『キングダム ハーツ HD 2.8』は未来につながる作品――Co.ディレクター安江泰氏インタビュー

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●2016年12月の発売へ向けて制作は順調な『KH2.8』
E3会期直前に公開された新規トレーラーにて、2016年12月の発売がアナウンスされた、スクウェア・エニックスのプレイステーション4用タイトル『キングダム ハーツ HD 2.8 ファイナル チャプター プロローグ』(以下、『KH2.8』)。
E3会場にて、Co.ディレクターの安江泰氏にインタビューを実施した。

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■クオリティーアップに時間をかける『KH0.2』
――試遊台は連日混んでいて、つねに人だかりができていましたね。
さすがの人気です。

安江みんなすごく喜んでくれて、評判も上々です。
ゲームプレイとしても、こちらが想定している“いい感じ”のプレイをしてくれるユーザーがたくさんいてよかった。
ファンが本当に暖かくて、いっぱいいっしょに写真を撮ったりもして。
すごく励みになります。

――実際にプレイしたファンと交流して、どんな感想をもらいましたか?
安江操作がスムーズで、テンポがいいので遊びやすいと言ってもらえています。
あとは、ビジュアルがキレイになったという声も多いですね。

――割合からすると、やはり完全新作である『KH0.2』を遊ぶユーザーが多いようです。

安江アクアは人気がありますしね。
僕も好きです(笑)。
とても強い一方で、悲しみや切なさを秘めている。
その部分ではソラと対照的と言えるかもしれません。

――『キングダム ハーツ 0.2 バース バイ スリープ -フラグメンタリー パッセージ-』(以下、『KH0.2』)は、安江さんから見てどこがポイントになるでしょうか。

安江まず、Unreal Engine 4で制作していて、見た目がだいぶ進化したことですね。
ゲームエンジンを拡張して、ライティングやシェーダー、エフェクトなどをいまの世代に合わせたものにしています。
ただ単にリアルにするのではなくて、ファンタジーをベースにしたリアルさを出すことで、『KH』らしい豪華さを出せていると思います。

――アクションは、スタイルチェンジやシュートロックなど、『KH BbS』に近しいシステムが採用されています。
マジックウィッシュやレインボーシャワーなど、アクアが使っていた各技も、少し形は変わっていますが、引き継いでいるようですね。

安江アクアについて、変えすぎるとファンを裏切ることになると思っていて、『KH BbS』で特徴的だった技などは、見た目も含めて近い形で取り入れたいなと。
もちろんそのままではなく、たとえばスタイルチェンジならボタンで発動する形にするなど、より戦術的に使えるよう『KH0.2』用に進化させています。

――魔法もだいぶ進化しました。
ただ、ブリザガでフィールドを凍らせて、滑ることができますよね?あれはどういう意図で入れているのでしょうか。

安江それを利用して凍らせた敵のほうへ滑っていって、そのままの勢いで攻撃するなど、バトル中の挙動をスムーズにする意味があります。
素早く敵のもとへたどり着けるので、移動が面倒なときにいいですよ(笑)。

――うまく使いこなせば、かっこいい立ち回りができそうですね。
それと、新しいハートレスがいたことも気になります。

安江新しい敵はけっこういますよ。
今回、敵は集団で群れるなど行動も進化しています。
ディレクターの野村(哲也氏)もインタビューで言っていましたが、デビルズウェーブだったら最初は弱いけれど、のちのち強い版が出てくるとか、そういう仕掛けもあります。
また、新しい敵は、PS4用の表現をするなどいままでにない挑戦もしています。

――それはAIの面でですか?
安江AIもそのひとつです。
AIは全般的に発達していて、たとえばシャドウが屋根の上を移動したりと、きちんと地形を判断して行動するようになっています。
あとは、グラフィック的な進化。
たとえばデビルズウェーブは、ちょっと特殊な反射効果を入れていて、目にはライトを焚いています。
これはただのシャドウからパワーアップしているアピールです(笑)。
Unreal Engine 4での制作は、そうした効果を付けやすいんです。

――そうした部分までこだわっているんですね。
起伏があったり、入り組んでいる部分があったりと、ひとつのエリアにさまざまな特徴があったマップも印象的でした。

安江起伏は僕が大好きなこともあり(笑)、全般的に入れていきたいですね。
『KH0.2』にあるスロープを滑りながら戦うところなどは、『KHIII』にもある要素で、そういう先々にもつながる部分をうまく入れ込めているかなと。
そうしたマップでの遊びも込みで、アクションを楽しめるようにしています。

――おお、そうなんですね。
楽しそうです!
安江もちろん、起伏があって探索の甲斐があるようなマップだけでなく、いろいろなバリエーションがありますよ。
今回、冒険するワールドは、闇の世界に墜ちているわけですが、もともとのディズニーの世界が持っていた特徴を出していて、それをきちんとゲーム性に取り入れてあります。

――制作は順調なようですね。

安江だいぶ進んでいますよ。
マップもできて、通しで遊べるような状況です。
あとはクオリティーアップ。
PS4のタイトルは、グラフィックのマテリアルやライトを詰めていくことが大事になります。
調整できる部分に幅があり、色のテイストを一気に変えたりもできる。
そこに時間をかけたいですね。

■『KHDDD』のポンダニャンはポンダニャンじゃなかった!?
――『キングダム ハーツ ドリーム ドロップ ディスタンス HD』(以下、『KHDDD』)には、試遊版に新ドリームイーターがいました。
ポンダニャンと言うんですよね?
安江じつは、名称はちょっと変えようかと検討中です。

――ポンダニャンは仮名!?
安江いま候補にあがっているのは“ポンダさん”とか?どうなるか決まったらお知らせします(笑)。

――ポンダさん!!ぜ、ぜひお知らせください……。
ドリームイーターの追加は、制作を担当する大阪チームから提案をしたのだとか。

安江そうですね。
ドリームイーターくらいは新しいのものが欲しいねと、ブレストしていくつか候補を出し、野村にチェックしてもらって。
ちなみに、追加のドリームイーターは、みんなちょっとおかしい感じです。
「こっち?」っていう意外性が(笑)。
インパクトが大きいというよりは、「え?」という……ちょっと笑えるかな。

――どういう方向性なのか謎すぎますが、楽しみにしておきます(笑)。
そのほかにも、ただのHD化にとどまらない調整をされているようですね。

安江実際に作っている過程で、3DS版の操作をPS4に対応させるのが難しかったり、そのまま持ってくるとおもしろくなくなってしまうところがあったりして、そうした部分はすべて調整しています。
遊びが根本から違うんですよね。
ボタン操作の場合は、テンポよく楽しめるのがいいので、ミニゲームもコントローラに合わせて調整していたり。
手触りやゲーム性ありきでの変更です。

――試遊ではドリームイーターの切り換えが、方向キーでの選択を挟む形でしたが、今後ショートカットで選択できるようになるとか。

安江はい、プレイした人たちの反応も踏まえて実装しようという話になりました。
ドリームイーターの切り換えと、リンク攻撃に対応します。
感覚としては、『KHII』の魔法のショートカットと同じですね。

――アクション面では、60フレームを実現しているとのことですが。

安江はい。
動きがすごく滑らかになっています。
とくに『KHDDD』は、動きが早いから合っていますね。
じつは、僕が知らないうちに、いつの間にか60フレームに対応していたんですけど(笑)。

――えっ、そうなんですか?
安江野村や僕どころか誰も指示をしていなかったんですが、プログラマーが気を利かせて勝手にやってくれていました(笑)。
動くから入れてみたと。
もちろん、ゲームエンジンをカスタマイズしているからできることなんですけどね。

――とはいえスゴい(笑)。
フレーム数は、アクションゲームが好きな方は注目するところでもあります。
『KHIII』も60フレームになるということなんでしょうか。

安江『KHIII』についてどうするかは、決まっていませんね。
60フレームにすると、どうしてもトレードオフになるんです。
敵を減らすとか、見た目の劣化につながったりとか、そうした側面もあるので、慎重に考えないと。
30フレームと60フレームはそれぞれよさがあって、30フレームでも動きがハッキリしていて“パキッ”とした感じがあるぶん、それが気持ちいいと感じる人もいると思います。
60フレームはもちろん、滑らかに動くのがいいところで、どちらもそれぞれ特徴がある。
追求したいゲーム性やクオリティーの方向性によって決めていく感じかなと。

――一概に60フレームがいいというものでもないんですね。
『KH2.8』の開発は順調そうで、安心して12月を待てそうです。

安江『KH2.8』と『KHIII』の両方をやっていて、混乱することもありますけどね(笑)。
スタッフも、両作品に関わっている者もいれば、片方のみ手掛けている者もいて、チームとして2本同時に進めるのはたいへんだなって(苦笑)。

――期待しているファンが世界中にいるので、がんばっていただければ。
こちらで配信番組に出られた際も、アツい声援を送られていましたし(笑)。

安江観客のいかついお兄ちゃんが「I love you!」と言ってきたので、僕も「I love you!」と返しておきました(笑)。
本当に思った以上の反響があって、期待の高さに驚いています。
今回のフィードバックは、『KH2.8』だけでなく、『KHIII』にも活かせると思うんです。
その意味で、未来へつながるタイトル。
皆さんからいただくフィードバックを活かして、『KHIII』を最終形にもっていけるといいなと思っています。

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