ポケモンGOの売り上げはいくら?
モバイルゲームが空前の人気を博せば映画の大ヒット作より大きな収益をもたらすかもしれないが、ゲームの「興行収入」を把握するのは難しい。
このため投資家は暗闇でゲームをさせられているようなものだ。
「ポケモンGO(ゴー)」がいい例だ。
この記録破りの人気ゲームを世に送り出したことによって任天堂は今年、株価が急騰している。
だが、実際の収益を数字で押さえるのは至難の業だ。
多くの情報会社が欠けている部分を補おうと試みてきたが、そうした算出方法は科学と呼べるものではない。
調査会社センサータワーは今月、拡張現実(AR)ゲームのポケモンGOがこの夏稼いだ売上高が「ウォークラフト」や「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」といったハリウッド映画の興行収入を上回ったと述べた。
同社によると、9月10日時点でポケモンGOの売上高は5億2900万ドル(約540億円)に達している。
これよりさらに好調だと見る向きもある。
市場データ提供会社のアップ・アニーは、9月8日時点ですでにポケモンGOによって開発会社などが得た収入が5億ドルを突破していたとし、年内に10億ドルに達する勢いだとの見方を示した。
アップルやグーグルはアプリストアで課金分の30%を手数料として徴収するため、アップ・アニーもゲームの収入を算出するにあたりこれを差し引いている。
つまり、同社の推計に基づけばポケモンGOの売上高は7億ドル余りということになる。
楽観的とはほど遠い予測もある。
調査会社プライオリ・データによるポケモンGOの推定売上高は1億ドルをわずかに超える程度だ。
スーパーデータ・リサーチは3億5900万ドル近辺と見込む。
問題の根源は、アップルとグーグルが個別アプリの売上高情報を公表していないという事実にある。
さらに、アプリのランキングは単なる売上高順位ではなく、開発会社が自社アプリの順位を押し上げるべくシステムを操作するのを防ぐため、非公開のアルゴリズムを用いている。
特に大手は、売上高情報を明かさない会社が多い。
ゲームの成功は、多額のアプリ内購入をする「クジラ」と呼ばれる一握りのプレーヤーにかかっており、こうした事実も売上高の算出を一段と複雑にしている。
従って、データ分析会社は頭を使って推測するほかない。
売上高を提供する一部の開発会社からデータを収集し、全体的な市場規模やアプリストアのランキング、レビュー件数といった他の測定基準との相関関係をあぶり出そうとする。
センサータワーのようにユーザー調査を行う場合もある。
あるいはスーパーデータのように、開発会社の決済を請け負う決済サービス会社からデータを集める会社もある。
こうした手法は過去の売れ行きが参考になるゲームには有効だ。
だが、ポケモンGOのような超ヒット作では当てにできない可能性がある。
「ビッグデータ」的な分析は過去との相関関係に基づく推論に頼るが、ゲームが桁違いのヒット作となれば相関関係も成り立たない。
ゲームの世界でモバイルゲームが主役に躍り出て、投資家が収益を推し量りにくい超ヒット作がたくさん出て来るだろう。
あのスーパーマリオが初めてスマホ向けゲームに登場する「スーパーマリオラン」は12月に配信開始予定だが、次なる大ヒット作となるかもしれない。
ここ2カ月の任天堂株の乱高下は、投資家が意志決定する上でより優れたデータを必要としていることを浮き彫りにしているのかもしれない。