ポケモンGOに見るメキシコペソ安の恩恵と痛み

スマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」がヒットしている任天堂にとって、メキシコ市場の魅力が減少し続けている。
メキシコペソが円に対して最安値圏で推移しているからだ。

同ゲームがメキシコでも人気を博す中、メキシコのプレーヤーたちはゲーム内で利用するアイテム「ポケコイン」をペソで購入する。
メキシコ市に住むルイス・アントニオ・サンチェス・ロメロ氏もその一人。
最近、彼は17ペソ(約92セント)で100枚のポケコインを購入し、ポケモンを呼び出す「おこう」、卵を孵化する「ふかそうち」、そして持てる道具の上限を増やす「バッグアップグレード」に使用したという。

思わぬ形で企業収益に影響
国際決済銀行によると世界の為替取引の約9割がドルを介してやりとりされており、為替市場はドルを通して世界経済を測ることが多い。
しかしドルを含まない他の通貨同士の取引でも注目すべき動きが見られ、それが世界各国の企業や消費者に予測していなかった痛みや便益をもたらしている。
スイス金融大手クレディ・スイスで為替調査を指揮するシャハブ・ジャリヌース氏は、「こういった大きなうねりが、意外な形で企業収益に影響を与えることがある」と話す。

その中でも特に極端な動きを見せているのが日本円とメキシコペソだ。
両通貨は自国の情勢よりも世界経済への全体的な懸念から影響を受けやすい。
今年に入ってから円はドルに対して19%上昇し、メキシコペソはドルに対して逆に6.4%下げている。

日本経済は過去数十年に渡り低迷を続けているが、日本の分厚い金融市場と大幅な経常黒字を背景に、投資家は安全資産として円を買うことが多い。

一方のメキシコペソは、新興国通貨としては最も流動性が高い。
投資家は途上国経済全般に不安を感じ始めると、例えメキシコ経済自体は安定していても、まずメキシコペソを手放すことが多い。
ペソは今年に入って最も下落した通貨のひとつで、日本円に対しては史上最安値圏にある。

メキシコ銀行(中央銀行)はペソ安がインフレ率の上昇につながるリスクを懸念し、6月に政策金利の引き上げを行った。
しかし、利上げは市場に「落ち着きを取り戻させるために行われたが、実際に動きを制御したり、あるいは状況を変えるようなことは望めない」とブラウン・ブラザーズ・ハリマンのストラテジスト、ウィン・シン氏は話す。

対応迫られる自動車メーカー
世界貿易の出荷量データを追う調査会社パンジバによると、メキシコから日本へは毎年約50億ドルの輸出があり、日本からメキシコへは170億ドル相当の商品が輸出される。
日本からの輸出品の多くは、日本企業のメキシコ子会社や多国籍企業向けに製造された中間財で、それらを使った商品は最終的に米国へと輸出される。

近年、日本の自動車会社によるメキシコへの投資も増えている。
監査法人KPMGによると、メキシコ国内で製造される自動車の約59%が日本の自動車メーカーによるもの。
2013年にはその数字は27.5%だったという。

日本の自動車メーカー各社はメキシコ事業に関する詳細な数字を公表していない。
しかしトヨタ自動車やマツダは、同国の安い人件費や現地生産部品の価格下落によってコスト削減を実現できているとアナリストらは指摘する。
半面、ペソ安によって日本から輸入される精密機器は価格が上昇しており、各社はそれに対処することも求められているという。

「為替変動の影響、特に円高が進んでいる時は、こういった企業への影響はかなり大きい」と調査会社モーニングスターのデビッド・ウィストン氏は言う。

ペソ安で増える対日豚肉輸出
一方で、円高・ペソ安に伴って日本がメキシコから輸入する冷凍豚肉の量は増加している。
2016年1〜5月の輸入量は前年同期比15%増の約2万5000トンに達した。
この結果、世界貿易統計データベース(グローバル・トレード・アトラス)によると、メキシコは対日豚肉輸出量で欧州の何カ国かを追い抜いた。

米食肉輸出連合会のエコノミスト、エリン・ボルオール氏によれば、メキシコから日本に輸出される豚肉は現地で切り身にされ、コンビニエンスストアで売られる弁当などに使用される。
輸出国側で切り身加工することによって日本国内で行う作業がひとつ減る。
その結果、ペソ安と人件費の安さの両方が、企業側のコスト削減につながっているとボルオール氏は話す。

しかし為替がどれだけ動いたとしても、メキシコ国内でポケコインを買うのに必要なペソは変わらない。
ポケモンGOファンのロメロ氏は割安なレートについて、「これなら無理なく買える」と話している。

なお為替が業績にどのような影響を与えるのかについて、任天堂の広報担当者からはコメントは得られていない。

円安や前日の米株高を好感し、日経平均株価は前営業日比184円80銭高の1万6919円92銭、東証株価指数(TOPIX)は8.39ポイント高の1323.22と、とも反発した。
売り物薄の中で小口買いが先行し、終日、高値圏での値動きだった。
銘柄の64%が値上がりし、値下がりは30%。
出来高は17億7292万株、売買代金は2兆1364億円だった。
業種別株価指数(33業種)は、電気・ガス業、水産・農林業、サービス業の上昇が目立ち、下落は、銀行業、その他製品、陸運業など。
個別銘柄では、四国電が上伸し、東電力HDもしっかり。
日水は堅調。
ディーエヌエーが大幅高で、ファーストリテ、ファミリーマートは値を上げた。
トヨタが締まり、東エレクは値を飛ばした。
森永が急騰した。
半面、三菱UFJ、三井住友が安い。
任天堂が下押した。
JR東日本はさえない。
ソフトバンクGは売り物がちで、ファナックが値を下げ、ブリヂストンが3営業日続落した。
4日続伸。
シャープが高く、ジースリーHDも上伸。
半面、ヨネックス、安川情報は急落。
出来高1億8959万株。
まちまち。
出来高32万9300株。
(続)

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