リオ五輪「内村効果」、遊戯王、実況パワフルサッカー……コナミ株が15年ぶり高値に上昇した理由

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2016年の思い出深いニュースといえば? 読者のみなさんは何と答えるだろうか。

筆者は何と言っても「リオ五輪」だ。
とりわけ、内村航平主将率いる体操男子団体が金メダルを獲得した瞬間は、いまでも鮮明に覚えている。
8月9日の朝7時前、最後の種目の床で内村選手が着地を決めて優勝が決まった時の感動はいまだに忘れられない。
2004年のアテネ五輪以来3大会ぶりの快挙だ。

その日、内村選手が所属するコナミスポーツを傘下にもつコナミHD の株価はご祝儀相場で4.7%高と大きく買われた。
今回は同社の株価上昇の背景を見てみよう。

■内村選手はプロに転向、昨年11月にコナミを退社
昨年11月、内村選手は日本体操界初のプロに転向するためにコナミスポーツを退社した。
コナミがご祝儀で株価を上げた分下げてもよさそうだが、同社の株価は12月に入ってさらに上昇した。
先月26日には15年ぶりの高値となる4705円をつけたのだ。

内村選手は12月1日から、サッカーの長友佑都や岡崎慎司が契約するスポーツコンサルティングジャパンの「契約プロ」となった。
12月21日にはアシックス とスポンサー契約を発表。
今後はメインスポンサーを探し、2020年の東京オリンピックと体操の一層の普及を目指す。

コナミスポーツは、2011年に内村選手が日体大を卒業してから社員として5年間在籍した会社だ。
同社にはこのほか、リオ五輪代表の加藤凌平選手、山室光史選手、田中佑典選手が所属している。
コナミは、今後も内村選手のサポートを続け、これまで通り同社の施設で一緒に練習することも構わないと言ってくれている。

株式市場は、こういったコナミの「男気」を評価したのだろうか?
■好決算とカジノ法案、遊戯王
12月の株価上昇は「内村効果」が主因ではなく、好決算とカジノ法案、遊戯王が背景にあるようだ。

コナミは元来はゲーム会社だ。
任天堂のファミコンソフトで成長し1988年に東証2部に上場、同年のうちに東証1部に移行した。
「実況パワフルプロ野球」「実況ウイニングイレブン」「メタルギア」「遊戯王」「ダンスダンスレボリューション」などが有名だ。

そして、2001年にスポーツクラブ「エグザス」を運営していたニチイ系列(現・イオン)のピープル社(現・コナミスポーツ)を友好的株式公開買付にて子会社化、健康サービス部門に参入したのである。

■営業利益が大幅増益「2本柱」が寄与
昨年10月28日に発表した2017年3月期の中間決算(4〜9月)では、売上は1014億円(6%減)と減収ながら、本業の利益を示す営業利益は170億円(37%増)と大幅増益となった。

売上構成の44%を占めるゲームソフトを中心としたデジタルエンタテインメント事業と、同35%を占めるスポーツクラブを中心とした健康サービス事業という「コナミの2本柱」の大幅増益が寄与している。
通期の会社予想営業利益250億円(1%増)は据え置いたものの、通期予想に対する進捗率は68%と好調なペースで推移しており上方修正期待が高い。

一方、カジノ関連としては、注目のカジノ法案が12月15日に成立し、コナミが関連銘柄として人気を集めた。

コナミの売上の14%を占める3本目の柱はゲーミング&システム事業だ。
カジノ関連ビジネスはライセンスが必要な許認可ビジネスで、コナミは北米をはじめ全世界で404のライセンスを取得し、世界市場に向けてゲーミング機器およびカジノ・マネジメント・システムの開発製造をしている。
今上期のこの事業の売上は8%減と伸び悩んでいるが、カジノ法案の通過でこの部門の売上増が期待されよう。

■「遊戯王」の累計ダウンロード数が600万突破
また、ゲーム関連も好調だ。
モバイルゲームの「遊戯王デュエルリンクス」は11月17日から国内配信を開始、累計ダウンロード数は600万を突破した。
人気アニメ「遊☆戯☆王」を題材としたカードゲームのスマホ向けタイトルだ。
今月からは全世界で配信することが決まっておりさらに期待が高まる。

同じくモバイルゲーム「実況パワフルサッカー」は昨年12月7日から国内配信をはじめ、20日には400万ダウンロードを突破した。

コナミは、こうした株価をサポートする材料を背景に15年ぶりの高値をつけたのである。
2017年はどんな話題を提供してくれるのだろうか? 同社のニュースフローから引き続き目が離せない。

平田和生(ひらた かずお)
慶應義塾大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。
ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。
国内外機関投資家、ヘッジファンドなどへ、日本株トップセールストレーダーとして、市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスをおこなう。
現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。

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