往年の名作を蘇らせたのは筋金入りの“セガ・ボーイ”! 『Wonder Boy: The Dragon’s Trap』開発者インタビュー
文・取材・撮影:ライター 戸塚伎一
●セガ往年の名作は、いかにして蘇ったか?
2016年7月9日〜10日、京都市勧業館みやこめっせにて開催された、インディーゲームの祭典“BitSummit 4th”。
『スーパーワンダーボーイ モンスターワールド』(1987年リリースのアーケードゲーム『ワンダーボーイ モンスターランド』のセガ・マークIII移植版)の続編として1989年にリリースされた、セガ・マスターシステム(セガ・マークIIIの海外版)用タイトル『モンスターワールドII ドラゴンの罠』(原題『Wonder Boy III: The Dragon’s Trap』)。
そのリメイク作『Wonder Boy: The Dragon’s Trap』を開発しているのは、フランスのパリを拠点とする独立系デベロッパー、Lizardcubeだ。
その主要スタッフが、BitSummit 4thでのブース出展のため来日するとのことで、どのような経緯で本作を開発することになったのかを中心に、話を伺ってみた。
Lizardcube
Omar Cornut氏(左)
Ben Fiquet氏(右)
本作の開発・ディレクションを手掛けるOmar 氏は、Q-gamesや英メディアモレキュール社に所属経験のあるゲームクリエイター。
Q-games在籍時には『Pixeljunk Shooter』などの開発に携わっていたとのこと。
本作のアートディレクションを担当するBen氏は、フリーランスで漫画やアニメーションを手掛けてきたアーティスト。
過去に米ドリームワークス社などで、アニメーション作品の制作に携わった経験も。
■開発者は無類のセガ・マニアだった!?
──そもそもなぜ本作をリメイクしようと思ったのでしょうか?
Omar『モンスターワールドII ドラゴンの罠』は欧米でも人気の高いゲームで、ボクも子どものころからプレイしていたんだ。
いつかシリーズものが作れたら……と思っていたけど、今回、やっとその夢がかなったよ!
Benフランスの田舎で子ども時代を過ごした僕も、当時一番やったゲームは、『アレックスキッド』『モンスターワールド』の両シリーズ作だね。
セガ・ボーイ(セガのゲーム機のファンの子ども)にとってこの2タイトルは、(任天堂のゲーム機のファンにとっての)『ゼルダの伝説』や『メトロイド』のような存在なんだ。
──当時はセガ・ハードひと筋だった、と。
Omar子どものころは自由に使えるお金が少なく、ゲーム機をいくつも買うことができなかったんだ。
セガ・マスターシステムを持っている友だちが「セガ・マスターシステムがベストだ!」と言っていたので、じゃあ買おうって(笑)。
BenOmarは世界一のセガ・コンシューマゲームマニアなんだ。
ゲームソフトは台湾版、韓国版、ブラジル版……何でもそろっているんだ。
Omarボクの部屋の画像、見るかい?
──!? この棚、ひょっとして、歴代セガハードのゲームソフトをコンプリートしているんですか?
Omarいくつかの教育用ソフトが、まだだけどね(笑)。
Benヨーロッパやアメリカでは、セガ・マスターシステムのゲームは、日本よりも多く出ていたんだ。
シェアも、任天堂と半分半分くらいだったね。
──『Wonder Boy: The Dragon’s Trap』開発の原動力が“セガゲーム愛”にあることが、よくわかりました……。
Omarといっても、友だちの家では、任天堂のゲームをやっていたよ。
ボクが『ゼルダの伝説』を楽しく遊ぶのと同じように、その友だちもボクの家で『ワンダーボーイ』を遊んでいたけどね。
■オリジナル開発者の協力を得て鋭意開発中!
──開発を始めたのは?
Omar去年からさ。
当初は権利問題を気にすることなく作り始めたんだ。
──そうだったんですか!まさに「作りたいから作った」というヤツですね。
その後の使用権取得の経緯は?
Omar『モンスターワールドII ドラゴンの罠』のゲームデザインの著作権は、開発メーカーのウエストン(※当時。
後にウエストン ビット エンタテインメントに社名変更し、2014年に破産)の代表で、同作のディレクターだった西澤(龍一)サンが所有していた。
そこをLAT代表取締役の藤原信二さんを介して交渉して、使用できるようになったんだ。
タイトルの『モンスターワールド』の商標は、発売元のセガ(※現・セガホールディングス)のものだったけど、西澤サンと藤原サンが直接交渉してくれたおかげで、無事タイトルに冠することができたよ。
とても時間がかかったけどね(笑)。
──30年近く前の作品をリメイクするにあたって、オリジナルを尊重した要素と、意識的に変えた要素を教えてください。
Ben残したかったところは、オリジナルのゲームプレイのフィーリング(感触)。
大きく変えた部分は、グラフィックに1990年代の2Dアクションゲーム──『アースワースジム』や、メガドライブ版『アラジン』のような、滑らかなアニメーションを手書きでつけていることさ。
──BitSummit 4thに出展してみての感想は?
Ben1回目(2013年)に来たときはこじんまりとしていたけど、今回は規模がすごく大きくなっていて驚いたよ。
OmarボクはQ-gamesに在籍していた6年前は京都に住んでいたけど、今回、ボクたちが作っている傑作を、オリジナルが生まれた地である日本に持ち帰ることができたことに、大きな意味を感じているよ!