「仁王」完成発表会。12年の歳月を超えてようやくできた卒業式
コーエーテクモゲームスは2017年2月4日、東京・表参道にある表参道ヒルズで、2月9日に発売されるプレイステーション 4用ソフト「仁王」の完成発表会を開催した。
発表会には同先のゼネラルプロデューサーであるシブサワ・コウ氏とプロデューサーの鯉沼久史氏、ディレクターの早矢仕洋介氏、安田文彦氏、ムービー監督を務めた映画監督の神谷誠氏、音楽を担当した菅野祐悟氏と、徳川家康役を演じている俳優の市村正親氏が登場し、トークセッションが行なわれた。
開会に当たって、ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジアのプレジデントを務める盛田 厚氏が登壇し、祝辞を述べた。
「本当に待ってました。
10年待たされたので、途中シブサワ・コウさんは諦めちゃったのかと思ったときもあり、ドキドキしていた」と盛田氏。
プレイステーションプラットフォームとしても、個人的にも待ちに待った日だと語る。
盛田氏の実家は造り酒屋だそうで、日本酒の熟成に本作の成長をかけて「長い年月を経つものは上手く管理しないと劣化してしまう。
『仁王』はこの間何度もユーザーテストを繰り返して、我々が見るたびに完成度が上がっていくという素晴らしいステップを踏んだ」と絶賛。
また、シブサワ氏が東京ゲームショウでのイベントで、落命しながらもクリアしたことに触れ、「シブサワさんがプレイして興奮しているのを見て、ゲームを楽しむ原点だと感じた。
そういう意味でも本作は完成度の高い、いいゲーム」と盛田氏。
「ワールドワイドでも評価が高く、待ちに待っているタイトル。
1人でも多くPS4と一緒に遊んでいただけるようプロモートしていく」と語った。
■“大作感”を出すために映画監督と大河ドラマの作曲家をアテンド
引き続き早矢仕氏、安田氏と神谷監督、菅野氏によるトークセッションに。
「このように大きなビッグタイトルに関わるのは光栄」と語る神谷監督。
ゲームからは離れていたそうだが、久しぶりにプレイしてみたいともコメント。
神谷監督と菅野氏が関わることになった理由として、「我々だけでは作れない“大作感”を作っていきたいと思ったから」と早矢仕氏。
神谷監督は、後ほど登場する樋口真嗣監督から「やってみない?」と声をかけられたのが始まりだったという。
「ゾンビが時代劇で戦うようなゲームなんだけど」と聞いていて、正式にコーエーテクモゲームスから依頼があったあとはちょっと違うな、と思ったのだそう。
「構想12年なんて言う作品をやらせていただいて良かったのかという気持ちですが、時代劇は興味があったので、是非やらせていただきたいと」(神谷監督)。
ここで発売日から公開されるWeb CMを披露。
「出しすぎなんじゃないかと思うくらいクライマックスシーンが盛りだくさん」(安田氏)なんだとか。
ちなみにこの映像だが、「3、4週間前くらいに依頼をもらって、1週間で仕上げた」と語る神谷監督。
ゲーム内のプレイムービーは使わず、ムービーパートだけを使って構成されている。
菅野氏はオファーが来たときになぜ自分に来たのか? と思ったという。
「よくわからないまま音響の方に“ここのシーンはどうしたらいいのか”と、手取り足取り教えてもらいながら作った」(菅野氏)。
なぜオファーが来たのか、発表会の楽屋で聞いたところ、大河ドラマの「軍師官兵衛」の音楽を担当していたこと、アニメ「ジョジョの不思議な冒険」や「サイコパス」も手がけたことなどもあり依頼したということを「今日初めて知った」(菅野氏)と笑った。
映画やドラマとの違いについて聞かれた菅野氏は「全部作り終えて少し違いが分かった」のだそうだが、作り上げた音楽に詳しくコメントを入れて戻してもらうという作業の中で理解していった。
音楽をすべて担当したことについて苦労したのは「メインテーマのさびのメロディ」で、「なかなか安田さんOKが出なかった(笑)」(菅野氏)。
最終的には満足行くものができたので良かったと語る。
菅野氏は全部で50曲近くの音楽を作り上げたそうだが、安田氏は「このゲームはバトルあり、ストーリーもある幅広いゲームだが、全然違うタイプの音楽を短い期間で作っていただいた。
音楽が来るのが楽しみで、まだ来ないのかとサウンドディレクターと言っていた」と語る。
中でも気をつけたのが、落命してしまうシーンの音楽。
「ゲームオーバーになったときに暗い曲にしたくないよね。
聴いてもう1度やろうと、気持ちが休まるような曲にしたいとシブサワからも言われていて、そこを菅野さんにお願いした」(安田氏)。
とてもいい曲に仕上がったので、予定にはなかったのだが、タイトル画面で使うことになったそうだ。
そして紹介されたのは、エンディングのテーマとなる「Dream Of You」。
作詞と歌はサイーダ・ギャレット氏。
作曲は「翼をください」の村井邦彦氏だ。
「15か国に対応しているので、世界共通言語の英語の楽曲をエンディングに入れようと言うことで採用した」と語る早矢仕氏。
「『仁王』は達成感のあるゲームなので、最後にこの楽曲を聴けるように頑張ってください、ということで収録した」(早矢仕氏)という。
■オープニングムービーは樋口真嗣監督が担当
そして次に行なわれたのは、鯉沼氏とシブサワ氏によるトークセッションだ。
シブサワ氏は卒業間際の気持ちを聞かれて「本当にうれしいですね。
2005年に発表して12年経ってこうした完成発表会を開催できて、心の底からうれしい感じです」と語る。
「何回か作り直して完成したので、昇天のような気持ちですね。
うれしくてうれしくてしょうがない」(シブサワ氏)。
鯉沼氏は、関わったり関わらなくなったりと、いろいろと経緯があったようだが、「数多くの方々のご協力のもとで作れたのがうれしい」(鯉沼氏)。
ヒロインのお勝を演じる武井咲さんはビデオメッセージとして登場。
「お勝はくノ一としてクールな部分を持ちながらも、家族への想いで揺れる人。
その想いを表現できるように頑張って演じた」と語る武井さん。
「英語のセリフやアクションボイスにもトライして大変でした」(武井さん)。
そして「アクションだけでなく、戦国時代末期を描いた骨太なオリジナルストーリーも楽しめるので、多くの人にプレイしてもらいたい」と語った。
そしてオープニングムービーを撮影した樋口真嗣監督からもビデオメッセージが。
樋口監督はコーエーテクモゲームスの「信長の野望」シリーズ、「三國志」シリーズのほか、最近では「進撃の巨人」のオープニングムービーを担当している。
この縁もあって、「仁王」のオープニングムービーを担当したそうだ。
「『仁王』というと昔からゲーム雑誌で、新しいプラットフォームが出るたびに『やるぞ』と言われてきた謎のプロジェクトという印象があったが、それが動き出したのかと感慨深い。
ついに浮上したのかという驚きと喜びがありました」と語る樋口監督。
オープニングムービーについては、ゲームをやるぞと言うプレーヤーがいて、その気持ちを増幅させることを考えたとか。
「ゲームやるときに飛ばしたくなくなるような感じ」を気をつけたという。
「キャラクターになりきるための入り口としてのオープニングムービーとなるよう気をつけた」(樋口監督)。
オープニングムービーの最後にちらっと織田信長が出てくることについてシブサワ氏は、「三浦按針が到着したのは1600年。
その時は関ヶ原の戦いが始まるところで、その当時は信長の時代は終わってますが、なんで登場したのかなということは1つの楽しみなので(ストーリーに)期待してほしい」と語る。
■力のこもった演技を見せた市村正親氏
ここで徳川家康役を演じた市村正親氏が加わってのトークセッションに移る。
キャストに俳優を選択したことについてシブサワ氏は、「『仁王』は史実をベースにしており、妖怪退治をするという骨太のストーリーがあるが、ドラマ性を強く打ち出していくために、本物の、実力があって重厚な役者さんに是非お願いしたいと感じていた」ところから。
実際に市村氏に決まった経緯について鯉沼氏は「『仁王』という物語の中で、徳川家康は、日本に来たウィリアムがサムライとして成長していく中で大きな影響を与える重要な人物。
それを踏まえて話し合いをしたときに、是非市村さんでお願いしたいと無理を言ってオファーした」とのこと。
市村氏は過去に「家康と按針」というドラマで徳川家康を演じたそうだが、「家康をやるときに、山岡荘八の『徳川家康』28巻を全部読んで勉強した。
読んでいくうちに人間性が見えてきて、家康というと狸オヤジとか、騙すのが得意というイメージが強かったが、僕がやった家康は青春そのもの。
自分がやりたいことを夢を見て、按針とも出会って、彼の中にある夢を叶えていくような、そういう家康だったので、今までとは違う家康を作りたいという気持ちだった。
今回こういうカタチのスケールの中で家康を演じられるのは光栄であると同時に、顔も僕の顔になるので。
普通で言ったら家康顔ではないんですよね。
魂を家康にしようと思って取り組んだ」と市村氏。
市村さんが演じたときの感想を見てシブサワ氏は「これだ、という感じ」と語る。
シブサワ氏は「のぼうの城」の制作委員会に入っていて、そこでは市村氏は豊臣秀吉を演じている。
「劇団四季の『オペラ座の怪人』を見て、昔からファンだった。
出ていただいてうれしくてうれしくて」(シブサワ氏)。
ここで家康が登場する際のムービーを披露。
市村さんも見たのは初めてだったそうで「いいねえ。
入り込んじゃった自分で(笑)」と語る。
見ている全員が映像に夢中になったところだ。
フェイシャルキャプチャーをしたときは大変だったそうで、「初めての経験でしたけれども、あれがあったからこういう表情ができるんですよね」と市村氏。
「百面相のようなこともやらされたが、顔が動くんですよ。
手こずる予定が早く終わっちゃった」(市村氏)。
「『仁王』はフォトリアルな表現を目指していたので、フェイシャルキャプチャーを実際にやって表情を取って、キャラクターにどのような命を吹き込むかを最大限注意したが、満足しているのは、ゲームはCGだが、あれだけ命を感じられるような表情になっているのは市村さんのおかげ」と鯉沼氏。
最後に市村氏は「相当自信を持ってオススメできるゲームだと思っています。
僕自身もいろいろな人に『仁王』を宣伝していきたい。
恥ずかしかったら言えないですが、本当に自信を持って進められる『仁王』になったと思います」とコメント。
「完成発表会ということで、『仁王』がこういうゲームだということは説明できたと思います。
実際にやっていただくと、まだまだいろいろなところが隠されていたり、いろんなシーンがふんだんに入っています。
来週全世界同時発売でやってきたので、よろしくお願いします」と鯉沼氏。
シブサワ氏は「2005年から足かけ12年。
本当に私はファンの方々、関係者の方々、プロジェクトチームのメンバーに感謝したい。
特にゲームファンからの多くのメッセージやご支援、そういった声がなければ途中でくじけたかもしれない。
それをファンの皆さんが12年支えてくださった。
その気持ちが今回の完成発表会につながったと心から感謝します。
来週の2月9日に発売されるので、戦国死にゲーを楽しんでほしい」と最後に語り、発表会は終了した。
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