「ポケモンGO」のメタファーとは?インターフェイスは、指から身体に
「ポケモン GO」への反応はリトマス試験紙?
テレビのワイドショーからニュースサイトまで、世間を賑わせているモバイル向けゲーム「Pok?mon GO(ポケモンGO)」。
この記事が出る頃には、日本でリリースされてから2週間ほど経っているはず。
興味深いのは「ポケモン GO」の評価のしかた。
その人の世間への向き方がわかる気がしています。
世界的に爆発的な人気のゲームですが、「こんなモノはくだらない!」と逆張りの論評をする人や「ポケモン最高〜!」って人まで様々。
「歩きスマホを増加させる…」なんてコメンテーター風のコメントも、「北海道でポケモン中にヒグマと遭遇!」なんてニュースを見ると正論ではあるのですが…。
ただし、センセーショナルなニュース見出しだけでなく、「ながらスマホ」での事故の増加数に注目してこそニュートラルな分析ができるはず。
その辺りは関係各所のデータ発表を待って冷静な対策を期待したいところです。
ネガティブなコメントにしても、世界中で多くの人が楽しんでゲームをしているのに「くだらない」なんて冷水を浴びせるのは、いかがなものかと。
オリンピックに例えるなら「ポケモン」という日本からの代表選手*が活躍している感じ。
もちろん、応援する人たちもたくさんいます。
まぁ、自国の選手の活躍が気に入らない…、なんてツイストしている人もいますが…。
(*任天堂の関連会社である株式会社ポケモンとアメリカのナイアンティックにより共同開発なので、ハイブリッドな選手とも言えますが…)
ポケモン GOのメタファーは昆虫採集
「歩いて集める」というメタファーは、まさに昆虫採集と似ています。
さらに「集めたモンスターを友達に披露する」のも同じです。
「採集場所を仲間で情報交換」するのもよく似ています。
家に戻ってから図鑑でレア度をチェックする、ネットで検索する…。
そんなメタファーから、友人やカップル、家族で楽しむのが盛り上がるのも当然です。
もちろん、ひとりで秘密の場所を見つけるように散策するのも楽しいでしょう。
ゲームの原点回帰
世界的ヒットになったゲーム「グランド・セフト・オート」シリーズや「マインクラフト」など、オープンワールド型、サンドボックス型のゲームは、ご存知の通りキーパッドなどを押すことでゲーム内を自由に動き回れました。
しかし、ポケモンGOでは自分の足(もしくは代替手段)で移動しなければ遊ぶことができません。
今までのゲームのように、キーパッドの操作だけで世界中を動き回れた便利さから、実際の移動という不便さに逆戻りしています。
これはデジタルガジェット風に言えば「身体をインターフェイスにしている」かもしれませんが、ゲーム機もキーパッドもなかった時代に回帰しているとも言えます。
考えれば、昔のゲームは野球や鬼ごっこのように身体を使った遊びでした。
この「指から身体に」という、インターフェイス上の原点回帰が多くの人に受け入れられたことがポケモンGOのヒットを生んだと筆者は分析しています。
トイメーカーのパラダイムシフト
上に説明したように、ゲームが原点回帰した反面、新たなパラダイムシフトも起きています。
それは、ゲームを手に入れるために「店頭に並ぶ」という行為が必要なくなったことです。
もちろん、こうした行列はイベント(もしくはお祭り)の意味もあったかもしれません。
しかし、昨今の転売業者の迷惑行為などを考えれば、消費者にとって「並ぶ」という「楽しみ」がクレームなどにもつながります。
また企業にとっては、SNSなどを通じて炎上案件になり、企業リスクも発生し始めているのはご存知の通りです。
ポケモンGOはダウンロード配布のおかげで、誰しもが、無料でゲームを入手できる公平性を確立しました。
新しいタイプのビジネスモデル
ポケモンGOは、アメリカでの配信4日で14億円を売り上げたと報じられました。
推測ですが、アメリカでの年間売り上げは1000億円、世界マーケット(まだ配信していないロシア、中国などを含む)では4000億円、任天堂の収益は280億円〜440億円とする専門家**もいます。
こうした数字は、今後販売される見通しの「ポケモンGOと連動するウォッチ型デバイス」など、グッズ販売や集客のための提携を除いた金額だと、筆者は推測しています。
(**参考:http://www.goodbyebluethursday.com/entry/PokemonGO_sales)
そうしたビジネスモデルから考えても、Apple社のスマホ、iPhoneを「電話の再発明」とするならば、ポケモンGOは「スマホゲームの再発明」と言ってもいいかもしれません。
前田知洋(まえだ ともひろ)
東京電機大学卒。
卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。
少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。
プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。
LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。
海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。
著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。
文● 前田知洋