同人・インディーゲームの期待・圧倒・驚きが勢揃い! “デジゲー博2016”リポート

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文・取材・撮影:ライター 戸塚伎一
●取材記者が独断でチョイスした12の出展作を紹介
2016年11月13日、同人・インディーオンリーのデジタルゲーム展示&即売会“デジゲー博2016”が、秋葉原UDX 2階アキバ・スクエア(東京千代田区)にて開催された。
登録数200を超えるサークル・企業がブース出展し、例年以上の賑わいをみせたイベントの中で、記者が注目したタイトルをピックアップ紹介する。

今回で4回目となるデジゲー博。
プラットフォーム不問、出展作は原則としてオリジナルもの(※東方Project二次創作は除く)、ライブラリや制作ツールの展示もオーケー……という、デジタルゲーム関連に特化したイベントとしての成熟と、今年一気に出揃った感のあるVR機器・コンテンツの盛り上がりもあってか、会場のアキバ・スクエアは、始終熱気に包まれていた。

記者は約3時間ノンストップで会場内を回っていたが、200以上の参加登録サークルをひとりですべて網羅するのは、どだい無理な話。
というわけで今回は、個人的な好み(と、多少のしがらみ)でチョイスした12ブースの展示物を、3つのカテゴリーにわけて紹介するに留めることにした。
イベントの切り口は人によって千差万別ではあるが、デジゲー博というイベントにはどんな作品が集まり、そこでどんな体験をできるかといったことが、多少なりとも伝わるはずだ。

■完成が楽しみな正統派(?)同人ゲーム
『オヤシロ物語』超OK
波動使いの少女となって、襲い来る波動生物と戦いながら、拠点となる御社を強化していく。
、オヤシロ経営RPG。
ブースでは、序盤ステージをプレイできる体験版のダウンロードコードを提供していた。
開発者のクルステ氏は、個人が開発したフリーのゲーム制作ツール『アクションエディター4』で数多くのゲームを制作してきたフリーゲーム作家で、今作では初めて開発環境にUnityを使用したとのこと。

※超OK公式サイト
『アトの跡』 ほしさらい
主人公“アト”の足跡を頼りについてくる少女をかばいながら、進路をふさぐ敵を倒していく、PC用2Dスクロールアクションゲーム。
竜巻に巻き込んだ敵や敵弾を投げ飛ばして効率よく敵を倒すなど、さまざまなアクションテクニックを発揮できる。
本作の開発期間は、今年で5年目。
開発者によれば「去年、ゲームとしてやっとおもしろい形になりました」とのことで、早期の完成に向けてレベルデザインやバランスを調整中とのこと。
デジゲー博2016出展バージョンは、フリーゲームダウンロードサイト”ふりーむ”にて、無料公開されている。

※ほしのさらい公式サイト
『From_.』(NAKAJIMA)
スマホアプリ開発などを手掛けるIT企業の女性プログラマー・なかじま氏がひとりで開発中の、アドベンチャーゲーム。
プレイヤーは郵便配達人となって、さまざまな人間模様にふれていく。
極限までシンプルに構成されたグラフィックと、物静かなゲーム進行に独特のムードがあり、多くの来場者が足を止めてプレイ。
となりのブースでは、彼女が勤務するメーカーが開発中のスマホ用対戦型アクションゲームの開発途中バージョンが、参考出展されていた。

※なかじま氏公式Twitterアカウント

『タイトル未定』(惑星まりも)
画面外の敵を“狙撃”するロングレンジ2Dシューティングゲーム『伊』など、ひと癖ある作品を手掛ける惑星まりもの最新作。
プレイヤーは、左右移動とライトの点灯だけできるランプ(?)となって、フィールドに隠された謎を解いてステージクリアーを目指す。
グレースケールで描き込まれた美しいドットグラフィックと、プレイヤーの洞察力に委ねられた、世界のシンプルなありかたが印象的だった。
展示版では1ステージぶんしか遊べなかったが、最終的には20ステージ以上用意していくとのこと。
ちなみに、本作の開発環境は、『Downwell』などにも使われている海外製2Dゲーム制作ツール“GameMaker”。

※惑星まりも公式サイト
■あっと驚く”謎技術”を導入した注目タイトル
『Concept Model 1- VR Preview』(Project ICKX)
フライトシミュレーションゲームのエンジン開発や同ジャンル作品のプロデュースを手掛ける同人サークルと、3Dグラフィックコンテンツの制作を手掛けるVoxcellDesignの共同開発による、VRフライトシミュレーションコンテンツ。
VoxcellDesignが開発した『富士山ビューワーVR』で使用されている地形データを、Project ICKXが独自開発したシェーダーで描画することで、富士山の周囲360キロメートル四方の地形をリアルに再現。
その上空を、VRのコックピット視点で自由に飛行できる。
Project ICKX代表の若葉章氏によれば、本作は一般的に酔いやすいとされるVRフライトシミュレーションの中でも例外的に酔いにくい作りになっているとのことで、今後の展開が期待される。

※Project ICKX公式サイト
『西武ロードリスト蘭のチップチューン地獄』(Progressive Games)
某人気アクションゲームシリーズのサウンドを手掛けたことがあるコンポーザー・YS氏が企画したノベルゲーム。
20XX年の秋葉原を舞台に、美少女DJたちが“チップチューン・バトル”をくり広げる……という物語が展開する。
ファミコン音源に準拠した8ビットサウンドと、随所に散りばめられた脱力系のレトロゲームネタは、おっさんゲーマーの心を大いに揺さぶるだろう。
展示バージョンはファミコンの実機で動作していたが、完成時は、NESエミュレータで起動できるROMイメージとして公開・提供するとのこと。

※Progressive Games公式サイト

『アカとブルー』(タノシマス)
某ゲーム会社の元スタッフが設立した会社が開発を進める、iOS/Android用縦スクロール弾幕シューティングゲーム。
開発途中版ということで遊べるステージは少なかったものの、タッチ操作でもアーケードゲームライクなプレイ感覚を味わえる骨太なバランス調整と、一部3Dを織り交ぜるなど細部まで作りこんだグラフィックは驚愕モノだった。
リリース予定は2017年とのこと。
「前職で培ったノウハウを活かしつつ、自分たちがやりたかった場面演出にこだわりたい」とのことで、“弾幕ゲー”ファンは楽しみに待っていよう。

※タノシマス公式サイト

『Smile Game Builder』(スマイルブーム)
プログラミングなどの複雑な操作なしで、フィールドが3Dグラフィックで構成されたRPGを作成できる、PC用ゲーム作成ソフト『Smile Game Builder』。
2016年9月にリリースされて以来、世界中のユーザーに利用されているが、今回は、リリース後に研究開発が始まったという、本作をVR機器に対応させた、3分間の体験版を展示した。
一人称視点モードでは場面の臨場感を満喫でき、俯瞰の固定視点では、フィールド全体ジオラマ的に観賞する楽しさを味わえた。
また、「開発を始めたばかりですが……」との注釈つきながら、フィールドと同じ3Dグラフィックを使った戦闘シーンのデモ映像も公開していた。
今後、3Dグラフィックの特性を伸ばす形でとんでもない進化を遂げそうな『Smile Game Builder』の続報に、期待したい。

※『Smile Game Builder』公式サイト

■ニッチ上等! 興味を突き詰めた怪作たち
『Airio Play』(みんなのラボ)
電子工作系の有志グループ“みんなのラボ”の所属サークル“れすぽん”が制作した、無線LAN機能つきSDカード“FlashAir”のGPIO機能(汎用性のある信号入出力)を用いた、ゲームコントローラー基板。
本体上面に設置された4方向キー+2ボタンの入力に対応させたブラウザゲームのデータをFlashAirに保存しておけば、タブレットPCなどのディスプレイをモニター代わりにして、いつでも気軽にゲームを遊べる(何をもって“気軽”とするかはさておき)。
ブースでは、 Airio Playの製作方法も開設された、FlashAirの活用事例満載の同人誌も展示されていた。

※みんなのラボ公式サイト

『ねこピラ』ほか(LIPS)
かねてよりハンドヘルドコンピュータやモバイル機器を愛好し、それらの対応ゲームを作ってきたという山之内案山子氏は、クレジットカード大のゲーミングデバイス“Arduboy”用の新作パズルゲーム『ねこピラ』を出展(左写真右)。
ブロックで作られたピラミッドが倒れないよう、取る位置や順番を考えてブロックを消していくという、1.3インチの液晶モノクロディスプレイでも十分遊べる内容だった。
このほかにも、ニンテンドー3DS用ソフト『プチコンmkII』のプログラムリスト集や、現在制作中の『QIX』のような陣取りゲームを公開していた。

VR用ハンドグリップ(irondrill×輝輝技研)
VRゴーグルをオペラグラスの要領で装着するためのハンドグリップを試験開発中の輝輝技研が、夜の学校を舞台にしたホラーテイストVRコンテンツ『木造校舎ノ夜』を開発中のirondrillと、合同出展。
単に持ち手とするだけでなく、トリガー型のボタンや、口元にくる位置に音声入力デバイスを設置したりと、コントローラーとしての使用が考慮された試作品も展示されていた。
『木造校舎ノ夜』のグラフィックを使用したデモンストレーション版では、ロウソクに息を吹きかけると消える……というギミックを体験できた。

※irondrill公式サイト
『Anaya Adventure 〜決戦の伝説鮫〜』(AnayaSoft)
市販のDVDプレイヤー(+付属リモコン)など、何らかのDVD再生環境があればプレイ可能な“DVDPG”。
冒険家Anayaが、訪れた島の民を苦しめる巨大鮫を退治する物語を、シンプルなアドベンチャーゲーム形式で楽しめる。
制作者が撮影したビデオカメラ映像を中心としたビジュアルや、ゆっくりとしたゲームテンポが、なぜか心地よい。
開発者はこのフォーマットに特別な思い入れがあるに違いないと思い、「なぜあえてDVDPGでゲーム制作を?」と尋ねると、「プログラムを組む必要なく簡単にゲームが作れるから」と、わりとあっさりとした答えが返ってきた。
いまの自分で何とかなる手段でゲームを完成させ、発表する……これもまた、同人ゲームの醍醐味ではないだろうか。

※AnayaSoft公式サイト

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