「ポケモン GO」の日本配信開始!意外な関連銘柄はコレ!?
スマホ用ゲーム「ポケモン GO」が人気となっています。
7/6(水)にアメリカ、オーストラリアなどで配信が開始されましたが、その後は一日当たりの利用者数でTwitterを、プレイ時間でFacebookを超えたと報道されています。
そうした中、任天堂 株は6月末の14,505円から7/19(火)には一時32,700円と約2.2倍に値上がりし、同日の売買代金も7千億円と東証一部の23.5%を占めるなど、こちらも「大人気」となっています。
こうした「ポケモン GO」が7/22(金)にいよいよ日本でも配信開始となりました。
それを受けて同日の任天堂株は再び動意を見せています。
ただ「ポケモン GO」のヒットは「ひとつのゲームソフトのヒット」にとどまるものではないと「日本株投資戦略」では考えています。
同ゲームのヒットは「ひとつの契機」に過ぎず、「新しい世界」が幕を開ける可能性があるとみられます。
「ポケモン GO」が切り開く「新しい世界」とは何でしょうか。
また、そこで注目される投資テーマや銘柄とは何でしょうか。
今回はそうしたことについて考えていきたいと思います。
■おもな「ポケモン GO」関連銘柄はコレ!?
「ポケモン GO」は任天堂と株式会社ポケモン、米ナイアンティック社によって生み出されたスマホ用ゲームです。
このうち、株式会社ポケモンは任天堂が32%出資している企業で、ナイアンティック社はグーグルからスピンアウトして生まれた企業です。
開発、販売の面でこのゲームをけん引しているのはナイアンティック社となっています。
「ポケモン GO」の関連銘柄について、多くの市場参加者がすぐに連想できるのは無論任天堂 です。
株式会社ポケモンとともに、世界累計販売本数が1千数百万本にも及ぶポケモン・シリーズを複数生み出してきました。
今回のゲームから直接得られるのは、ゲームの利益に株式会社ポケモンへの収支比率(32%)およびナイアンティックへの出資比率(不明)を乗じた分であり、任天堂にフル寄与する訳ではない点は注意が必要です。
ただ、このゲームは企業とのコラボの仕方によっては、ゲーム課金以外の新たな収益を生み出すモデルを構築する可能性がありますので、過小評価は禁物と言えそうです。
ただ、実際にゲームの配信が開始されたことでいったんは「材料出尽くし」と理解する投資家も出てきそうです。
ゲームが過熱により規制を受けたり、3社の協業が深まらなかったりするリスクも残るとみられます。
また、任天堂への収益貢献について見えにくいこともあり、短期的には7/27(水)に発表される決算の説明会等で、会社側が慎重な見通しを示すことにより株式市場の空気が冷える可能性等には注意が必要です。
それでも、ニュースフロー的にはここから一層話題に上ることが増えてくると考えられます。
「日本株投資戦略」が「ポケモン GO」関連株としてご紹介するのは表1の銘柄です。
各銘柄の投資ポイントについては後段でご説明します。
表1:おもな「ポケモン GO」関連銘柄と投資ポイント
任天堂 持分法適用企業が米社と「ポケモン GO」を開発
現買信買
北陸電気工事 MEMSセンサに展開
スターティア AR向けシステム開発
豆蔵 3Dマップ関連
ジグソー 英国のAR関連企業に出資
サイバネットシステム ARコンテンツ制作支援サービス
アイサンテクノロジー 3D地図データ事業が主力
ネクストウェア 前期から地図データ配信事業
住友精密工業 米社とジャイロセンサーで合弁企業
オムロン MEMSセンサに展開
セイコーエプソン センサFUSION技術を搭載した時計・サービス
サン電子 AR関連企業に出資
ザインエレクトロニクス 高画質を実現する画像処理要半導体を開発
ローム 柔軟なセンサ・フュージョン ソリューション
■「ポケモン GO」が切り開く?AR(拡張現実)関連市場の拡大
「ポケモン GO」は「位置情報を活用することにより、現実世界そのものを舞台として、ポケモンを捕まえたり、交換したり、バトルしたりするといった体験をすることのできるゲーム」(公式ページ)となっています。
実際の身近な風景や街の映像に仮想のモンスターや情報等を表示したりしているのでAR(拡張現実)の世界です。
このゲーム以外では特別なゴーグルやメガネ等を通じて現実の世界に映像・データを反映させる仕組みのサービスもあります。
これに対し、現実にはない世界を見せつつも、現実のように感じさせてしまうのがVR(仮想現実)で、両者をまとめてひとつの市場とみることが可能です。
一般的にはARに比べ、VRの方が言葉としては普及しているようですが、2020年の市場規模はVR300億ドルに対し、ARは1,200億ドル程度との予想もあり、ARは将来性が期待されている市場と言えます。
「ポケモン GO」のヒットが市場にAR市場の成長性を再認識させ、関連銘柄が活躍する可能性があります。
また、10/13(木)に発売予定となっているソニー の「PlayStationVR」が7/23(土)より順次予約受付再開の予定で、これと併せて最注目される可能性があります。
表1にご紹介した「ポケモン GO」関連銘柄のうち、AR関連銘柄としてはスターティア 、ジグソー 、サイバネットシステム 、サン電子 があげられます。
図はそのうちのサイバネットシステム のチャートです。
AR関連コンテンツへの需要が増えた場合、この会社のビジネスチャンスも増えると期待されます。
なお、「ポケモン GO」はナイアンティック社のAR技術とLBS(位置情報サービス)に関する技術があって生まれたゲームと考えられます。
したがって「ポケモン GO」はLBSの普及を促す可能性があります。
LBS関連銘柄としては「3Dマップ」関連銘柄等が時折市場の話題になっており、表1では豆蔵 、アイサンテクノロジー 、ネクストウェア 等が関連銘柄として考えられます。
図はこのうちのネクストウェア のチャートを示したものです。
6/30に「NTT空間情報」と提携し、NTTグループが通信インフラを支えるために整備してきた全国詳細地図データとこの会社の技術を結び付け、あらゆるモノをデジタル地図上に表すことができるようになりました。
このニュースが出た直後、株価は大きく上昇し、その後は少し落ち着く展開となっています。
このニュースでLBS関連銘柄としての認識が投資家に浸透している可能性がありそうです。
■高感度センサの搭載が進む?
スマホを傾けると、それに合わせて画面の方向が変わることは良く知られていますが、こうした機能が可能となるのはセンサが搭載されているからです。
「ポケモン GO」の醍醐味はあくまでAR(拡張現実)の中で遊ぶことができることなのですが、スマホがジャイロセンサを搭載していない場合は、この機能を使えないことになるようです。
スマホを便利にするジャイロセンサや加速度センサなどについて、一部中・低位スペックのスマホでは搭載されていない場合もあるようなので、「ポケモン GO」の普及はこれらのセンサの搭載を促すことになりそうです。
また、これら複数のセンサを統合管理する「センサFUSION」の搭載が進む可能性もありそうです。
なお、センサは自動運転市場などでも需要が増える見通しで、それと合わせてかなりの成長が期待できそうです。
表1では成長が期待されるセンサ関連企業として北陸電気工業 、住友精密工業 、オムロン 、セイコーエプソン 、ローム などをご紹介しています。
このうち、セイコーエプソンはセンサに加え、ウェアラブル端末にも展開しており、AR関連として捉えることも可能です、
なお、ザインエレクトロニクス は画像処理用半導体をファブレス方式で生産しており、長期的には薄型テレビ市場の波乱が逆風になってきました。
しかし今後「ポケモン GO」のようなゲームの普及がスマホの高画質化を促進すると考えられることに加え、車載機器でも市場が拡大する可能性があります。
当社への風が逆風から順風に変わる環境が整ってきたように思われます。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
鈴木英之
SBI証券 投資調査部