(10)ポケモンGO ゲームの枠超え社会現象
■事故も…問われる人の「真価」
GPSなどを利用したスマホ向けゲーム。
画面上に現れる架空キャラクター「ポケモン」を「モンスターボール」と呼ばれる道具で捕まえ、他の利用者と対戦することができる。
米グーグルから独立した米ゲーム会社「ナイアンティック」と任天堂出資の「ポケモン」(東京)が共同開発した。
日本では7月22日に利用可能となった。
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「社会現象」とは何を意味するのかを、まざまざと見せつけられた。
7月に国内配信が始まったスマートフォン向けゲーム「ポケモンGO(ゴー)」。
珍しいキャラクターが手に入りやすい都市部の公園には、早朝から深夜までスマホ片手に人々が押し寄せた。
しかも若い世代だけでなく中高年までも、このお祭り騒ぎに興じた。
世界でのダウンロード数は、すでに計6億を突破。
「ユーキャン新語・流行語大賞」でトップ10入りを果たすなど、ポケモンGOは今年、最も流行したアイテムの一つとなった。
配信開始から5カ月。
今月中旬、「ピカチュウ」が出現することで話題になった扇町公園(大阪市北区)を訪ねると、まばらながらもユーザーの姿が確認できた。
「やっている人は最近少ない。
けれども、継続的に遊んでいる人は意外と多い」。
スマホ画面を連打し、友人と対戦していた主婦(39)はこう受け止めた。
近頃はサンタ姿のポケモンが出現するようになったといい、女性は「飽きさせないようにする工夫が、あちこちに凝らされている」と評価していた。
ゲームボーイ用ソフト「ポケットモンスター」が発売されたのは20年前。
当時、話題の中心はあくまでも子供世代だった。
一方、新たに登場したポケモンGOの特徴は、リアルとバーチャルの融合だ。
衛星利用測位システム(GPS)と、映像に絵柄・文字を重ねる拡張現実(AR)を駆使し、スマホ画面にポケモンが現れ、実際に存在しているかのような錯覚。
斬新なゲーム性は「非ポケモン世代」も巻き込み、巨大な流行を生んだ。
「屋内でやるもの」との従来の常識を覆し、新しい価値観を提示した。
ゲームの開発・運営主体の米企業は、被災地の東北3県や熊本県と連携し、ゲームを活用した観光復興を計画。
このうち宮城県で実施されたイベントでは約20億円の経済効果があったばかりだ。
だが、モラルなき一部の者が招いた悲惨な事案もある。
愛知県では10月、ゲーム操作中の男のトラックにはねられた小4男児が死亡する事故が発生。
運営会社はゲーム中に一定の速度以上で移動すると、アイテムを入手できないようにするなどの対策を講じた。
公園周辺での違法駐車やごみ問題の増加も批判を集めた。
単なるゲームにとどまらない可能性を示したポケモンGOだが、使いこなせないようならば、無意味で、ただ危険な存在に成り下がってしまう。
ある意味で、私たちの真価が試されているような気がしてならない。
(細田裕也)