GeForce GTX 1080/1070の大ヒットが証明――まさしくVR元年だった2016年

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2016年、年初のアキバ自作街で目立っていたのは、GALAXのVRギア「VISION Developer Edition」だった。
価格は税込み5万5000円前後。
1月下旬の発売に先駆けてデモ機を展示していたBUY MORE秋葉原本店(当時)は、「我々もかき集めているところでして、全容が見えてこないと何とも評価しづらいところがあります。
ただ、現在は有力モデルでもみ合いせめぎ合いになっていますし、お客さんの注目度も高い。
盛り上がってほしいですね」と話していた。

年初からソニーがPS4用に「PlayStation VR」を開発しているニュースがアクセスを集め、GALAXのライバルといえるOculus VRの「Oculus Rift」も1月6日から9万円台半ばで販売予約を開始するなど、VRの周が元気だったのは確かだ。
当時からは「今年はVR元年」といったコメントを聞いた。

それが2010年の「3D元年」のように期待を込めた言葉ではなく、実情に即したものになったのは、7月初旬にHTCからVRギア「HTC Vive」の店頭発売が始まった頃からかもしれない。
税込み価格は10万8000円前後。
直販サイトでは6月から国内発売がはじまっていた。

HTC Viveの登場により、ツクモはパソコン本店IIIをVR専門コーナー「ツクモVR.」に切り替え、ドスパラ秋葉原本店の5階にはVR専門フロア「ドスパラ VRパラダイス」が作られた。
また、ユニットコムのゲーミングPCショップ「LEVEL ∞HUB」のようにVRコーナーを設けるショップも複数現れた。

年末、パソコンSHOPアークは「年初は開発者を中心に注目されていた感がありましたが、複数の体験コーナーができてアダルトVRエキスポが話題になった夏頃にコンシューマーの関心がグッと高まった感触があります。
しかもまだ発展の余地が多分にあるんですよね」と手応えを口にしていた。

●GeForce GTX 1080/1070が輪をかけた大ヒット! VRとも相乗効果も
VR体験コーナーに置かれたマシンの多くで使われているのは、NVIDIAの新世代GPU「GeForce GTX 1080/1070」を搭載したグラフィックスカードだ。
同社のハイエンドGPUがトレンドが主流を作るのは例年のことだが、今回はVRマシンに欠かせないパーツという役割もあり、「ハイエンドゲーマーの方以外にもリーチしていて、例年に輪をかけたヒットになっていると感じます」(ドスパラ パーツ館)といったコメントをよく耳にする。

最上位のGTX 1080は5月27日22時に販売解禁となり、複数のメーカーから税込み10万円前後で一斉に売り出された。
安定して支持されてきた前世代のGTX 980/980 Tiが直前に放出特価となるほど前評判が高く、複数のショップが深夜販売を実施するなど、鳴り物入りのデビューだった。
初回は入荷数が薄めだったが、オリジナルファンモデルが充実してきた夏以降も好調を維持して、街の期待に応え続けている。

続いて6月10日22時に販売解禁となったGTX 1070も税込み6万円前後で好発進。
こちらは初回からオリジナルクーラーモデルが複数見られ、潤沢化するまでのスパンも短かった。
その後、ミドルレンジ上位で「VR Ready」としてはエントリーとなる「GeForce GTX 1060」も7月19日22時に税込み4万円前後で登場。
いずれも複数ショップが深夜販売イベントが実施している。
某ショップは「今年は新OSや主流CPUの世代交代などがないですからね。
注目されているGeForce 10シリーズで少しでも盛り上げたいんです」と話していた。

GeForce GTX 1060は、その後8月中旬にはメモリ容量を半分の3GBにした税込み3万円前後の下位バージョンが加わったり、DP端子の1つ減らしてHDMI端子を2基並べた“VR仕様”のバージョンが話題になったりもしたが、VR用の主流はやはりGTX 1080/1070であり続けている。

●奇跡の順風満帆デビューを果たした「Radeon RX 480」カード
VR向けとして注目を集めたのはGeForce 10シリーズだけではない。
6月29日に税込み3万円台で登場したAMDのGPU「Radeon RX 480」も、8GBメモリとPolarisアーキテクチャの採用で話題を集めていた。
同社の新世代モデルとしては珍しく、初回から潤沢に出回ったことから「まさかの潤沢」「奇跡の順風満帆」といったコメントが聞かれた。

BUY MORE秋葉原本店は「メモリ容量が大きいこともあり、価格帯が近いGTX 1060よりもVR目的で選ばれることが多い印象ですね。
割安にVR環境を構築したいという人にはいい選択肢だと思います」と評価していた。
なお、RX 480はCrossFireXを構築するとGTX 1080をも超えるパフォーマンスを発揮するという触れ込みもあったが、複数枚買いのブームは見られなかった。

Polarisアーキテクチャの下位ラインアップは8月前半に立て続けに登場。
「Radeon RX 470」搭載カードが税込み2万6000円弱〜3万5000円前後、「Radeon RX 460」カードが同1万4000円弱〜2万円弱だった。
このクラスはVRとは無関係で、ゲーム向けやマルチメディア環境の強化を目的で購入する人が多い。
TSUKUMO eX.は「コストパフォーマンスが高く、新世代では価格帯がGeForceと被らないところもあって、順調に売れています」と話していた。

GeForce 10シリーズのコスパモデルとしては、10月末に「GeForce GTX 1050/1050Ti」搭載カードが売り出されている。
GTX 1050モデルは税込み1万5000円前後、GTX 1050 Tiカードは同2万円前後だ。
GTX 1050 Tiの多くは補助電源なしで動くということで、「GTX 750 Tiカードからの乗り換え需要を喚起するでしょう」(TSUKUMO eX.)と当初から評価されていた。

●強化ガラスの向こうでマザーが虹色に光る――ゲーミングマシンのビジュアルの進化
ゲーミング関連アイテムの変化も目を見張るものがある。
ジャンル全体を通してみると、2015年秋に登場したサーマルティクのファン「Riing Fan」シリーズに代表される光モノの充実化が進み、マシン内部を魅せる意識が強化されたところがある。
オリオスペックは「ニッチですが、水冷システムのハードチューブを曲げたり、電源ケーブルのスリーブを好みの色に付け替えたりする“加工系”のトレンドも見られます」と語る。

内部を魅せるニーズに対応するように、強化ガラスパネルを採用したPCケースが1万円台から選べるようになったほか、虹色の光るLEDを内蔵したゲーミングマザーボードのラインアップも増えいる。
また、長大なグラフィックスカードの先端がたわまないように支持するステイが人気を得るなどの動きもみられた。

液晶ディスプレイもゲーミングタイプが目立っていた。
3月初旬に、35型曲面パネルを採用した144HzレートのBenQ「XR3501」が税込み13万円前後で、34型曲面で100HzレートのASUSTeK製4Kモデル「ROG Swift PG348Q」が同22万円前後で立て続けに登場。
8月下旬には、FreeSYNC対応のイーヤマ4k液晶「ProLite GB2888UHSU」が同6万円以下で売り出されている。

画面サイズや解像度、速度などで大きな進化が見られるが、なかでも重視されるのはリフレッシュレートや遅延の少なさを含む速度だという。
パソコン工房 BUYMORE秋葉原店は「4Kでゲームするのはマシンスペックがモンスターになりますし、画面サイズは机上の大きさもあるのでそれぞれに制限があります。
対して速度面は、シミュレーション系のゲームだと大抵重視されますし、強化が実感しやすい部分でもありますからね」と話していた。

2016年アキバまとめの後編では、ストレージの進化と値動きを中心に振り返りたい。

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