『F1 2016』の魅力を語る ――“キャリアモード”の復活でF1ドライバーのバトルをよりリアルに追体験

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文:編集部 ばしを
●FIA公認、世界最高峰の四輪ロードレースゲームのシーズンがいよいよ開幕!
1950年に初開催され、今年で65年の歴史を誇る四輪モータースポーツの世界選手権、フォーミュラーワン(F1)。
世界有数の自動車メーカー、世界各地のトップドライバーが参戦し、世界各国を転戦しながら世界一速い男とマシンを競い合う、モータースポーツ界の最高峰ともいえる戦いの最新シーズンを、いつでも誰でも手軽に体験できるゲーム『F1 2016』が2016年9月8日に発売される。
今年度のシーズンを再現した本作をいち早く体験できる機会を得られたので、ここで発売前のプレイインプレッションをお届けしよう。

●路上を駆け抜ける迫力のドッグファイトを追体験!
F1を主催する国際自動車連盟(FIA)唯一の公式ライセンスゲームとして、世界中のF1ファン、モータースポーツファンから期待されている『F1』シリーズの最新作『F1 2016』。
公式ライセンスゲームということで、2016年の全レース、全チーム、全ドライバーはもちろん、各チームのマシンから細かなルールまで、徹底して再現されている。

過去の『F1』シリーズは、秋に開催される日本GPの前後に発売されるのが通例だったが、昨年の『F1 2015』より、発売日が早められ、未開催のシーズン後半戦を自分の手で走ることができるようになったのも、本作の持つ大きな魅力のひとつ。
本物のF1レースを見終わったあとに、同じコースでレースができるのは、格別な体験というほかないだろう。

前作より新世代機(PS4、Xbox One)専用タイトルとなったことから、グラフィック面は大幅に進化していたが、本作では天候や時間による変化や、ダメージ表現などがさらに進化。
また、ファン待望の“キャリアモード”が復活したことも、うれしいトピックのひとつ。
ライバルを打ち負かして伝説を残すほどの活躍を見せるか、ライバルとの争いに敗れてセカンドドライバーに成り下がりながらも、F1シートにしがみつく苦しみを味わうか、F1の酸いも甘いも含めて体験できるのは公式ライセンスゲームならではといったところだ。
とくにライバル対決といえば、古くは1970年代のジェームス・ハント対ニキ・ラウダ、1980年代のアイルトン・セナ対アラン・プロスト、1990年代のミハエル・シューマッハ対ミカ・ハッキネン、2000年代のルイス・ハミルトン対フェルナンド・アロンソなど、F1を盛り上げる大きな要素のひとつ。
今年のF1世界選手権も、メルセデス所属のルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグの両ドライバーによるし烈な争いがくり広げられているが、この戦いにみずからの手で参入できるというのも、本作の醍醐味といえるだろう。

ちなみに実際のF1では、2016年度のチャンピオン争いの筆頭であるハミルトンとロズベルグのライバルは、ともに表彰台に上がった場合でも、お互いに顔を見合わせることがないくらい緊迫した状態だが、『F1 2016』でのふたりは、表彰台上でお互いにシャンパンを重ね合わせたりするほど仲むつまじく見えるのは微笑ましく見えたことにも触れておきたい。

●リアル走行もお手軽レースも自由自在の懐の広さでF1バトルを楽しめる!
ゲームとしてのリアルさは言わずもがながら、レースゲームが得意な人から不得意な人まで、誰もが楽しめるようなアシスト類のきめ細やかさも本作の魅力のひとつ。
とくに、全21戦をフリープラクティス、予選、決勝のフルラップを走るリアルなものから、任意のグランプリ、ワンラップだけの予選、決勝レースの周回数など、レーススケジュールは自由に設定可能。
また、マシン操作もブレーキやトラクション(※)、ハンドル操作のアシスト量の調整から、アシスト完全オフのリアルなものまで調整でき、自分の腕に合わせた楽しみかたができる。
さらに、自車の設定だけではなく、ライバルたちのAIドライバーレベルもベリーイージー、イージー、ミディアム、ハード、エキスパート、レジェント、アルティメットと、細かく設定が行えるので、何度か走ってみてほどよいレベルを見つけると、より楽しいレースを楽しめるはず。

※トラクション:車を押さえている力をトラック表面に伝えてより速く進むための指標。

実際のF1マシンといえば、最大で約4〜5G(一般車のフルブレーキング時が約0.8G)もの重力加速度がかかるなか、ステアリングに取り付けられた各種スイッチを操作しながら、最高速度は350キロを超えるほどの限界速度域でコーナーを攻めるのだから、常人には到底不可能な世界を、手軽に体験できるというのは、ひと昔前には考えられなかったレベルの出来事である。
日本でも空前のF1ブームが起こっていた80年代後半〜90年代前半にもF1ゲームは存在していたが、その多くはトップビュー(真上見下ろし視点)によるスピード感を重視したタイプか、ラスタスクロールや回転拡大縮小を用いた疑似3Dによるものがほとんどで、その多くはチーム名、ドライバー名をもじった作品ながらも、当時はF1パイロット気分を味わっていたのだから、その当時を知るものとしてはF1マシンの進化以上にゲームの進化に驚くばかりだ。

とくに近年のF1ではテスト走行が制限されていることから、いまや各チームともシミュレーターでの走行が各種データ集めのメイン作業となっているが、そんな時代ならではとも言えるリアルな走行体験から、ゲームとしてのお手軽さを楽しむところまで本作は幅広くカバーしており、誰もがF1の“気持ちよさを体験できる”というのが、本作のいちばんの特徴と言えるだろう。

さらに、本作から復活した“キャリアモード”によって、レースのみならず、F1ドライバーのシーズンを追体験できるのも大きなポイントである。
今回の“キャリアモード”は、ライバルとの走行対決からチームとの契約、マシン開発に至るまで、実際のF1シーズンの醍醐味をそのまま味わえるモードで、2016年のシーズンに自分がF1ドライバーとして参戦しているかのような、夢のような楽しみかたができる。

実際のF1においては、F1ドライバーになることはもちろん、自分で参戦チームを選ぶなんて、限られたひと握りのドライバーでしかできないが、“キャリアモード”では、F1に参戦するのみならず、全11チームから自由にチームを選べるという、F1ドライバーを一度でも夢見たことがある人間にとっては、これ以上ない特権が与えられる。

ここで、どのチームを選択するのかも悩ましくも楽しいところ。
常勝無敵のシルバーアローのメルセデスに、F1の歴史とともにある赤い跳ね馬のフェラーリ、天才デザイナー、エイドリアン・ニューウェイが作り上げた空力マシンのレッドブルなどなど、自分でチームを選択できるなんて、まさに夢の如しである。
また、チームメイトを始めとした各ドライバーがライバルとして設定され、選手権としての戦いだけでなく、エースドライバーをかけた戦いや、チームでの評価を高めるための戦いなど、F1ならではの駆け引きや対決までも楽しめるのも見どころのひとつ。
今シーズンを盛り上げているハミルトン、ロズベルグのライバル対決に割って入り、タイトル争いをくり広げることもできるというわけだ。

●“キャリアモード”でマクラーレン・ホンダにかつての栄光を取り戻す!?
どのチームにするか迷うこと数分。
最終的には、応援の意味も込めて日本のエンジンサプライヤーとして昨年よりF1に復帰したホンダを積むマクラーレンを選択。
このマクラーレン・ホンダは、これまで通算182勝、コンストラクター選手権獲得8回を数える英国の老舗チームで、1980年代には赤白のマルボロカラーのマシンでアイルトン・セナとアラン・プロストを配し、日本でも一大F1ブームを巻き起こしていた時代に最速を極めていた名門中の名門。
1988年には、全16戦中15勝を決めるなど、F1界の伝説に名を残すほどの活躍を見せていたことを知る人も多いことだろう。
ところが1992年、ホンダのF1撤退により、90年代前〜中盤は苦しい時代を過ごしたものの、1995年よりメルセデスエンジンを搭載し速さを取り戻すと、1998年にはコンストラクター、ドライバーのWタイトルを、1999年にはドライバータイトルを獲得するなど復活。
その後もしばらくのあいだ常勝チームとして活躍していたが、2015年にF1に復帰を果たしたホンダをパートナーに迎え入れ、新たな黄金期を目指すべく、チームの再建を図っているところである。
ホンダが復帰を果たした1995年は、エンジンの信頼性・パワー不足により、数戦入賞するのがやっとで、チームとしての獲得ポイントも27ポイント、コンストラクターランキングも最下位となる9位と、厳しいシーズンとなったものの、今年は12戦の時点で昨年を上回る42ポイントを獲得。
コンストラクターランキングも7位につけるなど、確実に上昇の気配を見せている。
この名門チームを立て直し、80年代、90年代のかつての黄金期を再建すべく、マクラーレンを選択したというわけである。

最初にライバルに設定されたのは、2005・2006年のワールドチャンピオンにして、現在のF1の中でも最強ドライバーのひとりとしての呼び声も高いフェルナンド・アロンソ。
ライバル対決は予選、決勝での順位、パフォーマンスによってポイントが割り振られ、目に見える形で優劣が付けられるのだが、実際のF1においてもチームメイトは最大のライバルにして、自分の実力を計るバロメーターとなるのだから、第1戦から気合いが入りまくること請け合いだ。

レースは本物のグランプリウィーク同様、フリープラクティス1、フリープラクティス2、フリープラクティス3、予選、決勝と進行していくが、このときの走行時間なども含めて自由にセッティングが行えるので、数分でひとレースを楽しむことから、本物のレースさながらに時間をかけてマシンを仕上げながら、2時間のレースに挑むこともできる。

今回はプレイ時間に限りあるため、ウィークエンドのスリルが凝縮された“ショート・ウィークエンド”(フリー走行30分、ワンショット予選、レース距離25%)を選択。
アシストはアンチロックブレーキ:オン、トラクションコントロール:ミディアム、ギアボックス:オートマチックと、それなりのアシストを施し、AIドライバーレベルはミディアムで挑戦してみたのだが、走行時のフィーリングはもちろんのこと、ピットやパドックの雰囲気なども含めて、手軽にF1ドライバーの気分を味わえたのは言うまでもない。
とくにフリープラクティス中に実施するタイヤ・マネジメントでは、近代F1において重要な要素のひとつでもあるタイヤの使いかたを集中して学ぶことができるのだが、これがなかなかに絶妙で、タイヤの消耗を最小限に抑えつつできるだけ速く走るという矛盾をいいバランスで取りながら走るという、F1ドライバーの資質が試されているかのような気分を味わうことができる。
また、ライバルとの直接成績によってチーム評価が変わってくるところは、実際のF1でも存在する緊張感を与えてくれ、自分の活躍如何によってマシンとチームが発展していくというのは、シーズンを戦っていくうえでのいいモチベーションにもなってくれる。
最初から勝てる強いチームで、厳しい戦いをくり広げながらチャンピオンを目指すというのも楽しみかたのひとつだが、F1ファンなら好きなチームを選択し、チームとともに成長しながら常勝チームを目指すという戦いかたを目指したいところだ。

●実際に“キャリアモード”を走ってみて、ゲーム性にも結果にも大満足
今回、上記設定で開幕戦のオーストラリア、第2戦のバーレーンと2レースを行ったところ、緒戦は予選・決勝とも2位という好成績。
第2戦はポール・ポジションを獲得し、先行逃げ切りで優勝と、日本製エンジンに日本人ドライバーでこれ以上ないスタートダッシュを決めることができた。
今回は少しやさしめの設定にしていたため、このような好成績を収めることができたが、ソフトが発売したあとはもう少し厳しい条件にして、じっくりとシーズンを楽しんでみたいところだ。
本シリーズの特徴として、ピットからの無線連絡が多く入ってくるが、“Leave me alone, I know what I’m doing”(やるべきことはわかっているから、放っておいてくれ)とひとり呟きながら、秋の夜長に自分なりの2016年F1シーズンを作り上げるのが、いまから待ち遠しくてたまらない。

現世代機専用機として登場した前作『F1 2015』は、グラフィック、走行フィーリング、AIなど、目に見える進化は大きかったものの、ゲームモードの少なさという不満の声を聞くこともあった。
本作では、今回体験した“キャリアモード”を始め、その他の各種モードが充実しており、さらなるやり応えが期待できることは間違いない。
細かなところではセーフティカーの復活にバーチャルセーフティカーの初導入や、フォーメーションラップでのタイヤへの熱入れ、今シーズンをよりおもしろくしているスタートシステムの本格化など、マニアならより楽しめる要素も多数追加されているという、徹底したこだわり振りもたまらない。
先にも述べた各種アシスト、AI設定やレースの組み立てにより、レースゲームの初心者からベテランまで、誰もが楽しめる作品と言えるだろう。
ただ、F1を知らなくても問題はないが、F1を知っているほうが何倍も楽しめること請け合いだ。
とくに、チーム力や勢力状況、ドライバーの性格や確執など、知っていればいるほど、本作の楽しさは何倍にも膨れあがるだろう。
現在、無料放送でF1を見る術はないが、この作品を機にF1に興味を持って、もう一度日本人ドライバーが活躍できるくらいの盛り上がりを見せてもらいたいところだ。

F1 2016
メーカー:ユービーアイソフト
対応機種:プレイステーション4 / Xbox One
発売日:2016年9月8日発売予定
価格:各7980円[税抜](各8618円[税込])

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