『ガンヴォルト 爪』の爽快感は“気が付いたらクリアしていた”と感じるほど抜群!その魅力を総まとめ
話題のVRゲームや映画のような写実的なゲームを多く遊んでいると、ふとした時にレトロゲームを遊びたくなる。
最近のゲームはエンターテイメント性が高く、どの作品も魅力的なのだが、こと遊びという観点から見れば、レトロゲームはシンプルかつ洗礼されており、面白さは今のゲームと比べても遜色ない。
特に横スクロール2Dアクションゲームの面白さは不変的であり、ここ最近では『シャンティ -海賊の呪い-』『1001 Spikes』『ショベルナイト』といった新作も出ている。
そして忘れてはいけないのが『蒼き雷霆 ガンヴォルト』(以下、ガンヴォルト)だ。
本作は長年2D横スクロールアクションゲームを作り続けてきたインティ・クリエイツと稲船敬二氏の新作であり、古き良きアクション性はそのままに、超能力少年と巨大組織との戦いがフルボイスのライトノベルテストで展開された。
もちろん同社が過去に手がけた人気作品『ロックマンゼロ』『ロックマンゼクス』シリーズのDNAも受け継がれており、現代にマッチしたハイスピード&ハイテンションな2Dアクションゲームとして17万本以上のセールスを記録した。
そんな『ガンヴォルト』の続編『蒼き雷霆 ガンヴォルト 爪』が8月25日に3DS向けに発売される。
本作では従来の主人公である「ガンヴォルト」に加えて「アキュラ」が操作可能になり、前作のその後が描かれる。
販売形式は前作同様にダウンロード販売と、シリーズ2作品をセットにしたパッケージ版「ストライカーパック」が用意されている。
本稿では、そんな『蒼き雷霆 ガンヴォルト 爪』の基本情報とプレイレポートをお届けする。
◆ストーリー
■ガンヴォルト
人類の中に“第七波動(セブンス)”と呼ばれる特殊能力を持つ者が現れ始めた近未来。
当初は大きな混乱をもたらすと思われていた能力者の出現だったが、巨大複合企業“皇神(スメラギ)グループ”の統制により、国内では安定した秩序が保たれていた。
しかし、皇神のもたらした平和とは、能力者たちの犠牲によって成り立つものだった。
“能力者の保護”を名目とした強制収容――、“研究”の過程で行われる非人道的な人体実験――それらの行いは全て、皇神グループによって巧妙に隠ぺいされていたが、その中でいち早く真実に気付き、皇神に抵抗を始めた組織があった。
私設武装組織“フェザー”。
それは、海外の能力者による人権団体が母体となり結成された、反皇神を掲げるレジスタンスグループである。
主人公“ガンヴォルト”もまた、フェザーの能力者だった。
彼のもとに皇神のバーチャルアイドル“電子の謡精(サイバーディーヴァ) モルフォ”の抹殺命令が下ったことから、物語は動き始める……。
■皇神グループ
電力会社を中心とした巨大複合企業体。
国内のエネルギー供給を一手に担う他、通信報道機関から宇宙開発、軍事産業までも手がける超巨大企業であり、政界に対しても多大なる影響力を有していることから、この国の実質的な支配者とさえ言われている。
エネルギー研究の過程でいち早く第七波動に目をつけた企業であり、第七波動に関する技術は世界の中で最も進んでいる。
現在、第七波動を制御する技術は「皇神」グループのみが有している。
■フェザー
過激化する「皇神」グループの施策に対抗するため、海外のとある人権団体のメンバーが中核となり組織されたレジスタンスグループ。
能力者の自由を掲げ、「皇神」に対しゲリラ戦を仕掛け、囚われた第七波動能力者の救出などを繰り返している。
■宝剣
第七波動(セブンス)を制御するための触媒。
通常、能力者は第七波動の源である“能力因子”を体内に宿している。
皇神(スメラギ)によって管理されている能力者は、因子の大半を体外へ摘出することで、日常生活において過度な能力が発現しないようセーフティがかけられているのだが、その際摘出された能力因子を隔離管理するための“器”が宝剣である。
皇神(スメラギ)の能力者は有事となると、管理機関の承認を経た上で宝剣内に移植された能力因子を解放。
宝剣ごと能力因子と融合することで、変身(アームドフェノメノン)を行う。
宝剣の存在により皇神の能力者はその安全性と社会的地位を保証されているのだが、まだまだ第七波動(セブンス)には未解明な点が多く、宝剣も完全な制御機構とは言えないものである。
■ガンヴォルト 爪
第七波動(セブンス)という特殊な力を持った存在、第七波動(セブンス)能力者が生まれるようになった近未来。
皇神(スメラギ)グループが企む能力者完全支配計画「歌姫(ディーヴァ)プロジェクト」を阻止したガンヴォルトは、一人の少女のもとで深く傷ついた心身を癒していた。
……しかし、時代(とき)の流れは傷ついた戦士にいつまでも休息を許しはしない。
多国籍能力者連合「エデン」。
海を越えて現れた新たな敵を前に、ガンヴォルトとアキュラ――二人の戦士が立ち上がった。
■エデン
莫大な力を持つものの、数では能力を持たない人々に劣る第七波動(セブンス)能力者たちが、国家の枠を越えて集結した多国籍能力者連合。
構成員の多くはかつて無能力者たちによって虐げられてきた者たちである。
「能力者こそが新たな時代を築く新人類であり、第七波動(セブンス)を持たない旧人類は滅ぶべき存在である」と標榜し、能力者だけの理想国家の設立を目指している。
■G7
宝書を携えたエデンの7人の能力者グリモワルドセブン:通称G7(ジ―セブン)。
エデンの中でも特に優れた セブンス 第七波動を持つ七人の能力者たち。
エデンに明確な上下関係は存在しないが、現場での指揮は彼らに預けられることが多く、構成員からは慕われている。
■宝書(フェアリーテイル)
G7が変身に用いる本の形をしたマテリアル。
エデンが皇神から極秘裏に奪取した宝剣のデータを元に、電子の謡精(サイバーディーヴァ)の力を取りこむことで完成した。
能力因子制御装置である宝剣とは違い、純粋に能力者の強化だけを目的として造られているため、G7は変身せずとも能力の使用が可能であり、変身後の力は皇神の能力者を上回る。
◆登場キャラクター(ガンヴォルト側)
■ガンヴォルト(CV:石川界人)
電子を操る第七波動(セブンス)「蒼き雷霆(アームドブルー)」の能力者。
通称GV。
「ダート」と呼ばれる特殊な針を敵に撃ち込み、そこから強力な雷撃を流し込む戦法を得意としている。
シアンという能力者の魂を内に宿しており、彼女とシンクロすることによって自身の能力を極限にまで高めることが可能。
かつての戦いで多くのものを失い、深く傷ついた彼だったが、オウカという一人の少女との出会いが彼を立ち直らせるに至った。
■「シアン」(CV:桜川めぐ)
GVの内に宿る魂だけの存在。
元は第七波動(セブンス)能力者の人間だったが、肉体という檻から解き放たれ魂だけの存在となった彼女は、以前よりも奔放な性格になっている。
第七波動(セブンス)は“電子の謡精(サイバーディーヴァ)”。
歌うことでGVとシンクロし、彼の能力を高めることができる。
以前は大人の姿をしていたが、とある事件をきっかけに力の大半を失ってしまい、現在は子供のような見た目になっている。
■オウカ(CV:近藤玲奈)
第七波動(セブンス)を持たない一般人の少女。
以前に不良能力者に絡まれていたところをガンヴォルトに助けてもらって以来、ガンヴォルトたちを自分の家に匿うようになる。
実はどこかの財閥に連なる血筋らしいが、世間からは隠されているようで、ガンヴォルトたちが来るまでは広い屋敷でひとり暮らしていた。
天然で抜けたところがあるが、彼女の優しく穏やかな人柄はガンヴォルトにとって大きな心の支えとなっている。
■シャオウー(CV:小見川千明)
GVをサポートするオペレーターの少年。
通称「シャオ」。
故郷の国で“フェザー”一員として活動していたが、彼の国のフェザーは突如現れた“エデン”に乗っ取られてしまったため、エデンの侵攻を伝えるために海を越えてGVの元へやってきた。
真面目で素直。
穏和で大人びているが、故郷を占拠したエデンのことは憎く思っており、エデンに対しては感情的な面が見え隠れする。
◆ガンヴォルトの基本アクション
■銃(ダートリーダー)
威力は低いものの、敵をロックオンする能力を持ち、ショットはボタンを押し続ける事により連射可能だ。
■雷撃鱗(ライゲキリン)
ガンヴォルトの第七波動能力。
雷撃のバリアを周囲に張り巡らせ、範囲内の敵にダメージを与えたり、ミサイルなどの実弾系攻撃をカードする。
■ロックオン雷撃攻撃
ロックオンしてから雷撃鱗を放つことで、高威力の雷撃が敵に誘導して必中に。
雷撃の本数に応じて与える威力も上昇し、ロックオンの段階に応じて敵を狙う雷撃の本数も増える。
■「電磁結界(カゲロウ)
ガンヴォルトは敵の攻撃を受けると、「電磁結界(カゲロウ)」が発動し、残像と共に敵の攻撃をオートで回避する。
電磁結界はEPエネルギー(特殊能力を使用するためのエネルギー)を消費するが、発動し続ける限りGVはダメージを受けない。
消費して減少したEPエネルギーは、十字ボタンの下を素早く2回押す事で回復するぞ。
◆登場キャラクター(アキュラ側)
■アキュラ(CV:増尾興佑)
第七波動(セブンス)の危険性を説きながらも命を落とした父の遺志と研究を継ぎ、能力者根絶のために戦い続ける科学者の少年。
第七波動(セブンス)を持たない普通の人間ではあるが、独自の技術力と天才的な戦闘センスにより並の能力者を上回る戦闘力を有している。
前作から装備を一新し、機動力特化型ジャケット「ヴァイスティーガー」を纏うことで空戦能力が飛躍的に向上。
また、機動力を維持したまま火力を高めるために多数のビット兵器と、それらをコントロールするバトルポット「RoRo(ロロ)」を従えている。
■RoRo(CV:遠藤ゆりか)
アキュラが多数のビット兵器を制御するため開発した「バトルポット」と呼ばれるAIユニット。
アキュラを守るために創られたせいか、どこか自分をアキュラの保護者だと思っている節があり、少し生意気なところも。
AI育成の一環としてアキュラの妹の会話相手になっていた時期があり、「アキュラくん」という呼び方は彼女からうつったもの。
作中のある事件が切っ掛けで、シアンのような“電子の謡精”へと変化する機能を得ることになる。
■ミチル
個人療養所で暮らすアキュラの双子の妹。
第七波動を持たないごく普通の少女。
生まれつき体が弱く、幼いころの手術が原因で声を失っており、会話はタブレットを使って行う。
長い療養生活のせいか発育が良くなく、アキュラとは歳が離れている印象を受けるが、同い年である。
アキュラは自分の戦いに関して、彼女には何も話していない。
■ノワ(CV:恒松あゆみ)
アキュラたち兄妹に仕えるクールなメイド。
ミッション時にはアキュラのオペレーターを務め、的確な誘導でミッションをサポート。
家事から戦闘のサポートまで、ありとあらゆることを難なくこなす。
アキュラたち兄妹には侍女として一歩下がった態度で、そして親代わりとして時に厳しく接する。
優秀な助手として便利な支援物資を送ったり、莫大な個人資産からアキュラの研究を援助するなど、アキュラの復讐にはなぜか協力的。
彼女の個人資産がどこから出ているかは謎。
◆アキュラの基本アクション
■銃(ボーダーII)
高威力・超高速の弾が瞬時に目標物へ着弾して撃破し、ショットボタンを押し続けることで連射が可能だ。
■ロックオン&誘導フォトンレーザー
ダッシュ体当たりで対象物をロックオンできる。
ロックオン状態で射撃を行うと、曲線を描いて敵に必中するフォトンレーザーが使えるようになる。
■ブリッツダッシュ
ブリッツゲージを消費して空中を高速移動することができる。
また十字ボタンの上下で射出角を変えることもでき、壁に触れると反射。
ブリッツダッシュを使って、敵をロックオンすることも可能だ。
■カゲロウ
ブリッツゲージを消費して、カゲロウを使用可能。
ガンヴォルトと同じく、ほとんどの攻撃を自動で回避することができる。
■フラッシュフィールド
RoRoがエネルギー満タン状態のときにミサイル系の攻撃を自動で防ぐバリアー「フラッシュフィールド」を展開する。
■EXウェポンミラーリング
RoRoは撃破したボスの第七波動(セブンス)攻撃をEX(エクス)ウェポンとして複製(ミラーリング)することができ、ボスを倒して手に入れた攻撃は自由に切り替えて使用することが可能。
この攻撃はバトルポッドのエネルギーを使用するため、EXウェポン使用後はフラッシュフィールドが一定時間使えなくなる。
◆クードス
本作ではスコアとは別にクードスというシステムがある。
これはミッション中に貯まっていくコンボポイントで、リトライマーカー(チェックポイント)に接触するかミッションをクリア、またはスペシャルスキルを使用するとスコアに清算。
ところが、敵や攻撃などに接触するとリセットされて0になってしまうのだ。
クードスの数値が高いほど、獲得クードスの倍率が高くなるため、いかにダメージを受けずにどのタイミングでスコアに清算するかの見極めが重要となる。
またクードスが1,000ポイント以上を維持している間は、ミッションのBGMが電子の謡精(サイバーディーヴァ)の歌に変化する。
■ボーナス発生条件の一例
・複数の敵を同時に撃破する。
(撃破する敵が多いほどボーナスUP)
・敵を3段階にロックしてから撃破する。
・敵を3段階にロックした上で、ジャンプなどで空中にいる状態で撃破する。
・スペシャルスキルで敵を撃破する。
このクードスの特性を理解してハイスコアをたたき出すと、ミッション終了時のリザルトでランクに応じた数の素材アイテムが入手できる。
素材アイテムは装備品の開発などに使用することができ、プレイの幅を広げてくれるだろう。
なお、ハイスコアを目指すにはクリアタイムも重要になる。
クリアタイムが早いほどスコアにボーナス補正がつき、最速タイムでスコアが最大1.5倍になるのだ。
◆プレイレポート
『蒼き雷霆 ガンヴォルト 爪』のユニークなポイントの一つは、ストーリーを見るアクションゲームにしたことだ。
もちろん過去の2D横スクロールアクションゲームでもストーリーに注力した作品はあったが、本作は“とにかくまずはストーリーを楽しんでもらおう”というコンセプトを下に設計。
前作よりも更にテンポが良くなり、ゲームボリュームが約2倍に膨れ上がっているものの、ストーリークリアまでの体感時間は前作よりも短い。
実際には数時間プレイしているのだが、気がつけばクリアしていた――そんな感覚なのだ。
このテンポの秘密はゲームバランスにある。
『スーパーマリオ』でも『ロックマン』でも華麗にクリアできた時はかなりの爽快感や達成感があるが、本作はそれが常時続くイメージだ。
インティ・クリエイツの會津卓也社長は「脳が楽しいと感じるのは、自分が入力してオーバーリアクションで返ってくる──少ない操作でたくさんの情報が得られる。
それを端的に表すことができるのがこの(横スクロール2Dアクションゲームという)ジャンルです。
」と過去のインタビューで語っているが、まさに本作は、少ない操作で多彩な攻略アプローチが用意されており、すぐに本作のコンセプトであるハイスピードを味わうことができる。
ただし、難易度は前作よりも一回り下がっており、歯ごたえのある横スクロール2Dアクションゲームを期待してプレイすると、物足りなく感じてしまうかもしれない。
実際、前作は「無理だ無理だ」と言いながら何度も挑戦したため、かなりの達成感があった。
だが本作はそれほど達成感がない。
代わりにあったのが強い爽快感だった。
ゲームオーバーにはならないが、ハイスコアを目指すと打ちのめされる。
悪意ないステージなのに、死にはしないボスなのに、なぜかハイスコアを目指すのは難しい。
つまり“Cランクは誰でも取れるが、Sランクは難しい”という難易度なのだ。
その上でハイスコアを目指し、それを達成するとどうなるのか。
爽快感が爆発するのだ。
そしてこの爽快感に一役買っているのが、本作の魅力の一つでもある挿入歌だ。
本作は上手くプレイすることで挿入歌が流れるユニークな作品だが、とにかく挿入歌を聴くために頑張ってしまう。
頑張れば爽快感が増し、挿入歌が流れるとハイになってさらに爽快感が増す。
この連鎖がよくできており、ずっとイヤホン・ヘッドホンを着用して没入したくなるのだ。
なお、本作ではプレイ中にキャラクターの発言がテキストとして表示され、それが前作ではプレイの妨げになっていたが、今回はUIのデザインと位置が改善。
さらに会話UIの顔グラフィックを非表示にしたり、UIの濃さを変更することができるようなった。
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横スクロール2Dアクションゲームの面白さを追及し、まさに“懐かしくも新しい”という言葉が似合う『ガンヴォルト』シリーズ。
2016年冬にはアニメの配信も予定されているため、2Dアクションゲーム好きや世界観に魅了された方はこの機会にプレイしてみてはいかがだろうか。
まだまだ語りたいことはあるが、別記事で開発者インタビュー(後日公開予定)も用意しているため、今回はここら辺で締めておこう。
だが最後にもう一つ……『蒼き雷霆 ガンヴォルト 爪』のラスボス戦(厳密には違うのだが)には面白い試みが施されているので、ぜひ最後までプレイしてほしい。
あんなことをしたのは『たけしの挑戦状』以来だ。