ワンボタンでも安心の“マリオ”「スーパーマリオ ラン」試遊レポート
任天堂は、すでに発表しているように、同社初のiOS向けゲームアプリとして、アクションゲーム「スーパーマリオ ラン」を配信する。
日本での配信開始は12月15日の17時以降。
配信開始に先立ち、報道関係者向けに体験会が開催されたので、本稿ではその模様や明らかになった詳細をお伝えする。
試遊した印象を先に記しておくと、「スーパーマリオ ラン」は、オートラン+ワンボタンのジャンプアクションとしたことで、アクション操作に集中できるプリミティブなゲーム性が際立っている。
一方、ふんだんに用意されたステージギミックにより、ワンボタンであることを忘れてしまうほど、プレイ感覚はアクションやアイデアに富んでいる。
期待に違わぬ、任天堂の気合が感じられる仕上がりになっている。
■価格
「スーパーマリオ ラン」は、ダウンロードおよび序盤の一部は無料でプレイでき、1200円(税込)のアプリ内課金で全コースがプレイできるようになる。
課金はこの1回のみで、すべてのステージ(コース)やゲーム内の追加要素を遊べるようになる。
アプリ配信後のコースの追加などは、現在は予定されていない。
無料でプレイできる範囲については、本稿の中盤で触れている。
■プラットフォーム
当初はiOS向けで、iPhoneとiPadに対応する。
Android向けの配信は検討中。
同社はこれまでスマートフォンやタブレットなどのスマートデバイス向けに、アバターの「Mii」で交流できる「Miitomo」を配信しているが、ゲームアプリを配信するのはこれが初めて。
当然ながら看板キャラクターであるマリオが登場するスマートフォン向けゲームもこれが初めてとなる。
151の国・地域で同時に配信される予定だ。
■モードや遊び方を紹介
「スーパーマリオ ラン」は、基本となる「ワールドツアー」のほかに、「キノピオラリー」「王国づくり」の合計3つのモードが用意されている。
□「ワールドツアー」
「ワールドツアー」は、基本となるアクションゲームのモード。
クッパにさらわれたピーチ姫を救うため、マリオがフィールドの障害を乗り越え、敵を倒しながら進んでいく。
シリーズでおなじみの草原や地下、お化け屋敷、お城、戦艦などが登場するステージクリア型で、6ワールド全24コースが用意されている。
各ワールドでは、4つめの最終コースの最後にクッパが待ち受けている。
コースの各所でゲットできるアイテムのうち、コインは「王国づくり」でアイテムと交換する際に使用する。
ちょっと難しい場所に置かれているピンクコインは、全5枚を集めてコースをクリアすると「ラリーチケット」がもらえる。
このチケットは「キノピオラリー」で遊ぶ際に使用する。
ピンクコインは、すべて集めてクリアすると、次回挑戦時には「パープルコイン」に変化、その配置も変わり、難易度が上がる仕組み。
パープルコインをコンプリートすると、今度は「ブラックコイン」が登場するなど、同じステージでも難易度を上げて繰り返し遊べる、やりこみ要素が用意されている。
「ワールドツアー」□「キノピオラリー」
「キノピオラリー」は、ほかのプレイヤーと1対1で競争するモード。
プレイする度に変わる自動生成のコースが特徴で、ワールドツアーなどでゲットできるチケットを使ってプレイできる。
リアルタイムのオンライン対戦ではなく、プレイ時には、ライバルとなるプレイヤーが操作したキャラクターのデータが、半透明の“ゴースト”として登場する。
その競争の評価の中心は、クリアまでの早さなどではなく、アクションの“クールさ”。
集めたコインの数に加えて、敵を倒すなどのアクションで“クールさ”が判定され、得点が高い状態だとたくさんのキノピオが応援に駆けつける。
無事にゴールまでたどり着くと、集まったキノピオは仲間になり、「王国づくり」モードで力を貸してくれる。
「キノピオラリー」では、挑戦できるリストとして、プレイ内容や成績などが近い他プレイヤーがピックアップされ表示される。
この際には、ステージをプレイすることで仲間になりやすいキノピオの色を、あらかじめ確認できる。
フレンドコードを発行することもでき、SNSなどを通じて伝えると、フレンドとして登録したユーザーのうち1人がリストに表示されるようになる。
「キノピオラリー」□「王国づくり」
「王国づくり」は、キノピオを集めて自分だけの王国を大きくしていくというモード。
ゲームを開始した後すぐに、ホーム画面のように表示されている。
この画面から「ワールドツアー」「キノピオラリー」などのモードに移動できる。
王国の、いわゆる経験値に相当するのが、前述の「キノピオラリー」で仲間になったキノピオの数(住民?)だ。
キノピオの数が増えると、レベルアップしてお城が大きくなったり、コインで交換できるアイテムがアンロックされて増えたりする。
「王国づくり」には100種類以上のアイテムが用意され、この中には「ルイージ」などプレイヤーキャラクターも含まれている。
例えばルイージをゲットすると、以降は「ワールドツアー」などのステージをルイージでプレイできるようになる。
コインで交換して王国に設置できるアイテムの中には、運試しのようにチケットをゲットできるボーナスステージの家なども用意されている。
このボーナスステージなどは連続してプレイできず、一度プレイすると一定時間はプレイできなくなる。
集まってくるキノピオには、赤、青、緑など色の違いもあり、まんべんなく集めないとアンロックできないアイテムもある。
前述のように、キノピオラリーでは挑戦前に、集まりやすいキノピオの色を確認できる。
王国の土地は、最初は画面1つ分だけだが、土地を広げられるアイテムをゲットすることで、画面にして最大6画面分まで拡張できる。
「王国づくり」
■無料プレイでできること
無料でプレイできるのは、ワールド1の3面である「1-3」まで。
「1-4」も開始から20秒までプレイできるようになっているが、20秒ではクリアできず、あくまでお試しという位置付け。
無料プレイでも、「キノピオラリー」「王国づくり」は楽しめる。
「キノピオラリー」でプレイに必要になるラリーチケットは、「ワールドツアー」でピンクコインを全5枚集めるなどすれば、特典としてゲットできる。
「キノピオラリー」でキノピオを集めれば王国がレベルアップし、コインを使って王国用アイテムを追加できる。
ただし無料プレイでは「ワールドツアー」でプレイできるステージが限られるため、入手できるチケットの数や、集められるキノピオの数には自ずと限界がある形だ。
3つのモードはこうした報酬や成果で連動しているので、課金で「ワールドツアー」を開放したくさんのステージをプレイできるようにならないと、「キノピオラリー」や「王国づくり」も十分には楽しめないというバランスになっている。
■基本操作、プレイ感覚
プロモーション動画などでも明らかになっているように、「スーパーマリオ ラン」は片手で簡単に操作できるよう、マリオが自動的に走り、プレイヤーは画面をタップしてマリオをジャンプさせるだけの、シンプルな操作が最大の特徴になっている。
タップする場所は画面のどこでもいいが、画面下部にはグラフィックが描かれていないタップ用エリアが設けられている。
チュートリアルでも学べるが、ブロック1つ分の段差や、1つ分の床の欠けは、ジャンプしなくてもオートラン中に自動的に乗り越えていく。
クリボーなど小さな敵も自動的に乗り越えるようになっており、マリオシリーズでは珍しいといえるが、これは常に走っているオートランという仕様に配慮した結果といえるだろう。
「スーパーマリオ ラン」の公式サイトでは、クリボーの頭を押さえつけて飛び越えているマリオの画像が使われているが、まさにこれがオートラン中に自動的に飛び越えている様子の絵だ。
マリオ単体でのアクションは、画面のタップでジャンプ、が基本。
ジャンプ中にさらにタップするとマリオが空中でスピンし、滞空時間とジャンプの距離を少しだけ伸ばすことができる。
クリボーなどの敵を倒す方法は、ジャンプ後の着地で踏みつけるおなじみの方法のほかに、ジャンプのし始め(のキック?)で倒すことも可能。
敵が迫る直前までジャンプを我慢し、ジャンプに敵を巻き込むイメージだ。
シューティングゲームの“かすり”、あるいは格闘ゲームの“昇竜拳”に近い感覚とも言えるが、「うわっ! ぶつかる!」と思ってあわててタップしたら、ジャンプすると同時に敵を倒せた、という形にもなるので、玄人向けのアクションという印象は薄いかもしれない。
□豊富なステージギミック。
ワンボタンでも変わらないマリオの楽しさ
さて、「スーパーマリオ ラン」はタップでジャンプするのみと、パッと見は単純にまとめられているが、ステージに登場する仕掛け(ギミック)や地形により、さまざまにジャンプアクションが派生する。
例えば、壁が両側にそそり立つ縦穴のような地形では、タイミングよくタップすることで、左右の壁を交互に蹴ってジャンプし、登っていくことができる。
また、斜め後ろにビヨ〜ンと戻るようにジャンプさせられるギミックの床や、雲梯(うんてい)のように天井を渡っていく仕掛け、タイミングよくタップすることで垂直に大ジャンプできるジャンプ台、オートランを止めてその先のギミックの様子を吟味できる一時停止の床など、「スーパーマリオ ラン」に合わせたさまざまなギミックが用意されている。
これらを組み合わせることで、まるでコントローラーで自由に操作していると錯覚するほど、さまざまなアクションをテンポよく繰り出せるようになっている。
もちろん、マリオシリーズでおなじみのハテナブロックや、浮遊する敵のパタパタ、パックンフラワー、地下から飛び出すファイアーボール、動く床など、おなじみの仕掛けも満載だ。
ワールドが進んでいくと、小さなステージギミック以外にもユニークな要素が登場する。
例えばワールド2の「2-1」で登場するお化け屋敷は、正解の扉を当てると次の場面に移動できるというおなじみの仕掛け。
しかし、マリオがオートランで自動的に画面右に向かって走っていくのに対して、ステージの場面はまったく追随しない。
実はこのステージ、「マリオブラザーズ」や「アイスクライマー」など名作でおなじみの、画面右端が左端につながっている仕組みで、オートランで右端に消えたマリオは、同じ階層の左端から登場する。
どの順番でジャンプして階層を上がり、扉にたどり着くのかは、ちょっとした謎解き要素にもなっている。
■期待大、スマホにやってきたスーパーマリオ
序盤しかプレイできていないので、全体的な感想を語るのは難しいが、アクションゲームがあまり得意ではない筆者にとっては、序盤でもワールド2ともなるとすでに歯ごたえが感じられた。
前述のピンクコインのコンプリートといった要素で自分の目標や難易度を上げていけば、同じステージでも繰り返しプレイを楽しめる。
「キノピオラリー」ではステージが自動生成され、慣れながら上達していく「ワールドツアー」とは違った緊張感がある。
ボリュームについては、全24コースとコインのやり込み要素、それにキノピオラリーの自動生成コースという構成だが、プレイヤーの力量次第で判断が分かれると思われる。
カジュアルに楽しむユーザーには十分なボリュームだと感じられた。
マリオの動き、ジャンプの様子、敵を踏んづけた時の音も含めて、その“手触り”はしっかりとマリオシリーズの作品であると感じられた。
ジャンプ操作に特化している分、アクションに集中でき、オートランで操作に緩急がついて小気味よい。
ステージの長さもモバイル向けとして長すぎず、スキマ時間に楽しめる。
iPhone、iPadのユーザーは、期待に違わぬデキになっていると、大いに期待していいのではないだろうか。
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