ポケモンGO 日本上陸秒読みへ 夏休み控え学校もピリピリ 海外ではトラブル続出
任天堂などが開発したスマートフォン向けゲーム「ポケモンGO(ゴー)」。
スマホの画面を見ながら街を歩き回り、架空の生物「ポケモン」を集める内容で、7月6日に先行配信された米国では夢中になったプレーヤーによる事故やマナー違反などトラブルが続発し、社会問題に発展している。
夏休みを迎える日本でも、まもなく配信される見通しで、子供たちの安全確保のため、関係者の間で緊張が高まっている。
(玉崎栄次、中井なつみ)
■ポケモンGOと夏休み、同時に到来
「歩きながらスマホを操作するのはとても危ないことです。
絶対にやめましょうね」
東京都練馬区のある小学校。
20日に行われた終業式で、女性校長は全校児童を前にこう訴えた。
「大きな事故につながりかねないということで、ポケモンGOの話題には注視している」
米ペンシルベニア州では、スマホでゲームをしながら徒歩で帰宅中の少女(15)が車にはねられている。
米CBSテレビによると、少女は命に別条はないという。
少女の母親は「ゲームが娘を道路へと導いた」と発言している。
ポケモンGOは、衛星利用測位システム(GPS)を活用しており、スマホを手に屋外を歩くと、画面の地図上にモンスターの位置が示される。
その地点に近づくと、プレーヤーがいる実際の風景の中にモンスターが出現する。
画面上のポケモンを捕獲する「モンスターボール」に指を滑らせて投げる操作をすると、モンスターを捕まえることができる。
こうしたゲームの上陸を控え、国内の学校現場にも困惑が広がっている。
別の小学校の副校長も「今の時代、特に高学年はスマホの所持率が高く、使うなというのは無理な話」と打ち明ける。
この小学校では、日頃から適切な使用法を指導はしているというが、副校長は「子供はゲームに熱中してしまいやすい。
学校がゲームを禁止することは難しいため、対応を考えている」と頭を抱える。
■ホーム転落に注意JR「影響容易に想像できる」
「歩きスマホ」や「ながらスマホ」が前提のポケモンGO。
自動車運転はもちろん、自転車に乗りながらスマートフォンを操作し、事故を起こした場合は安全運転義務違反で摘発対象となる。
歩行者の場合、「歩きスマホ」だけで取り締まりの対象になることはないが、警察関係者は、「スマホ操作は周囲への注意が効かなくなるもの。
特に子供は視野が狭く、熱中してしまえば危険」と危機感を示す。
鉄道各社は「歩きスマホ」に対する注意喚起を行っているが、「関係業界や団体と対策を協議することになるかもしれない。
先を見通した施策が必要になっている」とする。
JR東日本広報部も「(ゲームで)影響が出ることは容易に想像できる。
何も対策を講じないということはありえない」として、構内アナウンスの強化などを検討中という。
「珍しい場所でポケモンを見つけ、そのゲーム画面を自慢したいプレーヤーもいるかもしれない。
文化財や立ち入り禁止場所に侵入し、マナーの悪さが指摘されるようになれば残念だ」と別の関係者。
追悼施設などで場所を考慮せず、ゲームに熱中するマナー違反も問題化する恐れがある。
外国人観光客も多い増上寺(東京都港区)の担当者は「参拝の迷惑となるようであればよろしくない。
配信後に何らかの問題が生じれば対策を講じていく」と心配する。
靖国神社(千代田区)も「今後の動きに応じて対応したい」と警戒している。
■米国では運転中にゲーム街路樹に衝突も
米国と豪州、ニュージーランドで先行配信されたのは今月6日。
瞬く間にブームが広がる中、ゲームが原因となるトラブルが多発している。
ニューヨーク州では、ゲームをしながら運転していた男性(28)の乗用車が街路樹に衝突。
地元警察はホームページ(HP)に、樹木にぶつかり大破した乗用車の写真を掲載。
「(ポケモンGOを)楽しむのは良いけれど、賢明さも忘れずに」と注意喚起した。
強盗事件も多発している。
ロイター通信などによると、ミズーリ州では、10人以上のプレーヤーが強盗に遭っていると報じている。
GPS機能が悪用され、ゲームに誘導されて特定の場所を訪れるプレーヤーを待ち伏せて犯行に及ぶケースが目立ち、地元警察が警戒を呼びかけているという。
国内でもこうした事故や事件が起こる可能性は否定できない。
■原発に侵入追悼施設でもお構いなし
米原子力委員会(NRC)は19日、ポケモンGOで遊んでいた子供3人がオハイオ州の原子力発電所敷地内に入り込み、警備員に追い出されたことを明らかにしている。
こうした危機管理の対象となる施設への不適切な侵入が問題化している。
ナチス・ドイツによるユダヤ人大量虐殺の資料を展示する米ワシントンのホロコースト博物館では、ポケモンの捕獲に熱中する入館者が続出。
ロイター通信は、博物館の広報責任者の声明として、ナチズムの犠牲者を慰霊する場でゲームをするのは「極めて不適切」「ゲームから博物館を除外するよう要請する意向だ」などの発言を伝えている。
ニュージーランドでは、ポケモンを集めるために男性(24)が仕事を辞めたと報じられている。
英紙ガーディアン電子版によると、男性は「冒険がしたかった」などと語っているという。
■専門家「トラブルは必至」夏休みで影響拡大も
「プレーヤーが街を移動しながら行うゲームなので、公共施設や私有地での利用をめぐるトラブルは必至だ」
こう指摘するのは、スマホを使ったゲームに詳しいITジャーナリストの三上洋さん。
「室内に引きこもって遊ぶゲームではないので、外出のきっかけになる点は長所と捉えるべき。
ただ、日本では配信時期が小中高校の夏休みと重なる可能性が高いため、子供が私有地や公共施設でゲームにのめり込んでトラブルとなる心配もある。
企業側の対応に注目したい」と話す。
まだ配信が始まっていないとして、開発会社側も国内でのトラブル対応の方法を明言していない。
任天堂などとともに開発した株式会社ポケモンの広報担当者は「(海外でのトラブルは)報道を通じて把握している。
具体的な対応は配信開始とともに検討したい」としている。
同社の米子会社は「ゲームで遊ぶ際には周囲に注意を払い、知らない場所には友人と行くよう」などと注意喚起を行っているという。