「World of Tanks」WGL統括責任者モハメド・ファダル氏インタビュー

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8月4日、Wargaming.net League(WGL)の2016-2017シーズンがスタートした。
「World of Tanks」の世界一を決めるリーグで、2017年に開催される「The Grand Finals」出場を目指して、ロシア、ヨーロッパ、北米、そしてアジア(APAC)の4つのリーグでしのぎを削ることになる。
APACでは、日本からはCarenTigerとB-Gamingの2チームが出場しており、9月18日現在で、4位と5位につけている。

東京ゲームショウでは、WGLの統括責任者であるモハメド・ファダル氏も来日し、メディアのインタビューに応じてくれた。
ファダル氏には、WGL 2016-2017の抱負や大会レギュレーション、そしてここ数年続くオートローダー全盛の流れについて話を聞いてみた。
現在開発している「トーナメントシステム」についてかなり詳しい話が聞けたので、ぜひ最後まで読み進めてみて欲しい。

■WGL 2016-2017は12チームから8チームに減らし、ベストなパフォーマンスが発揮できるように
――「World of Tanks」の2016-2017年度のリーグがスタートしたが、今年の概要と抱負を聞かせて欲しい。

モハメド・ファダル氏:新しいシーズンが始まったが、視聴者数は例年の3倍になっている。
これは、これまでの我々の取り組みが多くのゲームファンに認知され、プレーヤーたちの実力も上がり、視聴者がより楽しめる試合が提供できているからだと考えている。

――今年のレギュレーションはこれまでと何が違うのか?
ファダル氏:一番大きな変化は、ゴールドリーグのチームが12から8に減った。
理由は、常に我々はチームとコミュニケーションを取ってどうすればよりよいリーグになるかを話し合っているが、そこで一番多かった意見は「試合のスピードが速すぎる」というものだった。
これは試合が行なわれてから次の試合が行なわれるまでの間隔が短すぎるということで、休むことができないということだった。
そこで我々は12チームから8チームに減らし、さらに試合時間もピークタイムの20時スタートにしたので、視聴者数を増やしながら、十分な休憩を取った状態で試合に臨めるので、ベストなパフォーマンスを発揮できるようになった。
結果として視聴者の方にも楽しめるものが提供できているのではないかと考えている。

――私も日本のCaren TigerやB-Gamingを応援すべく、ちょくちょくリーグを観戦しているが、昨年度にも増してオートローダータイプの戦車ばかりを見かけるようになっている。
待ち伏せが減って、至近距離での派手な撃ち合いが増えて、短時間で大勢が決するようになったのはとても良いと思うが、そればかりというのはどうかと思う。
主催側はこのトレンドについてどう考えているのか?
ファダル氏:正直に言って正常ではないと考えている。
ただ、我々ゲームデザイナーと、彼らプロゲーマーはゲームに対するものの見方が異なる。
我々はよりゲームが楽しめるように様々な可能性をユーザーに提供しているが、プロプレーヤーはいかに効率よく勝つかと考えるので、結果として似たような戦術になってしまうのは仕方がない部分もあると思う。

その中でも奇抜な戦術を採用するプロチームも増えてきていて、たとえばNAVIは戦車を横に倒して盾として使って勝つといった戦術を考えて大会で使ったりしている。
我々としては今後もそういった奇抜な戦術が増えていって欲しいと考えている。
ただ、今後も勝ちを重視するあまり似たような戦術ばかりが横行するようであれば、ルールを変更することもあるかもしれない。
一例を挙げると、使用不可の戦車を指定したりとか。

――現時点で、オートローダー全盛の現状に対して今後こうしていくという具体的な計画があるわけではない?
ファダル氏:ない。
が、我々は視聴者の皆さんが同じような試合を見なくていいように、レギュレーションの変更は絶えず行なっていく予定だ。

――今名前が挙がったNAVIは、2年連続世界一に輝いた名実共にナンバーワンのチームだが、それゆえに誰もが彼らの戦術を真似するという傾向が生まれていると思うと思うが、どう見ているか?
ファダル氏:確かにNAVIは非常に強く、頭一つ飛び抜けた存在であるかもしれないが、私が見る限り、彼らは今がピークだと思う。
頂点に立ち続けているがために、そこからさらに成長するのは難しいと思う。
Caren Tigerなどもそうだが、若いチームはまだピークに到達していないので、仮にNAVIの戦術を模倣したとしても、そこから新しい戦術を思い付くかもしれないし、チームワークの点で上回るかもしれない。

――私はアジアのリーグを中心に、NAVIやHellraisersなどのトップチームの試合しか見ていないが、世界中のリーグで注目しているチーム、新しい戦術は出てきているか?
ファダル氏:有名なチームだと中国のELONGは、NAVIとはまったく異なるプレイスタイルを持っているので、彼らの試合を見るのは好きだ。
正直なことをいうと、新しいチームはすべて好きだ。
というのは、彼らは我々が予想しなかったような新しいことをやってくるし、試合においても彼らは失うものがないので、果敢にチャレンジをしてくるからだ。
一例を挙げると、アメリカのECLIPSEというチーム、彼らはとても若く、平均年齢は16、17才で、今年のグランドファイナルにも出場した。
彼らはとてもチャレンジングで、試合でも様々なことをしてくれるし、NAVIと比較しても伸びしろが大きいと思う。

――「Grand Finals 2016」であなたにインタビューした際、今後、通常のマッチングと同じ、15対15の世界大会の実施と、ブロンズリーグとシルバーリーグのインゲームへの組み込むプランを話してくれたが、その計画はどうなっているのか?
ファダル氏:とてもいい質問だ。
シルバーとブロンズリーグのゲーム内への実装については、それについては今この瞬間にも開発が進んでいる。
11月下旬にはテスト結果が見えてくるので、うまくいけばその時期にゲーム内に導入されるかもしれない。

15対15についても、多くのチームの協力を得てテストを行なっている。
ただ、ひょっとすると、現在の7対7を置き換えずに、7対7のリーグはそのままに、別の15対15のリーグを立ち上げるかもしれない。
今はテストをしながらユーザーのフィードバックを集めている段階だ。

――現在、PC版ではワンタンクアーミーという1対1のイベントが開かれているが、あれはどういった主旨のものなのか?最終的に公式大会を行なうのか?
ファダル氏:最終的にはそうなるかもしれないが、今後、大会自体はユーザー側で行なえるようになる。
現在、11月下旬に向けて準備を進めているトーナメントシステムは、画期的なシステムで、これまですべて手動でやっていたものを自動化して、主催側はより多くのトーナメントを作ることができ、ユーザー側はより多くのトーナメントに参加することができるようになる。
その場合、今の7対7だけでなく、3対3や1対1のトーナメントを作ることも可能だ。

――現在開発されているトーナメントシステムは、コンソール版やBlitzにも実装されるものなのか?
ファダル氏:もちろんだ。
ただし別々に開発しているので実装時期は異なる。
一番最初に実装されるのはBlitzだ。
その次がPC版、コンソールと続いていく。

――私はカジュアルに遊べるコンソール版やBlitzも好んで遊んでいるが、PC版以外の世界大会は開催しないのか?
ファダル氏:もちろん、その予定はある。
ただ、もう少し時間が欲しい。
可能であれば今から1年以内にそういった大会ができればと考えている。
実際、PS4のトーナメント大会を最近行なったばかりで、フィードバックを得ながら、様々な施策を導入していくつもりだ。

――「World of Tanks」について聞きたい。
今のゲームバランス、マッチングについてどのように考えているか?
ファダル氏:ゲームバランスは常に変えていかなければいけないと考えている。
そこで我々はサンドボックスという新しい仕組みを導入し、そのテストサーバーでは今後導入される新要素や、今後入る予定のないものも含めて事前に試すことができ、フィードバックを経た上でバランスを調整している。
今後も継続してサンドボックスを利用して、ユーザーの皆さんと一緒にゲームバランスを調整していきたいと考えている。

――次に今後の実装予定の戦車ツリーについてだが、ここ最近のトレンドとしてフランス、チェコのオートローダー戦車をはじめ、“扱いにくいが慣れると凄く強い”という味付けの戦車が多い。
スウェーデンもオートローダー戦車が実装される予定になっているが、プロも使用するような人気車輌になるだろうか?
ファダル氏:プロが使うかどうかは彼らの戦術に合うかどうかなのでわからないが、私は今回公開された1輌目のスウェーデン戦車をとても気に入っている。
AMX系の砲塔を備えたオートローダー戦車になっている。
こういった戦車はプロにも人気が高い。
しかも、今回はサンドボックスで多くのユーザーに触ってもらってフィードバックを反映した状態で実装できるので、最初からバランスがキチンと取れている。
スウェーデンの戦車は笑っているようにも見えるよね(笑)。

――ファダルさんの好みに水を差すわけではないが、私はティーガーとISが撃ち合うクラシックな「World of Tanks」がとても好きで、地形を丁寧に活用しながらダメージトレードしていく戦いがプロシーンにも帰って来て欲しいと願っているのだが、オートローダーの流れは今後も変わらないのだろうか?
ファダル氏:その気持ちはよくわかるし、私自身もティーガーIIが大好きだが、あまりヒストリカルな方向へ行ってしまうと、本当ならティーガーに勝てる戦車なんてどこにもいなかったことになる。
でもそれではゲームにならないので、「World of Tanks」では味付けを変えることで公平なバランスを保っている。
ゲームとして楽しんでもらうためには常に新しい要素を入れ続けなければならないので、オートローダーを止めるということは残念ながら難しいと思う(笑)。

――「World of Tanks」フランチャイズ全体について話をしたい。
今回の東京ゲームショウは「World of Tanks Blitz」で様々なコラボが発表され、コンソール版でもオリジナルのイベントが行なわれたり、PC版でも最新の戦車が次々と導入されようとしている。
それ自体はとても良いと思うが、どれも同じ「World of Tanks」なのに、やっていることはバラバラで、コミュニティも完全に分断されている。
同じ「World of Tanks」のプレーヤーとして、各タイトルのユーザーが連帯感を感じられるような施策は行なうつもりはないのか?
ファダル氏:プレーヤーの方からもそういう意見が出ているのは把握している。
ただ、各プラットフォームで対象の年齢層やユーザーから求められているものは違うので、我々はあえて各プラットフォームに最適化したものを提供するようにしている。
すべてのプラットフォームで同じコンテンツを提供するのは簡単な話だが、それをやってしまうと、各プラットフォームのユーザーが求めているものとは違ってきてしまうので、結果としてバラバラになってしまっている。

――日本の「World of Tanks」ファンに向けてメッセージを。

ファダル氏:私は大会の担当なのでe-Sports的な見地からコメントさせてもらうと、私は日本人のチームが世界大会に勝ち上がってくれるのを待っている。
日本のチームが世界で通用する実力や戦術を備えていることを知っているし、勝てると信じているので、CarenTigerやB-Gamingなど日本のチームにはぜひ「The Grand Finals」で会えることを期待している!

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