TGS出展内容や体験版の話題も! 『ワールド オブ ファイナルファンタジー』千葉広樹氏インタビュー
●丁寧に描かれた世界と大ボリュームで骨太な内容に注目!
2016年8月17日〜21日(現地時間)ドイツ・ケルンにて、ヨーロッパ最大のゲーム イベントgamescom 2016が開催。
スクウェア・エニックスブースでは、2016年10月27日発売予定のプレイステーション4、プレイステーション Vita用ソフト『ワールド オブ ファイナルファンタジー』(以下、『WOFF』)が出展された。
そのディレクターを務める千葉広樹氏に、ドイツでの出展の感触や、ゲームの内容について聞いてみた。
なお、下記関連記事では、gamescomでプレイできた試遊版(日本語版)のダイジェスト動画とインプレッションを公開中。
こちらも参考にしてほしい。
『ワールド オブ ファイナルファンタジー』を試遊!動画とともにプレイレポートをお届け!
■図鑑などで見られる設定が膨大でローカライズがたいへん!?
――千葉さんは、これまでgamescomに来られたことは?
千葉今回が初めてです。
ドイツに来たのも初めてで。
gamescomはおもしろいですね。
こちらの方の“楽しむ”ということに対する積極的な姿勢は興味深いです。
――『WOFF』は試遊台を出展されていますが、ユーザーがプレイする様子は見ましたか?
千葉はい。
ボスのイフリータに倒されてしまっている方が多かったですね(笑)。
最後だけ、ガチで戦略的にバトルをしないとクリアーできないバランスにしてあったので、狙い通りなんですけど。
見た目がかわいらしいのが、海外ではどう受け取られるかわからなかったのですが、プレイしていただいた人には、いつもの『FF』らしい骨太さもあるし、新しさもあるということをわかってもらえたのではないかなと。
――『WOFF』を海外でも発売されるというのは、当初から決まっていたことなのでしょうか。
千葉そうですね。
新しいコンセプトの作品なので、ぜひ世界のファンに届けたいと思い、初期から決めていました。
今回は、中国……アジア市場を含めての世界同時発売というところにもチャレンジしています。
――ワールドワイドで同時発売というチャレンジは、やってみてどうでしたか?
千葉やっぱり苦労は多いですね(笑)。
開発とローカライズが、同時に走っていかなきゃいけないので。
ボイスは日本語と英語で、各国の言語は字幕対応なのですが、日本では収録に10ヵ月ほどかけました。
ローカライズの担当も、「なんだこのボリュームは!」と驚いていましたね。
――イベントが丁寧に作ってあるので、ストーリーのテキストがすごいことに……?
千葉そうなんです。
それとゲーム内に図鑑があって、そのテキストにもかなり力を入れたんですよ。
ストーリーの本筋とは関係がないことや、ちょっとした謎になるようなことも含めて、小説1冊分くらい書いちゃって(笑)。
――小説1冊分!それだけ、グリモワルに関する詳細な設定があるんですね。
そういう部分が充実しているのは楽しそうです。
千葉もともとプロデューサーの橋本(真司氏)のほうから、「新しいIPを作るんだったら、長く人気が続くコンテンツにしてみなよ」と言われていて、だったら浅い、表層だけのものにしてしまったらダメだろうと思ったので。
そうしたテキストは読まなくても問題ないのですが、見ていただけるとこの世界のことが、より深くわかるようになっています。
『FF』らしい奥深さがあり、それでいてライトにも楽しめるバランスにしてありますよ。
――ちなみに、海外での販売を意識した部分はありますか?
千葉ローカライズについては、英訳を逐一見せてもらって、このキャラクターのこのセリフは、こういうニュアンスにしたいといったように、翻訳の方向性にもこだわっています。
クラウドなど『FF』のレジェンドキャラクターたちに関しては、いままでの作品でも訳を担当していた方などにも携わってもらって、共通のイメージを保った翻訳になるようにしています。
新規キャラクターも、たとえばタマは特徴的な話しかたをしますが、英語でも雰囲気が伝わるようにローカライズしています。
――日本版では“ノセノセ”や“バラバラ”といった特徴的なルールがありますが、それらをローカライズするのも難しそうですね。
千葉そこもけっこう話し合って、最終的にはわかりやすさを取っています。
“NoseNose”と言ってゲーム内用語にしてしまうと、覚えなければならないことが増えてしまいますからね。
ただ、日本語でそうしている意味やノリは伝えて、なるべくそういう雰囲気を持った単語をチョイスしてほしいといったお願いはさせてもらいました。
けっこう細かいところまで見ているんですよ。
■やり応えがある一方で遊びやすさを追求したゲーム内容
――試遊版に登場したボスのイフリータは、『FF』のイフリートの女の子版ともいえるミラージュで、斬新なアレンジだと思いました。
そういった変わったアレンジをしているミラージュは、ほかにもいるんですか?
千葉いくつかやっていますね。
期待をいい意味で裏切る“ヘンシンカ”(育成の過程で姿が変わり、能力が進化すること)をいくつか仕込んであり、そのうちのひとつが女性体のイフリートです。
ほかにも、こんなヘンシンカをするのか、と驚いてもらえるようなものを用意しています。
――ヘンシンカはルートがひとつじゃない場合もあるとのことで、育成も楽しみですね。
それと試遊では、チョコボなどに乗れますが、そのメリットは?乗るミラージュによって差があったりはしますか?
千葉エンカウントはするので、いちばんのメリットは早く移動できる、ということです。
ミラージュごとに少しだけ差がありますが、個性の範囲なので大きな性能の違いはありません。
まあ、チョコボがいたら乗りたくなりますよね?そういうことです(笑)。
――飛ぶミラージュに運んでもらう“バサバサ”や、障害物を燃やす“モエモエ”など、固有の能力で道を切り拓いていく要素もあります。
その能力を持っているミラージュが仲間にいなかったら、どうなるんですか?
千葉ふつうにプレイしていれば、そうした仕掛けに行きあたったときに、必要なミラージュを仲間にしているような配置やゲームバランスにはなっています。
ただ、仲間にしていないケースももちろん想定していて。
どんなミラージュが必要かヒントになる出来事があったり、すぐに必要な仲間を探しに行けるような作りにしています。
『WOFF』は、ホームであるナイン・ウッズヒルにいつでも戻れて、そこから一度行ったところにはすぐ再訪できるようになっているので、気軽にいろいろな場所を探索できるんです。
――便利ですね。
遊びやすそうです。
千葉いまどきの遊びやすさを意識しました。
ガッツリした遊びの中にカジュアルさを入れるのは、いまのユーザーのプレイスタイルにマッチするかなと。
もちろん、ホームに戻らずに突き進むスタイルでも攻略できますよ。
――『FF』らしい遊びの要素としては、ミニゲームの情報が徐々に出てきています。
いまは“サボテンたたき”と“ネブランアタック”が公開されていますが、ほかにもミニゲームはありますか?
千葉はい。
ほかにもたくさん用意してあります。
おもにサブクエストのお話を進めていくとミニゲームが始まって、それをクリアーすることでナイン・ウッズヒルの自室で遊べるようになるシステムです。
――ミニゲームをクリアーすると、いいことが?
千葉基本的にはスコアの更新などチャレンジ要素ではあるのですが、ミニゲームの結果で出会えるモンスターがいたり、ちょっといいものがもらえたりというご褒美要素もあります。
――サブクエストはどれくらいあるのでしょう。
千葉すごい量ですよ(笑)。
メインクエストは、レェンとラァンの物語に特化してあって、サブクエストは、ゲーム中に出会うミラージュや、ライトニングなどのレジェンドキャラクターたちのストーリーになっています。
出てくるキャラクターは、なるべく掘り下げてあげたい、と思って。
――ミラージュまで掘り下げるとなると、確かにすごい量になりそうです。
千葉とくに、しゃべっているミラージュは、みんなサブクエストを用意してあります。
サボテンダーとトンベリとモーグリが集まってあるお話をするクエストがあったり(笑)。
――それをいい声の声優陣が演じると(笑)。
単体じゃなく、ミラージュの組み合わせで意外な関係性がわかったりもするんですね。
千葉制作スケジュール上、すべてを入れ込むことはできない中で、このエピソードはどうしても削りたくなく、自分で作ったりもしました(笑)。
――メインストーリーとしては、双子のお母さんと、グリモワルの伝説の人物が同じ名前で……といった部分が公開されましたね。
千葉“ファーナ・ルゥス”ですね。
グリモワルで100年前に世界を救った救世主として名前が残っている人物です。
レェンとラァンは記憶を失い、ナイン・ウッズヒルからグリモワルを訪れた際に、その話を聞きます。
そこで、それが自分の母親と同じ名前だっていうことを思い出すんです。
――それまでは忘れている?
千葉そうです。
でもそれはいったいどういうことなのか?……ということで、物語が進んでいくと。
――双子の前に立ちはだかるバハムート軍も、王であるブレンディレスのほか、セグリワデスやペリノアなどクセのありそうなキャラが揃っています。
千葉彼らも、個性を持ったひとりの人間として、彼らなりに事情があったり、いろいろな背景を持っています。
もちろん、ストーリーにも深く関わってきて、ただ敵として出てくるという存在にはなっていません。
そのあたりも実際にプレイして確かめてみてほしいですね。
■竹達彩奈さんや喜多村英梨さんのファンはTGS版を要チェック!?
――PS4版とPS Vita版で、内容の違いはありますか?
千葉基本的にはありません。
同じ遊びができるようにして、グラフィックもかなり力を入れ、なるべく両機種で同じイメージを持ってプレイできるようにしています。
――どちらかだけに出現するミラージュなどはいないのですね。
千葉そうしたら、タイトルは『ワールド オブ ファイナルファンタジー イフリート』や『ワールド オブ ファイナルファンタジー シヴァ』とかになっていたでしょうね(笑)。
――(笑)。
では、ユーザーは純粋に所持ハードや好みで選んで大丈夫ということですね。
千葉はい。
PS Vitaの場合は、ネットワーク通信関連の遊びがアドホックでもできる、といったことはありますが、PS4でもそこはオンラインで楽しめる部分ですし、お好みで。
そのあたりの詳細は、追って公開できればと思います。
――日本のユーザーが触れるのは、東京ゲームショウになるでしょうか。
千葉gamescomに出展しているバージョンの日本語版に、ちょっとアレンジを加えて出展します。
タマとセラフィがずっとゲーム解説をしてくれているので、竹達彩奈さんや喜多村英梨さんの声をいっぱい聞いていただければ。
――えっ、わざわざそのために収録したということですか?
千葉そうです。
楽しんでもらうには必要なことだと思いまして(笑)。
――ファンの方は必聴ですね(笑)。
ゲームショウで触れるほかに、たとえば体験版の予定などは?
千葉なるべく多くの方に触っていただきたいですからね。
体験版は、計画しているところです。
――それは朗報です。
どうやら開発は順調なようですね。
千葉そうですね。
ブラッシュアップ期間もほぼ終わり、発売を待つ準備をしている状況です。
制作スタッフが『FF』のことをすごく好きで、最後までいろいろなところを作り込みたがるんですよ。
たとえば、「ここは『FFX』がテーマの場所だから、幻光虫を絶対に置きたい」といった具合に。
そうやってスタッフがこだわって、楽しんで作っていることが伝わる作品になっていると思います。
――それはいいですね。
ゲームを遊ぶ側としてもうれしいことです。
千葉レジェンドキャラクターたちを担当するスタッフも、彼らをすごく愛していて、動きも過去の『FF』や『ディシディアFF』を見て研究しながら作っていました。
もちろん、野村(哲也氏)にもキャラの造形から目の色まで監修してもらい、ボイス収録では現場で怒られてセリフを書き替えたりしつつ(笑)、丁寧に作り上げています。
浜渦(正志)さんの音楽も、どうやったらこのシーンにぴったり合うか、マッチングを考えてアレンジしていたりもするんですよ。
――細部まで目が行き届いているんですね。
千葉『WOFF』は、僕自身含め、『FF』好きのスタッフがたくさん集まって制作しています。
『FF』好きの人はもちろん、初心者の方にも『FF』の楽しさを知ってもらえる作品にできたと思っているので、手に取っていただけたら。
『FFXV』の前に、オードブルと言うにはけっこうなボリュームですが(笑)、ぜひ遊んでみてください。