<パラッパラッパー>PS4で2017年発売へ
PS4版は、PS版と、2006年に発売されたPSP版を元にしている。
5日から最初のステージが遊べる無料体験版をプレイステーションストアで配信。
止まらない嗚咽と涙で滲む視界。
その中で必死で目を凝らし、震える手でコントローラを握ってエンディングまで辿り着きました。
2016年12月6日発売、PS4向けアクション・アドベンチャー『人喰いの大鷲トリコ』。
それは少年と巨獣が紡ぐ、新たなる神話を描いた作品です。
少年と大鷲トリコ、生きる世界の異なる1人と1匹が出会い、互いに絆を深めながら静寂に包まれた巨大遺跡を冒険する本作。
『ICO』、『ワンダと巨像』で圧倒的世界観と胸を打つ切ない物語で高い評価を受けたゲームデザイナー上田文人氏の最新作です。
『人喰いの大鷲トリコ』では、プレイヤーがひとつの大きな世界を冒険しますが、一度に動けるエリアは区切られており、そこにあるものやトリコとの共同作業で仕掛けを突破し、先へと歩みを進めていきます。
プレイ感覚としては、上田文人氏の過去作『ICO』に近く、ひらけた場所からは攻略を終えたエリアを臨むこともできました。
回想調のナレーションが随所に入るため自然な形でエリアをクリアするヒントを得られますが、ヒントがまったくない場面も多く、どうすればいいのか頭を抱えてしまうことも多々ありました。
そんなときは辺りを見回したり、上を見上げたり、トリコの様子をじっくりと観察していると思いがけない発見があり、上手くいったときの爽快感は声をあげたくなるほどです。
プレイヤーは少年を操作し、随時トリコに指示を出しながら協力して冒険をしていきます。
少年とトリコには見た目のとおり大きな体格差があり、それぞれ異なる特徴を持っています。
少年は小さな穴をくぐるなど細かなアクションが可能で、物を運んだり動かしたりもできます。
子どもらしく少し走りすぎてしまう感覚があるので、高所では慎重に移動しないと落下することも。
あまりも高い場所から落ちたり、鎧の兵士に捕まって扉の向こうへ連れて行かれるとゲームオーバーですが、複雑な操作やタイミングを要するアクションは求められません。
一方のトリコはふさふさで大きな体躯なので、体に掴まって高い所に飛び移れたり、落ちそうなときは長い尻尾に助けられることもありました。
心を通わせていくと簡単な指示が可能となりますが、トリコも生き物なのでやたらと指示を連呼しては思い通りに動いてくれません。
声をかけるタイミングを考え、お互いの呼吸を合わせていくとスムーズに進められるので、相手の息遣いを感じながらプレイするという新しい感覚を得られました。
トリコの動きは非常に動物的で、エサとなる樽をつついてから食べたり、水浴びをして遊んでいたりと、見ていて飽きることがありません。
初めのうちは警戒しており、少年が近くにいると樽を食べようとしませんが、次第に心を開いてくれるようになると、手渡しでも食べてくれたり、空中で器用にキャッチして食べるなど、思わず微笑みたくなる動きを見せてくれます。
ほかにも、細い一本道は器用に後ろ歩きで戻ってきたり、高い所にも上手くバランスを取って立ったり、首を突っ込んでもぞもぞと抜けなくなってしまったり、一緒に水面に飛び込んで泳いだり……。
その無邪気で純粋な動作は、本当にかわいらしいの一言に尽きます。
そして次第にプレイヤーは、トリコとの絆を覚えるようになります。
トリコと少し離れて行動をしなければならない場面で筆者は「大丈夫、すぐに戻るから待っていて」と声をかけ、再び会えたときは安堵の吐息がこぼれました。
鎧の兵士たちに囲まれた場面では、戦ってくれるトリコを前に、筆者は隠れて倒してくれるのを待っていました。
先述のとおり、鎧の兵士に捕まって扉の向こうへ運ばれるとゲームオーバーになってしまうからです。
しかし、怪我をしながらも懸命に戦うトリコに守られているだけでは嫌になってきます。
なぜ動けるのに自分は何もしないのか、守られているだけなのかと。
気がついたら筆者は、「トリコになにするんだ!やめろよ!」と敵の眼前に飛び出していました。
たとえ敵を倒せなくても、トリコに槍を刺そうとしているやつの注意を引ければいい、と。
そうして守られるだけじゃない、守ろうとする少年へと変わっていました。
それほどまでにトリコの存在は旅の過程で大きくなっており、人の言葉は使えなくても、そこには会話が成立し、たしかな絆の芽生えを感じました。
2人が冒険する世界は、静寂に満ちた透明な空気が流れる巨大遺跡です。
人の手を離れ、自然のままに生きる旧跡が持つ、独特で荘厳な雰囲気が感じられました。
光の表現も見事で、薄暗いエリアから陽の下に出てきたときの目が眩む感覚は、新しい冒険への期待感を高めてくれます。
カメラワークも絶妙で、死角となる場所から敵が現れるなど、心を揺さぶられる表現が多数描かれるため、すべての場面が心に深く刻み込まれます。
そして、水のせせらぎ、風が吹く崖、生い茂る草木のさざめき、石畳に反響する足音など、静閑で寂しさを覚える世界ですが、トリコの荒々しくも優しい咆哮が時折届くことで、ひとりぼっちではない心強さを感じました。
自身で感じて欲しいため詳細は記載していませんが、少年と大鷲トリコの冒険は琴線に触れる出来事の連続で、クリア直後は本当に何もできなくなってしまい、脳裏に焼き付いた光景を思い出しては涙を流し、押し寄せるさまざまな感情の波に身を任せることしかできませんでした。
しばらく経ったいまでも、公式サイトなどで彼らの姿を見るだけで目頭が熱くなり、ともに過ごした時間の尊さを改めて感じさせられます。
いまはまだ、もう一度この旅に出る勇気はありません。
でも、いつの日かきっとまた2人に会いたくなる日が必ずやってきます。
その日まで、たとえ離れていてもトリコとの絆は消えることなく私たちの心に残り続けるでしょう。
『人喰いの大鷲トリコ』、いつまでもプレイヤーの心に強く刻まれる名作です。