東芝「レグザ」が有機ELテレビになって3月発売! その技術を細かく解説

downloaddata_118.jpg

ラスベガスで開催された「CES 2017」では、ソニーやパナソニックが有機ELテレビを発表(有機ELについては下方のコラムで解説)。
大いに盛り上がっていたが、東芝映像ソリューションは1月11日、国内向けに4K有機ELテレビを発表。
3月に発売するという。

(現時点において)最速のタイミングで発売される新製品を詳しく見ていこう。

65V型有機ELで約100万円!
最強画像処理エンジンを搭載する「レグザ X910」
有機ELテレビは「レグザ X910」として展開する。
65V型と55V型のラインナップとなっており、予想実売価格は前者が97万円前後、後者が75万円前後となる。

従来、レグザの最上位機種は「Z」シリーズだったが、有機ELテレビは「X」シリーズとなった。
X型番は(PS3に採用されていた)CELLプロセッサーを採用した「セルレグザ」(2009年発表)に用いられたが、それほどに力の入った製品ということだ。

有機ELパネルの採用に伴い、画像処理エンジンは「OLED レグザエンジン Beauty PRO」となった。
実際のところ、ハードウェアとしては現行の最上位機種「レグザ Z20X」と同じだが、ソフトウェアの改良によりOLED駆動を実現。

このハードウェアを4つ使って8K映像を表示したこともあり、汎用性の高いハードウェアなのだそうだ。

有機ELは自発光デバイスであり、バックライトを搭載する液晶パネルよりは輝度の点で劣るものの、黒の締まりは優れており、コントラストという点では有利となる。

有機ELパネルって何ですか?
有機ELとは、特定の有機物に電流を流すことで発光する仕組みを応用した技術のこと。
特定の有機物のことを有機発光ダイオード(OLED)と呼び、海外では有機ELテレビのことを「OLED TV」と呼ぶのが主流だ。

有機物が自己発光するため、液晶のようにバックライトが必要ないのがポイント。
特に黒を表現する場合、液晶テレビはバックライトの光を液晶で遮ることで実現するが(部分的にバックライトを消す方式もある)、有機ELは光らせないということが可能。

これにより、忠実な黒が再現でき、全体的に締まった映像、つまりシャープな映像を実現できる。

一方で、輝度という部分ではバックライトを持つ液晶のほうが優れているケースもあり、明るい環境では液晶テレビのほうが見やすい場合がある。

逆に、夜のリビングなど暗い環境では有機ELテレビのほうがきれいな映像を表示できる理屈となっている。

東芝の映像ノウハウが盛りだくさん!
有機ELパネルは自社製ではないが、上述のように画像処理エンジンは東芝独自のもので、同社の画質に関する技術がふんだんに盛り込まれている。

たとえば、同社が長年開発を続けてきた「超解像」技術は「熟成超解像」という新しいステージに突入。
映画などの24フレームの入力ソース(2K)に対して、ノイズリダクションと3種類の超解像処理(複数フレーム超解像、自己合同性超解像、再構成型超解像)を施して4Kアップコンバートをかけた上で、再度ノイズリダクションと2種類の超解像処理(複数フレーム超解像、再構成型超解像)をかける。

つまり、2K解像度の映像と4K解像度になった映像にそれぞれ処理を行ない、よりクリアで精細感の高い映像を表示する。

また、フレーム数の異なるコンテンツ、たとえば地デジ(30フレーム)、アニメ(24フレーム)、映画(60フレーム)を判別し、参照するフレームを選択する「アダプティブフレーム超解像」も搭載。
現在のフレームの前の5フレームから最適なものを選び、これをもとにノイズリダクションを行なう。
同時に複数フレーム超解像も実施し、解像感を高めながらノイズやちらつきを防止する。

さらに、ネットの映像に関しては、データ量を解析して解像度を判別。
それに応じた超解像処理とノイズリダクションをかける。
これにより、SD解像度の映像でも精細感のある4K映像で視聴可能だ。

コントラスト復元機能については、部分的な補正が可能となった。
まずは映像全体から黒つぶれしている箇所と白とびしている箇所を識別し、陰影部分と骨格部分(エッジ)に分離。
陰影部分のみに処理を施して元の映像に合成する。

これにより、映像全体のコントラストを最適な状態に補正しながら、極端に黒つぶれや白とびしている箇所を、全体コントラストバランスを変えることなく補正できる。

機械学習を利用したHDR復元
今回のレグザでは、画像処理において機械学習の技術を採用しているのも特徴的だ。
HDR復元では、従来編集とHDR編集の違いをパラメーターとして保持し、これを本機で処理したHDR復元画像と比較。
この誤差が減るように機械学習でテーブルを変更する。

また、入力信号を解析してシーンの画質を調整する機能にも機械学習を活用。
たとえばニュース映像中のスポーツシーンやアニメ映像など、それぞれで最適な画質に調整する。

色については、特に人肌にこだわっている。
「美肌リアライザー」は肌色の輝度を解析して階調を制御。
これにより、明るいシーンで顔が白とびしているようなシーンでも、肌の質感や立体感を再現する。

このほか、駆動方式として「ハイクリア」「ハイモーション」モードを用意。
このモードにすることで、各フレームに黒画面の挿入を行ない、映像を滑らかに表示させる。

液晶テレビも最上位機種を刷新!
実は同社は同時に4K液晶テレビも発表している。
「Z810X」だ。
こちらは2月上旬の発売予定で、65V型(予想実売価格68万円前後)、58V型(同45万円前後)、50V型(同38万円前後)の3モデル展開となる。

直下型バックライトを採用した上位機種で、既存の最上位モデル「Z20X」の後継となるモデルだ。

X910の下位モデルとなるわけだが、画像処理エンジンには「レグザエンジン Beauty PRO」を採用。
機能的にはX910とほぼ同等となっている。

もちろん、有機ELと液晶というパネルの違いがあり、それに伴う機能の差異(ハイクリア/ハイモーションがZ810には非搭載)もあるのだが、冒頭でも述べた通り、液晶モデルは輝度の面では有利だ。

このため、液晶モデルのみに搭載されている機能もある。
それが「きらめき復元」だ。

夜景の街の明かりや星空、暗いシーンにおいて金属などから反射する光などを強調し、きらめき感を再現する機能で、暗いシーンで点状の高域成分を検出し、増幅する。
高い輝度が出せる液晶テレビならではの機能だ。

そのほかの機能は基本的に同等である。
全チャンネル録画機能の「タイムシフトマシン」や、放送中の地デジ6チャンネルを同時に表示できる「まるごとチャンネル」、4K対応の「スカパー! プレミアムサービス」チューナーの内蔵」など、フラッグシップを踏襲する仕様だ。

オーディオに関してはX910のほうが上だ。
Z20Xから2倍の容積となったバスレフボックスを採用し、ツィーターとフルレンジスピーカーを個別のアンプで駆動させるマルチアンプ仕様となっている。

価格的にはちょっと高めだが……
有機ELテレビについていえば、55V型で75万円前後という価格は決して安くはない。
日本ではすでにLGエレクトロニクスが有機ELテレビの販売を先行させているが、2016年に登場した55V型「OLED55B6P」は、量販店で37万円程度で購入できる。
価格的には2倍となるわけだ。

そして、冒頭で触れたが、ソニーとパナソニックも有機ELテレビを海外で発表している。
どちらも詳しい情報はまだわからないし、日本国内向けに発売されるかどうかもわからないが、実際に製品が出そろってから検討してもいいだろう。

ただ、1つだけ言えるのは、有機ELレグザの画質は、これまでの液晶レグザでは味わえないハッとするような立体感や精細感を感じることができる。
発売される3月までには店頭でその映像を確認できると思うので、ぜひ一度自分の目で確認してみていただきたい。

文● ハシモト/ASCII編集部

You may also like...