『エースコンバット7』で目指すものとは? PSX会場で河野一聡氏に直撃
文・取材・撮影:編集長 豊田恵吾
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2016年12月3、4日(現地時間)、アメリカ・アナハイムにて開催された“PlayStation Experience 2016”(以下、PSX 2016)。
会場にて『エースコンバット』ブランドプロデューサー、バンダイナムコエンターテインメント河野一聡氏に『エースコンバット7』についてお話をうかがった。
――オープニングショウケースにて最新映像を発表されました。
現地でユーザーの反応を見られての感想はいかがですか?
河野会場で見ながらTwitterで中継をしていました。
公式Twitterアカウントでのツイートですね。
画像など更新を一生懸命かけていました。
『エースコンバット』の名前で盛り上がってもらいましたし、発表させていただいたトレーラーに対しての反応も非常によくてうれしかったです。
ネットでの反応はつねに追っていますが、皆さんが期待されているナンバリングタイトルということに応えられているのかな、と安心しました。
PS VR用特別デモの出展だけですと心配だったと思うのですが、トレーラーを大々的に紹介できたおかげで、正統なナンバリングの『エースコンバット7』とわかっていただけたのかなと思います。
――公式Twitterでの事前のつぶやきも河野さんが書かれていたのですか?
河野PSXにて試遊を出すと発表するにあたり今回出展するのは「VRだよ」とちゃんとお伝えしておこうと思いまして。
――改めてとなりますが、『エースコンバット7』のVRについてお聞かせください。
河野『エースコンバット7』は本編のキャンペーンモードもあり、PS VRで遊べる部分は、特別なVR専用のコンテンツとして収録することを考えています。
キャンペーンとVRは、『エースコンバット』として根本の“エースパイロットになる”というコンセプトはいっしょなのですが、表現や進化の方向性が異なるんです。
VRは描画処理や表現レベル、体験の焦点が違いますし、本編のキャンペーンモードは、物語を主軸においたゲームプレイとストーリー体験との融合になります。
カメラは一人称だけではなく、カットシーンなど映画的な視点を持ち合わせているんですよね。
VRでそれをやると一瞬で没入から覚めてしまいますし、酔いの原因となる場合があるんですよ。
VRは完全主観で自分の目の、パイロット視点だけで、その錯覚から醒めさせたくないように作っています。
ですので、キャンペーンとVRは、『エースコンバット』として根本は同じモノなのですが、体験の方向性を作り込んでいくと違ってしまうんですよね。
ベストである姿が違うものですので。
――PS VRコンテンツデモを試遊させていただきましたが、『エースコンバット』との相性はバツグンですね。
前方に進みながら左右上下が見られるという操作性がとても新鮮で。
河野PS VRコンテンツデモは、パイロットの視点を中心にすべてを設計しています。
いままでの『エースコンバット』シリーズでは、代替的に右スティックで視点を動かせるものもありました。
でも考えてみると、人間が見たい方向を入力するというのは手順としてはおかしな行為でして。
右スティックではなく、見たいほうを見るだけという操作性はすごく自然ですが新しい感覚で。
右スティックで視点を操作しなくても、VRでは見たい方向を見るだけで状況が確認できるわけですから、ゲーム操作がより直観的で簡潔になりました。
――確かに直感的な操作は『エースコンバット』と親和性が高いと思います。
河野いままでは計器、レーダーを頼って判断するというゲーム性が主だったものが、VRだとどこに敵がいて、どこから来ているのか感じられるんです。
直感的に、自然になったというのがVRの第一印象ですね。
――PS VRコンテンツデモのメディアの反応はいかがでしたか?
河野まだ伝え聞いているだけなのですが、皆さんが楽しんでくれている、めまい感にGさえ感じると聞いていてほっとしています(笑)。
本当かな? と(笑)。
それは冗談として、戦闘機が自分の意図しない方向に引っ張られるとやっぱり違和感を感じると思います。
ノービス操作のような、システム側で補完してあげることが逆に問題になります。
ですので、入力に対して機体がどう動くかがわかっている人はほぼ酔わない。
『エースコンバット』シリーズを遊んだことがある方は大丈夫だと思いますね。
――計器が動いているのに気づいた人はいましたか?
河野どうでしょう?まだ詳しい話は聞いていないので……。
ただ、コクピットは相当に作り込んでいます。
状況に合わせて計器をちゃんと動かしていますので、難しいですけれど、やろうと思えば計器飛行ができるほどではないでしょうか(笑)。
――それはすごい!まるでシミュレーターですね。
河野とはいえ、『エースコンバット』はカジュアルなフライトシューティングです。
エースパイロットとしての体験を味わってもらうものですので、シミュレーター風味が味わえる、くらいですかね。
PS VRコンテンツデモでは、より空を飛んでいる感覚は強調できたと思っています。
――フレームレートは60fpsなのですか?
河野VRは60fpsが必須ですので、フレームレートは60fpsを必ず担保しています。
今後お見せしていくフラットモニター版は、60fpsをキープしながらビジュアルがよくなっていくというイメージです。
――PS4 Proへの対応はいかがですか?
河野現在は検証中ですね。
――PSXで公開されたトレーラーの内容についてですが……。
河野ナンバリングタイトルに『エースコンバット』ファンの皆さんが望んでいることは、自由に大空を飛び、自身の判断で敵を倒していくゲームのコア部分だったり、シナリオだったり、エースパイロットとしての成長体験がやはり期待されていると考えています。
乱暴に言うとRPG的に戦闘をしながら自分が強くなっていく、その物語に没入できるということでしょうか。
VRはどうしてもニュース性やインパクトが強いため、それを揺り戻すじゃないですけど、ゲームとシナリオをキチンと作って、ナンバリングとしてのキャンペーンが主軸であることを伝えたかったんですね。
――トレーラーで注目のポイントは?
河野正直に言うと、尺が60秒だったので、一年間の成果、あらゆるものを詰め込んでいます。
何度も繰り返し見ていただいて、検証してもらえるとうれしいですね。
カット割りが早いですが(笑)。
情報量は詰め込みつつ、シナリオの核心の部分は一切ばらしていません。
いろいろな謎が隠されていて、引きが強いものをトレーラーに詰め込んでいますので、1カット1カット見逃さずにご覧になっていただければと。
本編を想像しながら楽しんで観てほしいですね。
『エースコンバット7』はアニメーション映画『この世界の片隅に』の監督として注目を浴びていらっしゃる片渕須直監督に、『04』や『5』に続き脚本を担当していただいています。
片渕監督がお忙しいことはわかっていましたので、最初は監督に「今度、新しい『エースコンバット』を作ることになりました。
監督はお忙しいと存じておりますので、誰か、監督のようにミリタリーの知識がありつつ、脚本をお願いできる方をご推薦、ご紹介していただけませんでしょうか?」とご連絡させていただいたんです。
そうしたら「残念ながら、そのような人物は見当たりません。
私がお引き受けします」とお返事をいただきまして。
――そんなやり取りがあったのですね。
シナリオを楽しみにさせていただきます。
続いて、今後の展開についてお聞かせください。
河野初報を出してから1年かかってしまったので、皆さんを心配させてしまったのかもしれません。
まずは「ちゃんと作っています。
ご安心ください。
ここからペースをあげていきます」とお伝えしたいですね。
2017年発売と発表しましたので、これからは頻度を上げて情報更新していきたいと思っています。
――2017年のいつくらいかヒントをいただけますか?暑い時期なのか、寒い時期なのか(笑)。
河野(笑)。
年明けはないですね。
――続報、楽しみにしています。
河野いまは物語が固まり、ビジュアルが見せられるところまできていて。
環境の変化、雲だったり、リアルな空の浮遊感だったりをお見せできるようになりました。
今後は、エースパイロットとしての体験、フライトの部分のアクションだったり、大型のボス、ライバル機といった攻略の部分だったりとか、本作の柱の3つのうち、まだひとつしかお見せできていませんので、残りふたつを見せていきます。
――日本のファンがゲームに触れる機会は設けられるのでしょうか?
河野いろいろと考えています。
……ファミ通さんといっしょに試遊の場を設けることはできませんか?
――PS VRコンテンツデモ体験会ですか?え!?よろこんで企画させていただきます!
河野日本の皆さんにも触っていただきたいと考えていますので、ぜひお願いします。
――ちなみに、ファンの属性についておうかがいしたいのですが、どの地域の声が大きいのでしょうか?
河野当然ながら耳に入ってきやすいのは自分がわかる日本語ですが、ユーザー数から考えると、北米からの声が圧倒的に多いでしょうか。
ただ、ワールドワイドの声、皆さんがナンバリングに望んでいらっしゃる方向性はひとつだったと思っていて、それが『エースコンバット7』の形になっています。
それが今回、支持されていることで、じつはやっとほっとしています。
(笑)
――日本語版は日本語音声になるのでしょうか?
河野キャストも決まり、収録も始まっています。
近いうちにそのあたりの情報も公開したいと思います。
ただ……なかなかたいへんでして。
戦闘機ゲームですが、ストーリーもある。
ふつうのゲームですと、ゲームで使う部分、そこの部分にフォーカスして、その周辺をがんばって作ればいいわけです。
それはそのままゲームにもカットシーンにも使えます。
『エースコンバット7』も戦闘機とマップを作り、その周辺だけで完結して遊ばせるデザインにすれば楽なのですが、それだと『エースコンバット』にならない。
ナンバリングとしては認められない。
やはり広大なマップ、大空で飛行機を飛ばしながら、ときにはキャラククターのアップ、まつ毛までも作らなければならないわけで……。
キャラクター中心のゲームならばキャラクターや周辺のサイズ感を中心に作ればその周辺ですべてが無駄なく終わるんですけれど、『エースコンバット』は作る材料が本当にたくさんあって。
――トレーラーを拝見してそれは感じました。
ドッグファイトのシーンもあれば、キャラクターのアップもあり……。
河野本当にそうです。
アニメの止め画のアイデアで表現として変化球で成立させたりもしましたし、真っ向勝負でCGで成立させたり、リアルタイムで本気勝負もしたのですが、本来のゲーム部分に注力したいですし、でもカットシーンの画的にも、ストーリーを語るのに充分に魅力的にみせたいですし。
ですので、今回はまた新たな手法に挑戦して取り込んでいます。
今回PSXでは進捗的に中途半端な情報を出すのではなく、濃い情報量を固めてから出したいという強い意向が先にあったので、それらも詰め込んであのような内容となっています。
――PS VR、PS4 Proが発売されるまで情報出しを控えていたわけではないのですか?
河野いいタイミングになったとは思います。
ですが、“7”の冠をつけてつぎに皆さんが驚くレベルはどのへんにあるのか。
それが揃うまで情報は出さないと決めていました。
ティザーだけを見せて、というのを昨年に続いてやってしまうと、焦点がぼけてしまうと思って。
きっちりと『エースコンバット7』の姿を見てもらいたいと思ったんですね。
今回、いちばん伝えたいのは、『エースコンバット』シリーズ20周年として『エースコンバット7』を発表させていただきましたが、20年間フランチャイズが支えられ続けているのはすごいことで、ずっと支えてくれている人もいれば、親子二代で楽しんでくれている方もいる。
もちろん新しく遊んでくれるい人もいるわけですが、皆様が支え続けてくれたから『エースコンバット7』が発表できましたし、作らせていただいていると、つね日頃から感じています。
しかもワールドワイド、全世界中で『エースコンバット』のナンバリングを待っていてくれている人たちがいてくれた。
ですから、支えていただいた分をコンテンツで、エンターテインメントとして返すのが僕らの仕事です。
『エースコンバット7』を手にとってくれる方には、20年分の最大の恩返しがしたいですね。