『ABZ?』魚たちとシンクロして泳ぎながら進んでいく、至福の海洋探索アドベンチャー
文:編集部 ミル☆吉村
●濃厚な2時間の海中体験
Giant Squid Studiosの『ABZ?』を紹介する。
本作はパブリッシャーの505 GamesよりPC版がすでに配信中(海外ではPS4版も配信)。
なおSteamでの価格は1980円。
8月9日まで発売記念セールとして20%オフの1584円となっている。
本作はダイビングをテーマとした一種の海洋探索アドベンチャーとなっており、ダイビングスーツを着て魚たちとともに泳いで探索するのがメインで、ゲートを開けるための仕掛けや水中ドローンを作動させて、次のエリアへと進んでいく。
ゆっくりと泳ぐシーンだけを見ていると「水中を気ままにダイビング」的なキーワードが似合うオープンワールド型のゲームに見えるかもしれないが、各エリアは行ける範囲が限定されているし、セリフなどは一切ないものの、海底遺跡の様子などを通じて徐々に世界背景などが察せられていく物語演出も入っている。
実はかなり指向性のはっきりしたゲームだ。
全体は7章から成り立っており、ストレートにプレイすれば2時間足らずでクリアーできるのだが、美しい情景と音楽が印象的で、その体験は濃厚。
またカメラ演出や魚の流れなどを使った視線誘導がめちゃくちゃ巧みで、(実際はほぼ設計の順番通りに回っているだけなのに)「興味が向くままに泳いでいたら、いい感じの魚群や仕掛けに自然に遭遇していた」感じになるのが秀逸。
このため、エリアが限定されていても、狭い感じ、一直線な感じがまったくしない。
「大きめの魚類や亀に捕まって泳ぐ」、「特定の像の上で瞑想する(魚たちにカメラが切り替わり、ずっと眺められる)」といった本筋には必ずしも関係ないアクションや、発見すると新たな魚類が追加されるポイントなども用意されていて、ゆったりと豊かな時間の使い方ができる。
なおクリアー後もチャプターごとの再プレイや、本編中でアンロックした瞑想ポイントを再訪することが可能だ。
とまぁそんな感じに、万人にとって値段に見合った体験とは言わないが、2時間弱みっちりと魚と戯れ、言語の外側でゆっくりと流れる物語を体感できるのはかなり満足。
ちなみにプロモーション等で『風ノ旅ビト』の名前が挙げられているが、これはGiant Squid Studiosを率いるクリエイティブ・ディレクターのMatt Nava氏が『風ノ旅ビト』のthatgamecompanyのアートディレクターだったといった関係によるもので、本作はthatgamecompanyの新作というわけではない。
(マーケティング面で使える要素はすべて使うのは理解できるが)個人的にはわざわざ『風ノ旅ビト』を引用してこなくても十分に素晴らしい作品だと思う。