プレステVR登場で市場拡大に拍車!?「VR関連銘柄」はこうみる
日経平均株価は6/24(金)に付けた14,864円を安値に上昇に転じ、10/11(火)には終値で17,000円を回復しました。
我が国の株式市場はBrexit(英国のEU離脱)に絡む当面の不透明感を消化し、米国経済の拡大や円高の一巡等を追い風に、戻りを試す局面にあるとみられます。
ただ、日経平均株価が17,000円を固め、昨年6月に付けた高値20,868円やそれを超える株価水準を回復するには、景気・企業業績の力強さや、株式市場をけん引するテーマや業界、銘柄が必要であると考えられます。
正直、そうした存在を現在の株式市場から見出すことは困難なのが現実です。
そうした中、ソニー は10/13(木)、最新の据え置き型ゲーム機プレイステーション4(以下「PS4」)に対応するVR(仮想現実)システムである「プレイステーションVR(以下「PSVR」)を発売しました。
映像世界に革新をもたらし、ビジネス領域の多くを変えるといわれるVR(仮想現実)。
その市場は中長期的に飛躍的に拡大すると予想されます。
今後、株式市場の中核的な投資テーマのひとつとなり、市場をけん引する可能性もあります。
そこで、今回の「日本株投資戦略」では、そのアウトラインや成長性について概説し、それに関連する有望銘柄を探ってみたいと思います。
■成長が期待されるVR関連・有機EL関連銘柄はコレ!?
ソニー は10/13(木)、最新の据え置き型ゲーム機プレイステーション4(以下「PS4」)に対応するVR(仮想現実)システムである「PS VR」を発売しました。
世界的なエレクトロニクス・メーカーであるとともに、ゲームや音楽、映画等の分野で豊富なコンテンツを有する同社の本格展開で、VRは一気に普及する可能性が出てきました。
現在、VRシステムのヘッドセットを提供する企業としては米オキュラス(フェイスブック傘下)、グーグル、台湾HTC、韓国サムスン、LG等があります。
「PS VR」の強みは、同社がエレクトロニクス事業やゲーム事業で培った映像技術の発展の上に完成した高品質の製品であり、取引実績のある多くのゲームソフトメーカーからコンテンツの提供を豊富に受けることができることだと考えられます。
価格もPS4につなげることを前提にした場合は5万円足らずで、PS4とセットでも10万円足らずで購入できます。
PS4はすでに世界で4千万台販売されているので、「PS VR」の販売も短期に数百万台、数千万台と拡大することが可能であると考えられます。
現在の主要ライバルであるオキュラスやHTCの製品は特に日本で購入しようとすると、付属製品等を合わせた総額で10万円前後要するとみられるため、国内では、「PS VR」の優位が当面続くとみられます。
しかし、今後はサムスンやグーグル、あるいはアップル等が、世界で年間13億台販売(2015年)されるスマートフォンと連動して使えるシステムについて普及を図り、しかも製品単価も下がってくると予想されるので、競争は厳しくなるとみられます。
ただ、そうした動きが強まることで、VRの市場拡大にさらに弾みがつくと考えられます。
VR市場は、任天堂の「ポケモンGO」で一気にその名が知られたAR(拡張現実)の市場とともに説明されることが多いようです。
世界的な調査機関であるIDCの発表では、2016年に世界で52億ドル(約5,400億円)と推測されるAR/VR関連市場は、東京五輪が開催される予定の2020年には1,620億ドル(約16兆8千億円)に成長する見通しです。
また、ゴールドマン・サックスでは、関連市場として「ビデオゲーム」がもっとも有望なものの、ヘルスケアやエンジニアリング、ライブイベント等多くの場面で関連ビジネスが展開すると予想しています。
表1には、今後拡大される「VR関連銘柄」について、システムやソフトウェア、ゲーム等を提供する関連企業で主なものを取り上げています。
また「有機EL関連」についてもご紹介しています。
「有機EL関連」を取り上げた理由は、ヘッドセットに用いるフラットパネル・ディスプレイとして「有機EL」が採用されているためです。
「仮想現実」が自然に感じられるようにするために必要な点灯・消灯等の反応が速いことや、薄くできるためパネルの形を自由に変えられること等がメリットです。
今後、VR市場の拡大が契機となり、スマホ等でも搭載が進む可能性が大きいため、今回はその関連銘柄も取り上げることにしました。
この市場については、パネル生産のほとんどをサムスン・グループで独占しているので、関連企業としては部材や製造装置を提供する企業になります。
表1:成長が期待されるVR関連・有機EL関連銘柄はコレ!?
ソニー リストラ一巡。
PSVR発売
CRI・ミドルウェア 映像・音声を高品質に
JIG-SAW 英国のVR関連企業と提携
ピクセラ 360度カメラ
エイチーム グループ企業がVR参入
サイバネットシステム AR/VR向けにソフトウェア
保土谷化学工業 正孔輸送材、電子輸送材
住友化学 タッチセンサパネル
ケミプロ化成 有機ELで多くの特許
倉元製作所 陽極用ITO膜
平田機工 真空チャンバー。
好業績
アルバック 製造装置
ブイ・テクノロジー 製造装置
コロプラ 内外のVRベンチャーに投資
スクウェア・エニックス・ホールディング PS VR対応のFF15を発売へ
バンダイナムコホールディングス お台場にVR体験施設
カプコン バイオハザードをVRに
※各種資料をもとに、「VR関連銘柄」および「有機EL関連」として紹介されている銘柄を掲載したもの。
株価、業績等のデータは、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
コメントは各種資料をもとにSBI証券が作成しました。
今期・来期の予想は市場コンセンサス。
ただし、市場コンセンサスがない場合は会社予想を掲載しました。
※「VR関連銘柄」および「有機EL関連」のすべてを網羅しているとは限りません。
※表の中で、色付きの銘柄は(1)今期・来期ともに営業増益が見込まれる、(2)過去1ヵ月の株価上昇率が10%未満、等の条件を満たしており、後段で別途、チャートを掲載している銘柄です。
■投資妙味が大きそうなVR関連・有機EL関連銘柄は?
表1に掲載されたVR関連、有機EL関連の銘柄の中から、
(1)今期・来期ともに営業増益が見込まれること
(2)過去1ヵ月の株価上昇率が10%未満にとどまること
の2条件を満たし、「日本株投資戦略」で投資妙味が大きいと考えた銘柄をご紹介しています。
ここでは、表1の「システム・ソフトウェア他」、「有機EL関連」、「ゲームソフト」の3分野について、考え方を説明し、これらの中から投資妙味の大きいとみられる銘柄について触れてみたいと思います。
まず「PS VR」を発売したソニー については、この市場で当面は優位を形成できる可能性が大きそうです。
ただ、長期的にはスマホ市場への対応や、音楽・映画等の取り込みによる既存ビジネス活性化が課題になりそうです。
業績面では今期の営業利益が微増益の会社計画であり、踊り場的な局面となっており、一応の注意は必要です。
ソニー以外の「システム・ソフトウェア他」の銘柄については、アナリストの調査が進んでいる企業が少なく、株式市場での流動性が乏しい銘柄が多いため、短期的な株価変動に要注意です。
ただ、CRI・ミドルウェア やサイバネットシステム は四半期決算の動向からも、好業績が予想でき、比較的買い安心感が大きいとみられます。
このうち、CRI・ミドルウェア は2016/9期に19.9%の営業増益を見込む中、第3四半期までは前期比37.5%増益と好調です。
サイバネットシステム はすでに上半期で営業利益9億円余りを確保しながら、2017/3通期の予想営業利益(会社側)も9.5億と保守的な印象で、アナリストは13億円以上の営業利益を見込んでいます。
「有機EL関連」で取り上げた平田機工 は自動車、半導体、家電分野向けに生産設備を提供する企業で、有機ELについては「真空チャンバー」で知られています。
2017/3期の第1四半期は売上高145億円(前年同期比21%増)、営業利益15億円超(同71%増)の増収・増益で、通期予想営業利益を35億円(前期比19.7%増)とする中、好調なスタートとなっています。
有機EL市場の拡大はすでに現実的な追い風で、半導体分野が急拡大となっています。
なお、この分野では出光興産 も関連企業として取り扱うことが可能です。
昭和シェルとの合併が延期になるなどの不透明要因があり、表には掲載しませんでしたが、原油価格が一時に比べて上昇しているので、業績面での不安は後退しています。
投資チャンスもありそうです。
「ゲームソフト」分野は、「PS VR」向けに、あるいはVR市場向けにコンテンツを提供している企業を取り上げています。
このうち、カプコン については、第1四半期の営業損益が赤字に終わったこともあり、チャート掲載銘柄とはしませんでした。
しかし、人気の「バイオハザード」シリーズで「PS VR」向けに対応していますので、投資チャンスはあるとみられます。
VR向けはやはり、映像技術が大きなポイントになるとみられ、高機能ゲーム機にソフトを提供してきたスクウェア・エニックス・ホールディングス やバンダイナムコホールディングス にとっては、大きなチャンスになると考えられます。
なお、コロプラ は最大5,000万ドル規模の「VRファンド」を設立・投資していますので、この市場の拡大から受ける恩恵が「別の意味で」大きくなる可能性があります。
また、投資にとどまらず、VR市場の動向全般について、知見を得ることが可能になるという「隠れたメリット」も大きいとみられます。
ただ、足元の収益がやや踊り場局面なので、そのことが足を引っ張る可能性もありそうです。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
鈴木英之
SBI証券 投資調査部