A 5th Of BitSummit開催に向けて……日本インディペンデント・ゲーム協会(JIGA)のキーパーソンに聞く
文・取材:編集部 古屋陽一、撮影:カメラマン 鶴身健
●日本インディペンデント・ゲーム協会の進む道、そしてBitSummitのさらなる展開は?
日本のインディーゲームシーンを語る上で欠かせないイベントBitSummit。
その5周年を飾るA 5th Of BitSummit(フィフス オブ ビットサミット)が、2017年5月20日(土)、21日(日)の2日間、京都市勧業館・みやこめっせで開催される。
ファミ通.comでは、A 5th Of BitSummit開催発表のアナウンスに合わせて、主催団体である日本インディペンデント・ゲーム協会(JIGA)の主要メンバーにインタビューを敢行。
ここでは、その模様をお届けする。
※“A 5th Of BitSummit”が2017年5月20、21日に開催決定日本最大級のインディーゲームの祭典BitSummitが5周年
※なぜ一般社団法人 日本インディペンデント・ゲーム協会は設立されたのか?キーパーソンたちを直撃
念のためにご説明しておくと、JIGAは日本のインディーシーンのさらなる発展を目的に、関西圏の開発会社であるキュー・ゲームス、ピグミースタジオ、ヴィテイ バックルーム、17-BIT、オーツーの5社により設立された一般社団法人。
BitSummitの運営は、同団体の柱の事業のひとつとなる。
そんなJIGAも、A 5th Of BitSummitの開催と歩調を合わせて大きな動きがあった。
Indie MEGABOOTHとデジタルデベロップメントマネジメントの2団体が、JIGAに参加するというのだ。
まずは、両団体がJIGAに正式加入した経緯から、インタビューをスタートさせよう。
なお、海外にお住まいのBitSummit発起人であるジェームズ・ミルキー氏と、Indie MEGABOOTH代表のケリー・ウォーリック氏は、テレビ電話での参加となっている。
JIGAには欠かせない17-BIT 代表取締役 ジェイク・カスダル氏は、所要のため欠席となった。
左前列から
村上雅彦氏(文中は村上)
ヴィテイ バックルーム
代表取締役
堀川和良氏(文中は堀川)
オーツー
ビジネス推進部 部長開発1部アシスタントマネージャー
ベン・ジャッド氏(文中はベン)
デジタルデベロップメントマネジメント
エクスクルーシブヴァイスプレジデント、アジア
右前列から
小清水 史氏(文中は小清水)
ピグミースタジオ
代表取締役
富永彰一氏(文中は富永)
キュー・ゲームス
クリエイティブプロデューサー
ディラン・カスバート氏
キュー・ゲームス
代表取締役
※テレビ電話での参加
ジェームズ・ミルキー氏(文中はジェームズ)
BitSummit発起人
ケリー・ウォーリック氏(文中はケリー)
Indie MEGABOOTH
代表
■新たなパートナーを加えて、JIGAはさらに拡大する
――この度、Indie MEGABOOTHとデジタルデベロップメントマネジメントの2社がJIGAに参加されましたが、まずはそのへんの経緯からお聞かせください。
ケリーIndie MEGABOOTHは、海外インディーゲームの開発者団体として、最初期からBitSummitと提携させていただいてきました。
イベントの運営をご協力させていただく過程で、「中に入ったほうがより皆さんのお役に立てるのでは?」と思ったんですね。
そこで、正式にJIGAに参加させていただくことにしました。
今後の目標としては、いままで展開してきたことをしっかりと形にしていきたいと思っています。
そんなにおもしろくない目標かもしれませんが(笑)、地に足をつけた感じで皆さんとご協力していきたいです。
ベン私自身は、BitSummit自体には、1回目からお手伝いをしています。
私が所属しているデジタルデベロップメントマネジメントは、おもにエージェント業務を執り行っている会社なのですが、ゲスト出演をする開発者のアテンドなどをさせていただいたりしました。
小清水ベンさんには、これまでもBitSummitを支えてもらっていましたが、「しっかりとしたメンバーとして入っていただきたい」ということで、JIGAサイドからお願いしたんです。
ベンいままで海外と日本の橋渡し的な役割を担ってきたのですが、今後さらに積極的にサポートできたらいいなと思っています。
富永設立5社は基本、開発会社なのですが、同じような傾向の団体ばかりが集まると、組織としてどうしても偏ってしまう。
それぞれ違う強みのある人たちが集まってきてほしい、という思いがあって、Indie MEGABOOTHさんとデジタルデベロップメントマネジメントさんに加わっていただくことにしました。
ジェームズBitSummitが開催されてから2017年で5周年となるわけですが、ここまで続けられたことに驚いています。
継続するにあたっては、相当な苦労がありましたが、日本のゲームや文化を大事に思う皆さんに支えられてここまでやってこられました。
さらに新しい仲間が加わるのはうれしいことですね。
堀川BitSummitは3回目からJIGAが運営母体となったのですが、手作り感というか、勢いで作ってきたというところがあります。
今回、ケリーさんやベンさんにJIGAの新しい仲間として入っていただいて、しっかりとしたイベントを形作るための仕切り直しというか、スタートだと思っています。
■A 5th Of BitSummitでは、新しいチャレンジに取り組む
――5周年を記念してのBitSummitのことを聞かせてください。
富永はい。
JIGAでは、2017年5月20日、21日の両日に、A 5th Of BitSummitを開催することを決定しました。
――5月に開催するのですか?
村上開催時期はかなり揉めました(笑)。
富永いちばん大きな争点は、“いかに世界にアピールできるか?”でした。
そのためには海外メディアにどれだけ注目していただけるかというのがポイントとしてあって、いつ開催がいいのか調べてもらったんです。
その結果、5月という結論に落ち着きまして。
小清水日本サイドと海外サイドで大激論でしたね。
時間もかかりました。
ケリーさんやミルキーさんを含め、海外の担当者が、「5月開催だと必ず海外メディアの方に多く来てもらえるんだ!」と、熱意をもって主張されたんですね。
ベンGDCやPAX Eastが3月にあって、E3が6月。
さらに8月にはgamescomがあって……と、そのへんの兼ね合いを考えると、やっぱり5月がベストなんです。
海外に日本のインディーゲームをアピールするというのは、やはり大きなハードルで、“来ていただく”ということを考えると5月かなと。
村上7月開催が定着してきたので、「そんなにコロコロ変えても」との意見もあったのですが、海外勢の熱量に圧倒されました。
小清水おもしろいゲームをより多くの人に伝えようとしたら、もっと海外にアプローチしないといけない。
“5月だともっと(海外からのメディアを)集められる”というすごい熱があったんですよね。
会議で何度か議題になっていて、忘れていたら7月で通そうと思ったら、最後まで5月にこだわって……。
最終的には熱量の高いほうが勝つという。
富永何事も実験ということもありますからね。
BitSummitでは、つねに新しいことにトライしていますし。
村上5月のほうがホテルは取りやすいですね(笑)。
富永会場は過去3回と同様に京都みやこめっせです。
ただし、2016年のときは3階だったのですが、今回は1階です。
2回目のときと同じですね。
村上スペース的には第3回と第4回のときの1.5倍くらいです。
小清水JIGAの組織も2年目に入って、少しずつ成熟してきているということもあるし、イベントとしても5回目ということで、前回から1.5倍にしてもいいのではないかと。
富永あと、VRコンテンツへの対応ということもあります。
2016年はVRコンテンツが多かったのですが、VRの試遊では広いプレイエリアが必要になる。
2016年はギリギリだったので、もうちょっとスペースがないとあぶないかな……と。
■プラン中の会場レイアウトのキーワードは“御柱”!?
小清水で、サプライズがありまして……。
ちょっと作ってきたんですよ。
――なんです?
小清水どうなるか、わからないですよ。
まだメンバーにも見せていないので。
(おもむろにiPadに会場のレイアウト案を表示させる)
――前回も同じようなことがありましたね(笑)。
村上初めて見ましたよ(笑)。
小清水本当にサプライズですから!
ベンJIGAは恐ろしい団体ですね(笑)。
小清水今回は柱が多いということがあって、柱をうまく活かしたレイアウトにしようかと思っています。
仮に“御柱”としています。
富永生贄?
小清水詳細は追って……というのはあるのですが、BitSummitはスポンサーさんの力によって支えられているのではないかということで、それを会場で表現したい。
大きな柱でみんなのイベントを支えているということを表現したいということで、いまは“御柱”としています。
――よくわかりません!(笑)
ベンとりあえず、スポンサーさんの力によって、このイベントは支えられているということですね。
小清水そうです。
それを象徴したらこうなったんです。
いまは“御柱”とだけお伝えします。
実現したら、「こういうことか!」と納得していただけるかと。
まあ、僕の意見が通ればですが……。
――さっきの話しの流れで言うと、熱量の高いほうが勝つそうですからね(笑)。
富永スポンサーさんとの不思議な関係ということで言うと、ふつうスポンサーだったら自分たちをアピールする場がほしいと思うじゃないですか。
それがBitSummitが特殊なのか、時代が変わってきているのかわからないのですが、スポンサーさんからは「自分たちのブースでスペースを取ってしまうのであれば、そのぶんはインディーゲームの出展者に与えてください」と、よく言われるんですよね。
小清水「僕らの商品をアピールするために来ているわけではない」と。
――なんと、少し下世話な表現かもしれませんが、お金は出すけど口は出さないみたいな?
富永そうなんですよ。
そこが、BitSummitの不思議な関係性というか……。
――ステージは、3回目と同様に、真ん中に配置されていますね。
小清水立体感を出すために、真ん中に据えてみました。
ステージに関しては、「個々のブースが主人公なので、ステージは必要ないのでは?」という意見もあるのですが、僕はそうは思いません。
ステージイベントは、いわば“先輩の背中を借りる場所”なんですよ。
ステージに登壇するのは、“この人が喋るのだったら、BitSummitに取材に行きたい”と海外メディアの方が思えるような、いわば“成功した方々”です。
彼らのことを取材するために来たけれど、結果としておもしろいゲームを見つけたといったことを想定してのステージなんです。
村上ステージのコードネームはいつも“FUJIYAMA”ですね。
観光地(笑)。
■A 5th Of BitSummitで目指すもの
――BitSummit 4thでの成果がありつつも、5ではどのようにつなげていきたいですか?
富永おかげさまですごく認知度が上がって、いろいろなメジャーな人が出展してくれるようになりました。
ただ、会場のキャパシティーもあるので、のべつ幕なしで出てもらうわけにはいかない。
なんとかバランスを考えながら決めていかないと……とは考えています。
インディーには実験的な精神というか、チャレンジ精神が必要だと思っています。
メジャーなクリエイターがいながらも、一方ではマイナーだけど、おもしろいことをしているクリエイターにもいてほしい。
そういう方たちにどれだけ出ていただけるようにしていけるのか……というのが、つぎの課題かなと。
――バランスですかね。
富永一方で、この5年でゲーム業界のみならず、社会全体も変わってきましたよね。
5年前はVRは商品として出ていなかったわけですし。
今後の5年を考えたら、さらに変わるでしょうね。
これから僕らゲームクリエイターが新しい技術やライフスタイルにどう関わっていけるのか、というところが、これからの僕ら全体の課題になってくると思います。
そこをBitSummitでメッセージとして出していきたいです。
村上“つぎの課題”ということで話しをつなげさせていただくと、これは僕は皆さんとは違う考えかたかもしれないですが、“海外”ということでいうと、僕の目線はアジアのインディーなんです。
ヨーロッパや北米ではなくて……。
アジアのインディーゲームクリエイターに話を聞くと、「BitSummitを見て(自国で)インディーゲームのイベントを始めた」という声を、とてもよく聞くんですね。
そんな彼らと何かいっしょにできれば……というのが、僕の課題としてあります。
――アジアのインディーゲームのイベントと連携するとかですか?
村上そこまで何ができるかわからないですけれども。
たとえば、お互いの国のインディーを紹介したりとか、向こうでイベントをやるときにノウハウを共有したりとか……。
堀川A 5th Of BitSummitが5月開催になったことに象徴されるように、BitSummitの原点は“日本と海外をつなぐ”ということにあるのは間違いないと思っています。
とはいえ、必ずしも全員がハッピーというわけではなかったかもしれませんが、過去4回で一定の成果は挙げている。
5回目も、海外メディアやIndie MEGABOOTHを含めて、海外と国内のインディーシーンをつなぐ、熱い場にしていければ……と思っています。
個人的には、インディーゲームというのは作ったらいいという話ではなくて、コミュニティーを育てるのも大事かなと考えています。
そういった意味では、“リアルなコミュニティーの場を作る”というのが、BitSummitの役割ではないかと。
――たしかに、コミュニティーの場としてBitSummitを期待している方は多そうです。
堀川作りかけのゲームを見せて、ああでもない、こうでもないとディスカッションするのもいいですし、「自分はこんなものを作りたい!」といったような、クリエイターどうしのつながりの部分も大切ですよね。
パブリッシャーと開発スタジオとの交流も重要になります。
つきつめて言えば、“インディーゲームのクリエイターの夢を応援するコミュニティー”が、BitSummitなのかもしれません。
ベンこれまでBitSummitよって注目を集めたことでヒットしたタイトルもたくさんあるので、そこはこれからも推し進めていきたいところですね。
私がとくにこだわっているのは、日本のゲームのよさを海外に伝えることです。
私は日本のゲームが大好きで、そもそも日本に来たのもそれが理由です。
日本のゲームには、海外のゲームとは違う“魂”を感じています。
近年、トリプルAタイトルは海外のほうが勢いがありますが、ひとつのアイデアでも勝負ができるインディーゲームは、日本のタイトルは海外にも引けをとらない。
日本のクリエイターの“魂”が、ワールドワイドでアピールできるように、サポートしたいです。
子どものころにファミコンのゲームを遊んでいた自分の夢ですね。
小清水“今後”について語るにあたって、まずは前提としてBitSummitの歴史を振り返ってみます……。
1で実現したことは“熱量”や“一体感”だと僕はそう思っています。
2でできたのは“規模の拡大”。
3は“完成度の向上”。
そして、4のよかったところは、過去のBitSummitとの比較で言うと、僕は放送はとてもうまくいったと思っています。
会場に来られなかった方にも、配信という形でBitSummitが広がりました。
5では、“集大成”ということで、それらを全部成功させたい。
2では“規模の拡大”ということをお話しましたが、必ずしも活かしきれなかったところもあると思うんですね。
3と4を経て、“集大成”としてどう示せるかというのを示していきたい。
成功も過去最大にしたいです。
■BitSummitで“出展料”を設定した理由
――“集大成”というと最後のようにも聞こえますが……。
小清水最後ではありませんので、ご安心を(笑)。
で、今回冒頭でIndie MEGABOOTHがJIGAに加入してくれたことをお話しましたが、Indie MEGABOOTHのいい仕組みをどんどん取り入れたいと思っています。
具体的に言うと、出展者から少し費用をご負担していただくつもりです。
――“出展料”ということですか?
小清水参加される方が“自分たちのもの”と思っていただけるようなイベントにするのが集大成としてあって、それは何かに乗っかかるというのではなくて、“自分たちが支える”と思えるような仕組みにしないといけない。
もちろん、スポンサーさんのお力があってこそなのですが、そこだけで成り立っていくというわけではなくて、インディーゲームの開発者の方々にも少し負担していただこうと。
――それは、5回目にして大きな変化かもしれませんね。
小清水さらに言えば、これまでのBitSummitでは、「自分たちはたくさんアプローチしたいから、もっとスペースを貸してほしい」という人に対して、それを受け入れる仕組みがなかったんですね。
今回の参加費の背景には、もっと本気でやりたい人のために、大きなスペースをお貸しできるような仕組みにしたいという意図もあります。
――つまり、オプションで費用を払うことによって、より大きなスペースを確保できるということですね?
小清水そうですね。
そのへんは、Indie MEGABOOTHのケリーさんから猛烈にプッシュされた部分でもあります。
BitSummitのさらなる発展のためには欠かせないと。
富永ケリーからは、とにかく「自信を持って!」とよく言われています。
BitSummitは、日本のコンテンツが世界にアピールできる価値のあるイベントになっているので、そこに出展するのはものすごくステータスになる。
それくらいの価値があるということを、自分たちで認識するのはもちろんのこと、出展者様にも理解していただいて、“自分たち自身がイベントをやっている”という気持ちになるためには、出展料というのは、ある意味で当然のやりかたである。
というのは、教えてもらいました。
小清水BitSummitに関しては、もちろん自信を持ちたいところもあり、不安もあり……ということで、そのバランスの上で成り立っているというのが現状です。
少なくともケリーさんからすると、「BitSummitというイベントはこんなもんじゃない」と。
「ポテンシャル的にはもっとできるので、今後の発展のためにも、出展料という形で協力していただこう」ということです。
富永日本の文化からすると実感しづらいこともあるかもしれません。
やってみないとどう受け止められるかわからないというところもあるのですが、ここは今回の大きなチャレンジのひとつです。
――出展料はいくらくらいになるのですか?
小清水じつは、出展料に関してはBitSummit 2015でアンケートを取っているんですよ。
そのときはほとんどの方がポジティブな反応でした。
僕らが設定しようとしている金額がどこから導きだされているかというと、そのときのアンケートの“どれくらいだったら協力してもいいか?”という設問に対する平均的な金額を、今回設定しています。
1団体につき20000円ですね(学生無料)。
じつは、Indie MEGABOOTHが設定したいと思っている金額はもっと高かったのですが、今回はアンケート時の設定金額にしようということで決定しました。
■今後に向けての意気込みなどを、心のおもむくままに……
――最後に、A 5th Of BitSummit開催にあたっての意気込みをお願いします。
富永そもそもは、当社の『PixelJunk』シリーズのPRが目的で企画がスタートしたBitSummitですが、5年目を迎えられて本当に感慨深いです。
僕がBitSummitに期待している役割は、“リリース前の作品を提案する場”だったりします。
いまの時代って、作ったものを見せずに出すことが多いのですが、じつのところ、それってかなりリスクが高い。
作っている途中でどんどん見せて、ユーザーさんの反応を見て柔軟に変えていくという作りにしていかなければいけないと、つねづね思っています。
BitSummit 4thで『Dead Hungry』を出展したのは、まさにそういう意図からでした。
『Dead Hungry』に関しては、社内でも「あんなものを出してもいいのか?」という意見もあったのですが、「とりあえず出してみて反応を見よう」ということになったんです。
結果、出してみたら評判がよくて、製品版としてリリースできるようになったという経緯がありました。
出展を検討している方は、ぜひとも申し込んでいただければ……と。
村上そういった意味では、BitSummitは、ヴィティという会社にとっても大きな転機になっています。
これは、何回かお話しさせていただいているのですが、ヴィティは2回目のときに初めて出展させていただいたんですね。
僕らはそれまでずっと自社で開発をしてこなかった会社だったのですが、“チャンスがある”ということで出させていただいたんです。
そこでありがたいことに賞をいただいて、それがきっかけで自社開発のチームができました。
いまでは子会社(ヴィティ バックルーム)として独立しているのですが、そんなこともあって、同じようなことをほかの人たちにも体験してほしいという気持ちがいちばん強いですね。
――とにかく出してみてほしいと?
村上はい。
いま富永さんがおっしゃったように、リリース前に見せるとチャンスがあるかもしれないので、「何でもいいから出してみよう」というのがBitSummitです。
BitSummit自体が大きくなることで、そういうチャンスが増えるのはすごくうれしいことです。
JIGAとして運営に関わるようになって思うのは、イベントとしてちゃんと成功させたうえで、“出展したからには何かを持って帰ってもらいたい”ということです。
それが目標かな。
堀川個人的には、BitSummitは続けていくだけではなくて、毎回毎回成長していくイベントだと思っています。
BitSummitという名前そのものに価値があるものにしていかないといけないかなと思っています。
ベンこれからBitSummitを継続するにあたって、いちばん難しいところはバランスですね。
私もパブリッシャーが日本で開発スタジオが海外というタイトルで、プロデューサーを担当させていただいたことがたくさんありますが、日本と海外のミックスというのは意外と難しい。
BitSummitでは、国内インディーとIndie MEGABOOTHがいい具合にミックスできているのかなとは思いますが、そのほかにもスピーカーや配信、グッズ販売など、いろいろな面でバランスを取っていかないといけない。
うまくバランスをとって、参加者が自分なりに楽しめる部分があるようなイベントにしたいです。
――それは、“インディーの立ち位置”という点にも関わってくるかもしれませんね。
ベンもう1点はお金の話です。
私の率直な気持ちとしては、「BitSummitのような大規模なイベントを実施するには、まずかかるのがお金だ」ということを、皆さんにしっかりと理解していただきたいといことです。
私もJIGAの打ち合わせなどは、いわゆる“手弁当”で参加しているわけですが、さすがに自分の時間だけではどうにもならないことが多いです。
それはおそらくここにいる皆さんも同じはずで、やっぱりお金が必要になる。
そのへんのスムースな流れができたらいいなと思います。
お金も、さきほど言ったバランスに関わってくるかもしれません。
――あたりまえの話ですが、何だかんだ言って、お金は大切ということですね。
ベンそして最後にお伝えしたいのが、“インディースタジオどうしによる助け合い”です。
これは海外のインディーゲームのイベントを見ていつも肌で感じるところなのですが、海外では大きなインディースタジオが小さなインディースタジオを積極的にサポートしています。
そんなサポートがあるからこそ、小さなインディースタジオにもスポットライトがあたるようになるわけで……。
A 5th Of BitSummitでは、そのへんにも期待したいです。
富永ベンさんには、前回までと同様、すばらしい司会役は期待したいですね。
ベンヘンタイ的な司会は任せておいてください(笑)。
小清水BitSummitには、インディースタジオやスポンサーさん、来場されるお客さんなど、さまざまな方が関わっているわけですが、全員がハッピーじゃないと成り立ちません。
どれが欠けていても成立しないんです。
いまの私の肌感覚だと、現状できているのはBitSummitの持つポテンシャルの3割くらいかなと思っています。
BitSummitにはもっと広がる可能性がある。
まだまだ伸び代があるんですね。
いろんなことを少しずつ改善して、少しずつステップアップしていきたいと思っています。
村上「よりよいBitSummitにしよう」ということで、JIGAができて1年半が経ち、試行錯誤の日々なのですが、最近改めて実感するのは、これは個人的な感覚なのですが、チームとしてとてもまとまってきて、すごく仕事がしやすくなってきていることです。
そのチームワークをA 5th Of BitSummitに活かしていきたいですね。
既報のとおり、JIGAでは、5月20・21日に開催される“A 5th Of BitSummit”の出展エントリーの受付を申し込み中だ。
「この機会にぜひ!」というインディークリエイターは応募をご検討してみてはいかが?
※A 5th Of BitSummitの出展エントリーの受付期間が1月31日(必着)まで延長イベントのロゴも正式発表
◆開催概要
名称:A 5th Of BitSummit(フィフス オブ ビットサミット)
日程:2017年5月20日(土)・21日(日)
時間:10:00〜17:00
会場:京都市勧業館 みやこめっせ 1階 第2展示場
主催:BitSummit実行委員会
・一般社団法人日本インディペンデント・ゲーム協会(JIGA)
( Q-Games Ltd. / PYGMY STUDIO CO., LTD. / VITEI BACKROOM Inc. / O-TWO inc. / 17-Bit /Digital Development Management, Inc. / Indie MEGABOOTH )
・ワン・トゥー・テン・ホールディングス
・インピタス
・京都府
制作:オリコム
■BitSummitの歴史を写真で振り返る
2017年で5周年を迎えるBitSummitは、2013年にスタートして以降、日本のインディーシーンを語るうえでなくてはならない存在となっている。
ここでは、特別企画としてBitSummitの歴史を写真で振り返る(写真はJIGA提供)。
■BitSummit 2013
期間2013年3月9日
会場京都FANJ
出展者40組
来場者170人
当時キュー・ゲームスに所属していたジェームズ・ミルキー氏の呼びかけにより開催。
来場者は170人と、いま思うと小規模ながらその熱気はいまでも語り草になっている。
日本のインディーシーンの勢いを決定づけた伝説のイベント。
BitSummitの方針に共感したポルトガル在住のファンJan Neves (ヤン・ネーベス)氏から送られてきた3Dキャラクターのモデリングをメインビジュアルに採用。
「海外から見た日本」という視点が色濃く現れた独特なアートワークは、BitSummitを象徴していると言えるだろう。
■BitSummit 2014
期間2014年3月7〜9日
会場京都市勧業館 みやこめっせ
出展者117組
来場者5350人
BitSummit 2013の好評を受けて、翌年会場をみやこめっせに変えて3日間で開催。
出展者も117組と前回から約3倍となった。
ソニー・インタラクティブエンタテインメントと日本マイクロソフトが参加し、アワードも新設されるなど、のちに至る流れが形作られた。
一方で、「広すぎてびっくり」「仕組みができていないのに、箱だけが大きくなった」とのJIGAの皆さんのコメントに象徴されるように、課題が見えたイベントでもあった。
■BitSummit 2015
期間2015年7月11〜12日
会場京都市勧業館 みやこめっせ
出展者83組
来場者4496人
運営面の見直しのためJIGA設立。
会期も7月に変更され、前回から少しコンパクトなサイズで開催された。
3回目より、海外大手インディーゲーム団体IndieMEGABOOTHが参加している。
特徴は、「一体感が保てるように」との小清水氏の発案により設置された会場中央に設置された円形のステージ。
■BitSummit 4th
期間2016年7月9〜10日
会場京都市勧業館 みやこめっせ
出展者119組
来場者6435人
任天堂が初出展を果たし、3つのハードメーカーが揃い踏みしたことでも大きな注目を集めた。
話題のVRコンテンツも多数出展されるなど話題を集め、来場者数は6435人と過去最高を記録した。
主催者サイドが注力していた映像配信も好評で、視聴者数は約45万人となった。