ポケモンGOの衝撃、任天堂の救世主となるか
現実世界の街中でポケモンのキャラクターを探すスマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」が予想を超える大ヒットとなり、任天堂の株式時価総額はわずか数日で90億ドル(約9300億円)も増加した。
3月に配信が始まった同社初のモバイルゲーム「Miitomo(ミートモ)」が期待外れだっただけに、ポケモンGOの人気は、それまで業績見通しへの懸念で落ち込んでいた任天堂株に待望の勢いを与えた。
同社の従来型ゲーム機事業が苦戦するなか、モバイルゲーム進出にかかる期待は大きい。
モバイルゲームは近年のビデオゲーム業界の成長の大半を占める。
ポケモンGOは、公園や建物、地下鉄の駅などに潜んでいるピカチュウなどのかわいらしいキャラクターを探すゲームだ。
「拡張現実(AR)」の技術を使い、スマホのカメラを通じて見る現実の世界と、色鮮やかなキャラクターのデジタル画像とを融合する。
ポケモンGOは、任天堂が32%の株式を保有する株式会社ポケモンと、グーグルの親会社アルファベットからスピンアウトしたナイアンティック社との共同プロジェクトだ。
ゲームは米国、オーストラリアとニュージーランドで6日に配信がスタートした。
ナイアンティックによると、予想以上の人気でサーバーに問題が生じているため、英国やオランダなどの国々での配信開始が遅れているという。
任天堂にとって爆発的に人気が出ることは珍しくない。
今回の熱狂が続くようなら、新たな収益の扉が開く可能性がある。
このゲームアプリは無料でダウンロードできるが、ゲーム内で使えるアイテムは販売されており、売り上げにつながる。
例えば、ポケモンを捕まえるのに役立つボールは1ドル以上で販売されている。
市場データ提供会社のアップ・アニーによると、配信が始まった国では、このアプリがダウンロード数と売り上げでトップになるのに1日もかからなかった。
データ会社のシミラーウェブは11日、デーリーアクティブユーザー数で見ると、米国のアンドロイドユーザーの間ではツイッターを超えそうな勢いだと述べた。
アナリストたちは、ポケモンGOは一時的なブームで終わるリスクがあるほか、安全に関する問題の克服が課題だと指摘する。
米国と豪州の警察当局は安全に関する警告を出し、プレーヤーは周囲に気をつけるべきだと述べている。
ポケモン社(東京)の広報担当者は、「このゲームをこれほどの人気にしてくれたファンに感謝している。
皆さんがガイドラインに従い、マナーを守って安全にゲームを楽しんでくれることを望んでいる」と述べた。
プレーヤーがゲームをダウンロードすると、すぐに注意を促す画面が表示される。
だが、ダコタ・シュワーツさん(27)の役には立たなかった。
ハイテク業界で働くシュワーツさんは、このゲームでデジタルなポケモンを100匹ほど捕獲している。
彼は、公園で恐竜のような茶色のポケモンを捕まえようとして足首をねんざした。
「テニスコートの向こうに『カラカラ』がいるのは分かっていた。
見てはいけない時にスマホの画面を見てしまった」と話した。
今回のゲームは、2002年から任天堂の社長を務めていた岩田聡氏の死去から1年というタイミングでヒットした。
同氏は当初、任天堂がスマホ向けゲームを作ることに後ろ向きだったが、その後「ポケモンGO」の開発に携わった。
長年のポケモンファンであるニュージャージー州クロスター在住のジョン・セオさん(25)は、ニューヨークのブルックリンで友人とこのゲームをしていたところ、若い女性がポケモンを捕まえているのを見た。
2人はすぐに会話を始めた。
「結局、彼女をデートに誘った。
知らない人に会って、こんなに気持ちが通じ合ったように感じたことは今までにない」と話した。
任天堂の事業は近年苦戦してきた。
スマホ向けゲームや、マイクロソフトやソニーといったライバルのゲーム機に押されてきた。
ポケモンGOの滑り出しが好調なことで、任天堂がスマホゲームで躍進する可能性が出てきた。
カドカワの取締役で業界を長年観察してきた浜村弘一氏は「ポケモンGOは唯一無二のゲームだ。
誰もが知る有名なキャラクターと、グーグルが支える最先端技術とを融合したものだからだ」と語る。
グーグルと任天堂はともに、ポケモンGOを共同開発したナイアンティックに出資している。