京都・滋賀の輸出企業にも衝撃 米大統領にトランプ氏、円高不安
9日開票の米大統領選で共和党候補のドナルド・トランプ氏が勝利し、京都、滋賀の経済界にも大きな衝撃が走った。
国際経済の先行き不透明感から、輸出関連企業の株価が大きく下落。
企業の財務担当者は円高による採算悪化を警戒した。
専門家は、保護貿易主義の台頭やTPP(環太平洋連携協定)離脱の可能性を指摘した。
午前11時ごろに開票速報でトランプ氏優勢が伝わると、東京株式市場は輸出関連の銘柄を中心に全面安の展開になった。
京都・滋賀の上場企業も例外ではなく、下落率は日本電気硝子の7・25%減をはじめ、村田製作所が6・48%、京セラが6・35%、島津製作所が6・34%、任天堂が6・16%、オムロンが6・13%に達するなど、一様に値を下げた。
地場証券最大手の西村証券(京都市下京区)にはこの日、顧客からの電話相談が殺到した。
伴井明彦取締役は「証券業界はクリントン氏当選の見方が大半で、株価も上がる展開を予想していたので青天のへきれき」と話し、「影響は英国のEU離脱の比ではない。
トランプ氏の出方が読めないため、株式市況は当面、不安定な動きになる」と予想した。
企業からは、円高による収益の圧迫を懸念する声が相次いだ。
売上高の海外比率が高い第一精工の田篭康利常務は「米ドルが不安定になれば世界経済を揺るがす」と不安を募らす。
夏場以降の円の急騰で7月に想定為替レートを当初の120円から110円に見直したが、足元ではさらに円高が進む。
「部品需要は堅調だが、トランプ氏は保護主義的な印象が強く、来年以降にどんな影響が出るか」とこぼした。
レーザー加工機や電池検査装置などを欧米に展開する片岡製作所(京都市南区)の片岡宏二社長も「一番困るのは円高だ。
製品の品質には自信があるが、競争力が低下する。
一層のコストダウンが必要だ」と身構えた。
自由貿易の後退を憂慮する声もあがった。
サンコールは、自動車関連メーカーの進出が進むメキシコで、今春からエンジン用弁ばね材を生産している。
納品先が製造するエンジンや自動車の多くが米国に渡っているだけに、広報担当者は「(トランプ氏が主張する関税の引き上げなどで)貿易のメリットが失われて販路がなくなれば、受注に影響が出かねない」と先行きを危ぶんだ。
一方、影響を限定的ととらえる見方もある。
訪日外国人客の増加で業績好調な京都ホテルの西川治彦取締役は「短期的に『トランプショック』による円高で客足が落ちる可能性もあるが、長期的には2020年の東京五輪まで宿泊客需要が底堅い状況に変わりない」と述べた。
今後の日米の経済関係について、京都総合経済研究所の村山晴彦常務は「トランプ氏は自国中心主義を主張しているため、対米輸出に影響が出てくるかもしれない。
TPPにも厳しい見方を示しており、日本政府は息長く交渉を重ねる必要がある」と分析。
一方で「長期的に米国経済が強くなれば、日本経済にも良い影響が出てくる。
過度に悲観する必要はない」と冷静な対応を促した。