはゲームとの親和性が高く、業界を活性化させそうだ。
ゲーム以外の幅広い分野でもビジネスチャンスが生まれ、多くの人のライフスタイルを変える可能性を秘めている。

PSVRが本命視されるのは、世界で4000万台以上普及している家庭用ゲーム機「PS4」の利用者が自宅で手軽にVRを楽しめるからだ。
高性能の端末は、米フェイスブック傘下のオキュラスなども販売しているが、10万円以上のパソコンにつながないと十分に機能を発揮できないうえ、端末も高価だ。

また、PSVRにはカプコンの人気シリーズ「バイオハザード」の新作など、優良なコンテンツが多く投入される見通し。
VRにはコンサート中継などの用途もあるが、同社の辻本春弘社長は「インタラクティブ(相互作用)が重要で、最も有望なのはゲームだ」と強調する。

任天堂は来年3月に新型ゲーム機「NX」を発売する予定だ。
スマートフォン向けゲームの存在感が高まっていたが、PSVRの発売で、家庭用ゲーム機への注目度が再び高まる可能性もある。

一方、VRで注目されるのは、応用範囲の広さだ。
13日に提供が始まったPSVRのコンテンツは26あるが、純粋なゲームは半分程度。
コンサートや舞台の観賞、姫路城観光を疑似体験するなど、映像コンテンツが目立つ。
ゲーム雑誌「ファミ通」を発行するカドカワの浜村弘一取締役は「PSVRはただのゲームの周辺機器ではなく、『進化したモニター』と捉えるべきだ」と指摘する。

ビジネスに活用する動きも拡大している。
三菱地所はマンションなどの内覧にVRを活用。
メルセデス・ベンツ日本は、VRで車両を確認できる「クルマを置かないショールーム」を期間限定で開設した。
NTTデータは、プロ野球選手がVRで打撃練習をできるシステムを開発し、海外展開を進める。

VRには、ゴーグル型のヘッドセットが大きく重いことや、体験で気分が悪くなる「VR酔い」など、克服すべき課題もある。
だが、調査会社トレンドフォースは2020年のVR市場を700億ドル(約7兆円)と予測するなど、技術革新による新しい需要への期待は大きい。
(高橋寛次)

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