VRに熱い視線、広がり期待=「普及元年」-東京ゲームショウ〔深層探訪〕
15日開幕した世界最大規模のゲーム展示会「東京ゲームショウ2016」で、バーチャルリアリティー(VR、仮想現実)ゲームが注目を集めている。
ゴーグル型端末を装着し、仮想世界に入り込んだ感覚を楽しめる新たなゲーム技術。
今年は普及への元年と呼ばれ、ゲーム各社は主力製品を並べ、VR技術を競っている。
〔写真特集〕東京ゲームショウ2016コンパニオン
◇かつてない臨場感
「まるで目の前で歌っているようだ」。
仮想アイドル初音ミクのライブを体験できるゲームをプレーした男性(34)はこれまでにない臨場感を強調した。
ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が10月に発売する「プレイステーション(PS)VR」が並んだ体験コーナーには、長蛇の列ができた。
SIEの盛田厚取締役は「VRはゲーム業界にとって、大きなイノベーション。
ソニーにとっては初代PS以来の革新だ」と話す。
VRゲームでは、臨場感のある3D映像にのめり込み、乗り物酔いのような症状が生じる「VR酔い」の解消が課題となるが、カプコンの辻本春弘社長は「技術の進化で対応できる」と語った。
◇価格も課題
普及へは価格も課題となる。
ソニーのPSVRは約5万円で、PS4本体も必要。
台湾の宏達国際電子(HTC)のパソコンにつなげて遊ぶVR機「VIVE(バイブ)」は10万円を超える。
ゲーム会社ネクソンの広報担当者は「VR機が一家に1台置かれるイメージが湧かない」と指摘。
「一般消費者向けビジネスとして成り立つか見極めが必要」との見方を示す。
VR機の価格引き下げや普及には、魅力的なコンテンツの供給を続けることが必要で、ゲーム業界と異業種の提携も模索されそうだ。
◇教育、医療に応用も
VRには、世界旅行を疑似体験するなど従来のゲームとは異なる楽しみ方もある。
業界は「これをきっかけに今までゲームをしなかった人にも遊んでもらいたい」(盛田氏)と広がりに期待を寄せる。
HTCのレイモンド・パオ副社長は「授業で恐竜を教えるなら、ビデオや写真よりもVRが断然いい。
実物大で見て、感じることができる」と強調する。
VRでは、視覚だけでなく触覚なども再現する技術の研究開発が進んでいる。
ゲームや教育に加え、将来は遠隔診断など医療分野への応用も可能になると予想されている。