ビートたけし、30年ぶりのゲーム登場 「あの問題作」と奇妙な符合も
セガゲームスの人気シリーズ最新作「龍が如く6命の詩。
」が2016年12月に発売された。
発売前日に新宿・歌舞伎町で開かれた完成披露会では、声とコンピューター・グラフィックス(CG)でゲームに登場するビートたけしさんら豪華出演陣が勢ぞろい。
たけしさんがあいさつで、自身が監修し、1986年に発売された“伝説”のファミコンソフト「たけしの挑戦状」に言及すると、会場からどよめきが起こる場面もあった。
たけしさんが30年の時を超えて関わった新旧のゲームには、奇妙な“符合”もあった。
龍が如く6はソニーの据え置き型ゲーム機「プレイステーション(PS)4」向け。
けんかの強さや正義感ゆえに暴力団同士の抗争に巻き込まれる主人公、桐生一馬の姿を描く。
主人公を取り巻く登場人物として、たけしさんのほか、藤原竜也さん、小栗旬さん、真木よう子さん、大森南朋さん、宮迫博之さんが“出演”している。
シリーズ6作目だが、声だけの出演を含めると5作目までに、渡哲也さん、舘ひろしさん、北大路欣也さん、奥田瑛二さん、片瀬那奈さんらが登場し、ゲームを盛り上げてきた。
それでも、人気俳優・女優が6人もそろう今回は異例。
完成披露会でシリーズ総合監督を務める名越稔洋・セガゲームス取締役は「かつてない豪華なキャストがそろった」と強調した。
広島の暴力団組長役で登場するたけしさんは、「監督(名越氏)とはカラオケ屋で会って、いいシャンパンを飲ませてもらった。
これだけもうかるなら俺も出よう、と思った」と話して会場を沸かせた。
カラオケ店でたけしさんの出演が決まったのは実話だという。
続いて飛び出たのが、「私も自慢じゃないけど、『日本一のクソゲー』っていうのをつくったことがありまして」という言葉だ。
クソゲーとは一般的にできの悪いゲーム、難解過ぎるゲームのことを言う。
司会を務めていたガダルカナル・タカさんがすかさず、「あれはもう伝説になってますね!『たけしの挑戦状』!」と合いの手。
詰めかけた「龍が如く」ファンや報道関係者も、このゲームのことを知っている人が多く、会場は一気に盛り上がった。
「子供が泣き出して、親がクレームつけて、社会問題になったゲームつくりましたけど。
攻略本買ったら余計わからなくなったという」とたけしさん。
「当然買いました」とカミングアウトしたのは、発売当時高校生だった宮迫さんだった。
たけしの挑戦状は、タイトーからファミリーコンピューター向けソフトとして発売された。
主人公のサラリーマンがひょんなことから「宝の地図」を入手。
宝を探しに南の島に行く−という内容だ。
購入者の多くが小学生と思われるのに、主人公が社長室に行くと「愛人」という書道額が飾られている。
南の島に行くには離婚する必要があり、妻に切り出す場面では「いしゃりょうをはらう」「なぐる」の2つから行動を選択するなど、シュール過ぎる内容が話題になった。
フジテレビCS放送のバラエティー番組「ゲームセンターCX」でこのゲームを取り上げた回では、たけしさんが言うように攻略本を出した出版社に「読んだけど解けない」などとの苦情の電話が1日400件程度あり、やむなく「その本の担当者は死にました」と答えていたことが明らかにされたほどだ。
しかし、奇妙なことにたけしの挑戦状と龍が如く6には共通点もある。
一つは、架空の繁華街の中をある程度、自由に動き回って店などに入り、お金を払ってモノを買ったり、飲食を楽しめたりするという点だ。
中でも、ゲーム内でお酒を飲め、カラオケを歌えるという設定は珍しく、たけしの挑戦状ではテキーラを飲んで体力を回復させる。
また、意味もなくやくざが襲いかかってくるところも共通している。
龍が如くの主人公桐生はどうみても強そうなのだが、路上ではとにかく襲われ、格闘モードに移行する。
操作をプレーヤーに習熟してもらう狙いもあるようだ。
たけしの挑戦状の街中にある映画館には、「やくざ対やくざ」という上映中のタイトルが掲げられている。
これは「龍が如く6」の内容を表すと同時に、たけしさんが後に監督として手がける「アウトレイジ」などの映画を想起させる。
実はテレビ番組「風雲!たけし城」を題材にしたソフトもあったことから、たけしさんのゲーム登場は30年ぶりというわけではないようだ。
しかし、暴力を描くことで人間の本性を際立たせるというたけしさんの表現手法の一端がたけしの挑戦状には反映されており、龍が如く6の内容とも“共鳴”している印象が強い。
ちなみに、たけしの挑戦状はテレビCMも放映されたが、発売日前日に「フライデー襲撃事件」が起き、打ち切られたという。
フライデー襲撃事件は、たけしさんが交際女性に対する執拗な取材に激怒して、東京都文京区音羽の講談社のフライデー編集部に、たけし軍団と押しかけた事件だ。
いずれも12月で、8日=龍が如く6の発売日(2016年)▽9日=フライデー襲撃事件(1986年)▽10日=たけしの挑戦状の発売日(1986年)という符合も何だか興味深い。
(経済本部高橋寛次)