<テトリス>開発者らが語る思い出と次のゲーム

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旧ソ連(現ロシア)発祥で、今も世界的な人気を誇るパズルゲーム「テトリス」。
開発者のアレクセイ・パジトノフさん(61)がこのほど来日し、「ザ・テトリス・カンパニー」を創業しテトリスの権利をパジトノフさんと共同所有するヘンク・ブラウアー・ロジャースさん(62)とともに、毎日新聞の取材に応じた。
2人は、ゲーム制作時の思い出や、最新のテクノロジーを使った新たなテトリスの展望について語った。

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◇日本文化と融合させたグッズを会場限定で販売中
テトリスは画面の上から落ちてくる四つの正方形を組み合わせた「テトリミノ」と呼ばれるブロックを並べ、横の列をそろえるとブロックが消えるゲーム。
7日まで明治神宮外苑(東京都新宿区)で開催中の「東京デザインウィーク2016」で、「新たなテトリス」をテーマに、日本の伝統工芸や現代アートとテトリミノを融合させた作品や商品が展示されており、パジトノフさんは、それを受けて約12年ぶりに来日した。

「日本のものづくりは、細部までこだわっている。
テトリスのグッズはシンプルだけど、すごくこだわって作られていたし、これからも楽しみ」
「テトリミノ」の形の氷が作れる製氷器や、木工のタイピンやカフスボタンなどが会場限定で販売されている。
他のゲームのようにキャラクターがいないため、グッズは「テトリミノ」が主役。
それでも一目で伝わる点が「テトリスの最大の強み」と胸を張った。

◇開発から世界的なヒットに至るまで
テトリスは1984年6月、ソ連の連邦科学アカデミーでプログラマーとして人工知能や自動音声認識に取り組んでいたパジトノフさんが、仕事の一環ではなく、趣味として開発した。

「元々、パズルが大好きで、自分のためのコンピューターを手に入れた時、個人で楽しむために作ったゲームの一つがテトリスでした。
参考にしたのは『ペントミノ』というパズルです。
五つの正方形で作ったさまざまな形のブロックを組み合わせて長方形の箱に収めるパズルですが、五つの正方形の組み合わせだとブロックの種類が多くなります。
そこで、テトリスでは四つにし、横一列がそろうと消滅する仕組みを加えました。
テトリスの語源はギリシャ語の4(テトラ)です」
できあがったゲームは、まだ対戦機能などはなかったものの、パジトノフさん自身が「プレーをやめられない」ほど夢中になり、周囲に知られるようになった。
しかし、すぐに世界に広がったわけではない。
当時、社会主義国家だったソ連にソフトウエアの市場が無かったからだ。
口コミの評判で、プログラムが徐々にコピーされる形で、ゆっくりと東欧など国外にも広がった。

その後、製造、販売のライセンスを巡る二転三転もあった。
ライセンス管理はソ連当局の外国貿易協会(ELORG)が窓口となり、ハンガリーの会社が権利を得て、その権利がさまざまなゲーム会社を経由しつつ、世界各国で販売されていた。
日本でもゲームセンターで使われるようなゲーム機(アーケードゲーム)は既に普及していた。

しかし、ELORGが与えた元々のライセンスの中の「コンピューター」に、一般的な「パソコン」は含まれていないことが後に判明。
米国のゲーム展示会で見つけた「テトリス」に早くから目を付け、当時は日本でゲームソフト会社「BPS」(01年に解散)を経営していたロジャースさんは「社会主義国家のソ連に『パーソナル(個人の)』という考え方はなく、実際に認められていたのは(当時代表的だった)IBMパソコン互換機のみだった。
それを多くの会社が勘違いした」と話した。
当然、アーケードゲームや家庭用ゲーム機向けのライセンスもソ連当局は認めていなかった。

ロジャースさんが中心となってELORGと直接交渉し、任天堂にゲーム機向けに正式なライセンスが認められたのは1989年3月。
その後、1989年6月にBPSが、発売したばかりの任天堂の携帯型ゲーム機「ゲームボーイ」用のソフトを販売し、世界累計で3500万本を超える大ヒットを記録。
現在、携帯電話、スマートフォンなどのモバイルゲームは有料のものだけで世界中で5億回以上のダウンロード数を記録している。

◇VR対応に、まさかの映画化も……
パジトノフさんはその後、米国に移住し、マイクロソフト社でゲームデザインを手がけた。
現在はシアトルに住み、「自分の生活を楽しむことがメイン」としつつ、テトリスの新展開などでロジャースさんの相談に乗り、テトリスのブランド価値をさらに高めることにも力を注いでいる。

現在、ゲーム業界でソニーの「プレイステーションVR」などのVR(仮想現実)や、AR(拡張現実)を駆使した「ポケモンGO」が世界で流行する中、シンプルなパズルゲームのテトリスはどのような将来を描いているのか。
ロジャースさんはテトリスの今後について、こう話した。

「これまでテトリスは、あらゆるデバイスでさまざまな形で流通してきた。
スクリーンさえあれば、テトリスはそこにある。
どんなに新しいバージョンになっても、世界中で言葉を超えて楽しめるものにする。
テクノロジーは進歩しても、チェスや囲碁のように、ゲーム自体は続いていくだろう。
詳しくはこれからだが、VRについても原型はできているので、楽しみにしてほしい」
将来的には、コンピューターゲームをスポーツとして捉える「e−sports」の競技としていくことも視野に入れている。
また、公開時期など詳細は未定だが、映画の制作も発表しており、パズルゲームをどのように映画に落とし込むのか、ファンの間で話題となっている。

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